花冠ブログ句会

主宰・選者/高橋正子 世話人/藤田洋子

●入賞発表/12月14日(日)~12月20日(土)

2008-12-21 20:50:28 | 入賞発表

■12月14日(日)~12月20日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★短日の車窓灯りの過ぎるのみ/黒谷光子
日の短さが「過ぎるのみ」で、はっきりと言い表されている。暮れ急ぐ日に、人は、車窓の灯りに思いを入れるゆとりもなく、淡々と行き過ごさせる。(高橋正子)

【特選/5句】
★冬畑の水路へ三歩の橋渡し/甲斐ひさこ
冬の畑と畑の間に小さい水路があって、渡ればたった三歩終る板橋だろうがかけられている。それが一人前の橋であるので楽しい。肥料を運んだり、農機具を運んだりするのに、役目も大きいのだ。(高橋正子)

★裏の庭農家のかたちに冬日影/飯島治朗
農家には、裏の庭もあって、野菜なども植えられている。冬の日が差すと、農家のかたちのとおりに影が生まれる。面白いところに目が行き俳句の良さが出た。(高橋正子)

★櫨紅葉散りしばかりの坂を海へ/柳原美知子
櫨の紅葉はあざやかで、海と対比されて、その美しさが際立つ。坂道を海へと歩くと気持ちにも広がり生まれる。(高橋正子)

★毛糸帽畑の畝を往復す/祝恵子
畑のなかに毛糸の帽子が目だって、畝を往復している。それが面白いので句となった。麦踏みとか、肥料を撒くとかといった農作業なのであろうが、毛糸帽が擬人化され、生かされた。(高橋正子)

★雪つぶて満月に向け抛うてみる/志賀泰次
全き満月に雪つぶてを抛ってみる。満月の光りのなかで、宙を飛んだ雪つぶては、どこかぱっと散るだろう。思いっきり抛って見たい気持にさせた満月である。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★植替えを待つ葉牡丹の積まれおり/多田有花
植替えを待って葉牡丹が積まれている。「積まれる」は無造作なようであるが、それが却って、丈夫で、生きのよい葉牡丹であることを教えてくれている。植えられれば霜の季節のいい彩りとなる。(高橋正子)

★雨やみて水滴溜める辛夷の芽/村井紀久子
雨がやむと、銀色の辛夷の芽を包むように、水滴ついて輝いている。芽ぐむものの、綺麗な、生きいきとした光景。(高橋正子)

★字三戸寒灯あとは野の闇満つ/大西 博
字村の三戸に灯がともり、そのほかは、野の、全くの闇となっている。「野の闇満つ」に、生きた闇が感じられる。(高橋正子)

★畑土の乾かぬ大根隣より/宮本和美
新鮮な大根をお隣の方が持ってきてくださったのですね。畑から抜いてそのまますぐに土がついたままの大根を届けてくださった、ご近所の親しいおつきあいがしのばれます。 (多田有花)

★ブナの森落葉を土に返しつつ/河野啓一
ブナがすっかり葉を落してしまいました。やがて腐葉土となり、春には新しい葉となるのでしょう。自然の営みの素晴らしさを感じる句と思いました。 (小河原宏子)

★自転車のかごより出でし冬野菜/堀佐夜子
自転車のかごからはみだすほどの冬野菜の葉や茎に、冬の寒さの中で元気に生育した野菜の力強さを感じます。温かい食卓に上るであろう優しさもあります。(臼井愛代)

★利根激つ雪雲山を離れけり/小口泰與
利根川のわきたつような流れと山を離れる雪雲という冬らしい情景。日々の生活の中にある親しい景色だからこそ、山や川や空の変化を敏感に、そして感慨深く受け取っておられる作者の姿があります。(臼井愛代)

★冬日和畝の一筋ふくらめる/藤田洋子
耕された畑に、畝が高々と整っています。作物が育つその場所が、明るく晴れた冬の一日に、いっそう豊かに感じられます。(臼井愛代)

★冬温し屋並の近き森を行き/小西 宏
冬にしては穏やかな一日に、森を散策された楽しい時間を感じます。近くに家並が見えて、人が居る温かみもあります。(臼井愛代)

★花時計針指す葉ぼたん光りおり/小河原宏子
花時計の針の指す先で、柔らかな冬日を浴びている葉ぼたん。公園や駅のロータリーのような、人々の憩いの場所の和やかな情景を思い浮かべます。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/12句】
★チカチカとクリスマスツリーに動きあり/高橋秀之
クリスマスの頃の電飾に動きありと読まれたのが楽しいです。マンションの玄関にもクリスマスツリーが飾られました。 (村井紀久子)

★神の杜冬雲大きく動きけり/前川音次
冬の雲は寒々と垂れ込め、寒い空に滞って動かぬことが多いが、さすが社の杜の雲は、神の力で大きく動いた。その驚きを素敵に詠っていると思います。 (小口泰與)

★霜柱立ちて青菜の畝あたらし/小川和子
霜柱の畑に、緑濃い冬の野菜が元気に育っているようすが冬清清しく感じられます。(小西 宏)

★靴底の当たり柔らか散り紅葉/吉川豊子
紅葉が散って積もっている場所なのでしょう。ふんわりとした紅葉の嵩を靴底で感じられた時の、はっとうれしい発見があります。(臼井愛代)

★飴色に大根炊きあげ灯の下に/井上治代
炊きあがった大根が、灯の下でつややかな飴色を見せています。この季節、美味しくなってきた大根の、あたたかくうれしい一品です。(臼井愛代)

★きらきらと溶け行く朝の薄氷/丸山美知子
夜の間に張った薄氷が、朝の日に溶けてきらめいています。薄氷のうつくしい変化に目を留められた感動があります。(臼井愛代)

★マフラーを口まで巻いて少女駈く/川名ますみ
寒さに負けまいと、口の辺りまでマフラーに顔を埋めて元気に駈けてゆく少女を微笑ましく目で追う、作者の楽しげでやわらかな眼差しを感じます。(臼井愛代)

★谷戸の田の静まりまぶし冬木立/小西 宏
谷戸は丘陵地が侵食されてできた谷間の低地。規模も大きくなく、動植物の豊かな生態系をもつといわれている。その谷戸の田が今しずかで、まぶしい日があたっている。周りに冬木立が見える。(高橋正子)

★昇る陽に残りて高き冬の月/桑本栄太郎
東からは太陽が昇ってきているのに、冬の月がまだたかいところに白く浮かんでいる。陽も残る月もある景色。(高橋正子)

★陽当たれば丸き色濃し竜の玉/古田けいじ
竜の玉は、リュウノヒゲの実で、小さく丸い青が美しい。陽があたると、つやつやとしてなお色を濃くするようである。(高橋正子)

★裸木や小鳥の声の透き通る/篠木 睦(正子添削)
冬は人里に小鳥が多くやって来る。葉を落としてしまった裸木の間を抜けて聞こえる小鳥の声は、晴れた日の空気のように透き通っている。(高橋正子)

★日を包み日差し弾きぬ水仙花/渋谷洋介
水仙に日があたっている。日を溶け込ませ、また日に輝いて日差しを弾いている水仙の花である。(高橋正子)