花冠５月号掲載作品

六郷の渡し
　　　　　　高橋信之

　日本橋
春浅き日本橋を渡りけり
旅立ちに二月の高き空仰ぐ
春浅しここに魚河岸がありき
　品川宿
春旅の気ままさに煎餅を買う
木の家の下駄売る店の春曇り
　川崎宿六郷の渡し(多摩川)
川向うは宿場よ春の雲浮かせ
川渡り西へ西への春の旅
　神奈川宿
銀杏芽木欅芽木立ち吾もここに
寺多き町の通りが梅の香に
　日吉本町
桃咲くや日を昇らせている丘に

花冠４月号掲載作品

寒の晴
　　　　　　　　　　高橋信之

慶大日吉キャンパス三句
寒天のからりと晴れて並木の列
テニスコートの光と音と寒の晴
山の斜面の落葉へ朝日差してくる
熊野神社四句
高台に境内があり寒の晴
寒晴の風こころよし幣ひらひら
寒禽の啼きいて晴れの空を飛ぶ
さんさんと寒の陽が差し影を生む
金柑の金散らばって空の晴
折り紙の升に入って追儺豆
仰ぎ見る樹があって空があって春

花冠３月号掲載作品

玻璃戸
　　　　　　　　　　高橋信之

初日待つ玻璃戸の青の明るさに
初空の晴れて一つの大きさよ
　鯛ヶ崎公園二句
二日の子ら遊ばせ真っ平らな広場
二日晴れて子らの声遠くまで響く
どのビルも二日の夕日を真向かいに
二日なり明日またあると思う日よ
卓上の深夜の蜜柑眼に赤し
　日吉本町駒林神社三句
一月晴れて境内を水流る音
御手洗へ水の落ちゆく寒の音
白梅の陽に輝いて青空へ

花冠２月号掲載作品

落葉踏む
　　　　　　　　　　高橋信之

　鯛ヶ崎公園三句
落葉踏むことの楽しさ今日がある
すくと立つ冬木に朝の空青し
ブランコへ陽の当たりいて木の葉降る
　日吉本町駅
駅裏の一画荻の穂へ朝日
ごみ捨てに師走の朝の快晴よ
はつ冬の朝の空気が新鮮に
はつ冬の暁けゆく景の眼に鮮やか
冬に入る天井の四角が広し
　新横浜駅に大阪の河野啓一さんを迎えて句会二句
友遠方より来てはつ冬の楽しさよ
駅ビルが欅紅葉が冬空へ

花冠１月号掲載作品

駅ビル
　　　　　　　　　　高橋信之

　鶴見川支流の早淵川二句
土手を歩く歩く葦の穂新鮮に
秋日さんさん生きもの多く水に棲む
独り居のこの明るさの十三夜
父がいて秋芝の子が活発に
　横浜岸根公園
樹の影が愁思の吾を入れて濃し
　新横浜駅
振り返り見る駅ビルが秋天へ
　鶴見川支流の鳥山川四句
桜紅葉を透かして朝の日のあかあか
地に落ちて桜紅葉の葉が大き
せきれいは身近な鳥よわが前に
はつ冬の空のひろびろ鳥たちに

●３月伝言板

●高橋信之のウェブサイト
http://kakan.info/nobuyuki/

●高橋信之文学著作集
http://blog.goo.ne.jp/kakan114/

●月刊俳句雑誌「花冠」
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/

●花祭ネット句会
花祭(釈迦誕生日4/8)ネット句会を開催します。投句期間は、４月６日～４月１０日です。
http://blog.goo.ne.jp/kakan15/

●インターネット俳句センター
http://suien.ne.jp/haiku/



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