会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

オー・エイチ・ティー、今期最終赤字7億8000万円・無配に

オー・エイチ・ティー、今期最終赤字7億8000万円・無配に

プリント基板検査装置のオー・エイチ・ティー(東証マザーズ上場)が、2008年4月期の連結最終損益が7億8000万円の赤字になる見込みであることを発表したという記事。2008年4月中間期の半期報告書も約1ヶ月遅れで提出したようです。

また、同時に過年度決算の訂正も発表しています。

「平成20年4月期中間期決算の状況」の開示及び半期報告書提出 並びに過年度決算にかかる訂正の概要に関するお知らせ(PDFファイル)

このプレスリリースによれば、2003年4月期から2007年4月期までの決算を修正しています(ただし、数値は未監査)。このうち2006年4月期は、訂正前の営業利益269百万円に対して、訂正後が167百万円の赤字になっています(437百万円利益過大)。

訂正理由は、売上の修正(売上計上後返品されたものを修正)と、仕入計上遅れによる売上原価計上遅れなどです。

売上修正の方は、「売上計上基準に付随する条件(検収目途が明確であること)を、営業担当者の独自の検収見込みに関する判断に任せていた」ということが背景にあるようです。「過去の経営者による増収戦略偏重」のために担当者にプレッシャーがかかっていたともいっています。また、「受注生産によって事業を展開しておりますが、過去において顧客との信頼関係を前提に口頭発注時や仕様決定時に製造が開始される」ということで、取引慣行上、そもそも受注の段階から不透明な面があったようです。

確立された製品を販売するというのではなく、新しい製品を顧客といっしょになって開発しながら販売していくという状況だったようですから、一概に会社の責任とはいえないのかもしれません。

原価計上もれの方は、プレスリリースによれば「売上・仕入・在庫・原価等のシステムを市販のソフトウェアや社内作成のソフトウェアで別々に管理していた状態」であり、「売上情報と製造原価情報、仕入情報との間での情報交換がないために、売上計上後、相当期間を経たのち仕入が計上されていたとしても、それを発見するような仕組みが不十分」だったことが背景にあるようです。

これらの誤りが内部統制体制の構築を進める過程で発見されたというのも注目すべき点です。J-SOX対応ということになると、当然売上に関する取引フローを洗い出していくわけですが、その入り口である受注があいまいだと先に進めなくなります。もちろん、受注だけでは、財務会計の数値には影響しませんが、それが売上に結びつく出荷の段階に至るまであいまいなままだと、仮に出荷が行われたとしても、それは単にモノが動いたというだけで、代金の請求権の発生を伴う本当の売上とはいえません。
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