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当社第 77 回定時株主総会開催に関する監査法人の監査意見不表明についての事情ご説明(サンテック)

当社第 77 回定時株主総会開催に関する監査法人の監査意見不表明についての事情ご説明(PDFファイル)

サンテック(東証スタンダード)のプレスリリース(2024年6月12日)。

同社は、RSM清和監査法人から、意見不表明の監査報告書(2024年3月期)を受領しましたが(→当サイトの関連記事)、この意見不表明の事情などについて説明しています。清和は、昨年、東邦監査法人 から交代したばかりでした。

ある建設工事の原価見積りが問題となっていましたが...

「当社は3年前の当社決算期である 2022 年3月期(第 75 期)に北陸のトンネル照明設備更新工事(以下、「当該工事」といいます。)を請負いましたが、2024 年3月期(第 77 期)決算において工事原価総額見込みを見直したところ、受注当時の見積もり漏れ、その後の工事原価増額などにより損失が発生することが本年4月3日開催の経営会議において認められ、2024年3月期(第 77 期)第4四半期において損失処理を行いました。

しかしながら、本年4月3日開催の経営会議資料を閲覧した監査法人から、本来、工事原価総額が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には工事損失引当金を計上する必要があり、当該工事に係る損失は、当該工事を受注した2022 年3月期第2四半期から 2024 年3月期末までの決算期間にかけて計上する必要がある可能性について指摘を受けました。

その指導に基づき合理的な費用配分をすべく、その裏付けとなる資料を提示しながら、当社は監査法人から指摘を受けた事項に対して本年4月から対応してまいりましたが、当該工事現場の当時の工事管理者は既に退職しており、加えて管理する当時の事業所長も交代した事情もあり、監査法人が求める資料提出には時間を要し、株主総会開催を決定する取締役会開催時期である5月中旬においてもなお、監査法人において十分な監査証拠を得られないと指摘を受けました。

また、監査報告書に記載の通り、当該工事に類似する案件の網羅性や類似する案件の見積り工事原価総額に誤謬が発生していないかに関する調査が、海外現地法人の工事に及ぶため十分かつ適切な監査証拠を監査期間中に完全に提供することができませんでした。その結果、監査証拠資料が十分でないと認定され「意見不表明」となりました。」

この工事の損失計上の時期が問題になっている(過年度(場合によっては受注時から)に計上すべき部分があるのではないか)ということなのでしょう。会社も「受注当時の見積もり漏れ」にふれています。

定時株主総会については...

「当社取締役会及び監査役会は、監査法人の「適正意見」がない異常な事態を前提するものではありますが、慎重に調査・検証した結果、第 77 期の計算書類に記載されている内容は当社が把握しうる過去の損失を全額計上していることを確認しました。

第 77 期に関する株主総会開催が迫っている中、いったんは監査法人の監査結果を待って監査結果を示すことなく会社法の許す範囲で予定通り株主総会を開き、その後監査法人の監査結果を受けて、第 77 期に関する株主総会の「継続会」にて株主の皆様に審議をいただくことを検討しましたが、海外現地法人案件を含む類似案件の調査に必要な資料を提出するには
なおも時間を要することから、継続会開催の目途が立たず、継続会開催による株主総会対応を断念しました。」

株主総会では、計算書類の承認、配当、役員選任を議案とするそうです。意見不表明のままではリスクがありそうですが、2024年3月末で指摘があった引当金は計上済みであり、また、剰余金は十分なのだそうです。

「なお、当社は、監査法人が指摘しています工事損失引当金は第 77 期に計上し、また、約 230億円の利益剰余金をもっていますので、本定時総会で提案しております配当議案の内容には法律上の問題がないことを付言します。」

監査法人は、海外現地法人の工事を含む類似工事の原価見積りについての監査手続が未了であることもいっているので、厳密には、北陸のトンネル照明設備更新工事の損失を全額計上済みだとしても、剰余金が十分であるかは断定できないでしょう(監査手続未了の工事から大きな損失が出る可能性も否定はできない)。

監査法人から指摘された全社的な共有資産の減損の問題についても、簡単にふれていますが、ここでは省略します。

第三者調査委員会設置のお知らせ(PDFファイル)

「なお、今月末に予定されている有価証券報告書の会計監査人の監査意見に本調査委員会の途中調査結果は反映されない見込みです。」

ということは、有報の監査報告書も通常どおりのタイミングで出すのでしょう。調査委員会の調査結果は反映されないとのことなので、有報も意見不表明となるのでは。

調査委員会委員は、なんだか強そうな名前の監査法人に所属する会計士2名と、法律事務所の弁護士1名です。

2024年3月期 決算説明資料(PDFファイル)

サンテックの決算説明資料を見ると、問題の案件以外にも、原価が増えてしまった工事があるようです(「国内大型工事3件」といっている)。

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