根つめる勿れと口酸く言いくるる近く住む子の肩の荷となり 煙山久仁子
ひのえうまと言う語のありきその年に生れし娘が孫見せに来る 吉川さとる
月の夜は桃源郷を恋ひゆかな穢土の木の実も甘やかなれど 安藤のどか
どんな刃で削りしものか老母の鉛筆の芯長く反り打つ 石山 宗晏
余世は歩巾をせばめゆっくりと妻と一諸の風の旅人 荒井与志男
ひんやりとビル建ち並ぶ歩行路を歩みゆく背に聴く秋の風 太田 朱美
しんしんとひとひらの昆布がしみいでてお鍋の中の海にただよう 柊 明日香
果樹園の名もなつかしき 十五年住みたる町の巨峰のとどく 香月千代子
かまえなく「日本沈没」観て帰るわれに重たき夕闇せまる 田村 睦子
ちぎれ雲遠く夕陽を浴びてをりふたたび死産すむすめ訪ふ路 鎌田 章子
見も知らぬ町への旅にこころ急くひつそりと秋の迫る気配に 松倉美知子
貧弱なヒマワリ五本並び立つ八月晦日の晴天の下 幕田 直美
わすれてもいい約束をくり返す水にとうふの浮力沈めて 柳澤 美晴
なにげない夜が愛しい 一人行くアンダーパスにも届け月影 智理 北杜
藤棚の小暗きあたりもとおれば悔恨の情日々に新し 西勝 洋一
ひのえうまと言う語のありきその年に生れし娘が孫見せに来る 吉川さとる
月の夜は桃源郷を恋ひゆかな穢土の木の実も甘やかなれど 安藤のどか
どんな刃で削りしものか老母の鉛筆の芯長く反り打つ 石山 宗晏
余世は歩巾をせばめゆっくりと妻と一諸の風の旅人 荒井与志男
ひんやりとビル建ち並ぶ歩行路を歩みゆく背に聴く秋の風 太田 朱美
しんしんとひとひらの昆布がしみいでてお鍋の中の海にただよう 柊 明日香
果樹園の名もなつかしき 十五年住みたる町の巨峰のとどく 香月千代子
かまえなく「日本沈没」観て帰るわれに重たき夕闇せまる 田村 睦子
ちぎれ雲遠く夕陽を浴びてをりふたたび死産すむすめ訪ふ路 鎌田 章子
見も知らぬ町への旅にこころ急くひつそりと秋の迫る気配に 松倉美知子
貧弱なヒマワリ五本並び立つ八月晦日の晴天の下 幕田 直美
わすれてもいい約束をくり返す水にとうふの浮力沈めて 柳澤 美晴
なにげない夜が愛しい 一人行くアンダーパスにも届け月影 智理 北杜
藤棚の小暗きあたりもとおれば悔恨の情日々に新し 西勝 洋一