かぎろひのうた

無系譜の短歌集団として50年の歴史をもつかぎろひ誌社に参加して、かぎろひ誌社と旭川歌人クラブの活動をお知らせしたい

平成23年9月 歌会の歌

2011-09-17 20:37:32 | 仲間の歌
偕老を誓いし夫ははやも亡く独りの夜長を歌誌ひもどきぬ          神林正惠

「おだつな」と声をかけたき大臣(おとど)あり わが一言はひとを刺さむや 鎌田章子

日をかけて茄子花さきていじらしき無駄花なしと子茄子輝よう        久保田一恵

音楽堂の背後に今日も見える山濃き藍青に動くものなし           石山宗晏

何気なく手にとる本のあたらしき匂ひは遠き日の恋に似て          松倉美知子

街中に若き女のブロンズ像鳥糞(ふん)に汚れて恥づるがに立つ       井上敬子

秋空に一等星は一つだけ一等賞に程遠い俺                 智理北杜

垂れ籠める雲に深山のりんどうは雨待つ姿勢か花びら閉ぢる         清水喜久子

会えば損したような思いになる人と居れば茶房の青葉が翳る         西勝洋一

薄目あけわたしを見てる三毛猫を愛しと思う怖しと思う           柊明日香

耐えきれず溢れ落ちくる天の水暗愁の雨は土地を潤す            安藤のどか

ごちそうをねらへる猫のはきしやし藤田嗣治の『ディナーパーティ』     香月千代子

吾は見たり老いたる羊がその罪を贖うために引かれてゆくのを        吉川さとる
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 かぎろひ9月号 合評

2011-09-17 20:15:40 | 仲間の歌
                         抄出 鎌田章子     

無理矢理に聞こうとしてはだめなのだ 静かに口を開く時まで    西勝 洋一

いにしへの武士に二言はなしという言葉の重み失せて哀しき     柳澤 正保

花びらの落ちる刹那を見し時の胸処の痛みは塩水に似て       智理 北杜

ざまあみろと言ったつもりか鮮やかに墨黒黒と「閉店しました」   伊藤 白厳

ボタン無きシャツ着ておりぬ異食癖の子の左手をしつかりとつなぐ  桑原憂太郎
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柳澤美晴歌集 一匙の海

2011-09-04 13:34:12 | 仲間の歌
 未来所属の柳澤美晴さんが第一歌集を出版されました。
歌壇賞を受けられた「硝子のモビール」も入っています。
私は2009年以降の歌が好きです。養護教諭として働いている現場の歌が、心に直接響くのです。

ぽろぽろとピアノと語る 生徒らが掃除をやめて出て行った後

理科室の机の端に刻まれて「キエロ」の文字の白々と照る

口つぐむ少女と向かいあう時を保健室への水圧強し

夢の中叱る生徒に目鼻あらずはんかくさい物言いはそのまま


たぶん歌集名はこの歌からとったのではないでしょうか。

ティースプーン一杯の海 ただ1度きみを彼方(あなた)と呼んだ日が光る

恋愛の歌もたくさんちりばめられて、読む側の感性をちょっとばかり若返らせてくれそうです。
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