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「自分が源泉」ファシリテーター、4nessコーピングインストラクターである弁護士徳岡宏一朗のブログです。

文藝春秋が神戸連続児童殺傷事件の家裁決定全文を掲載した 2

2015年04月15日 | 法律・事件・事故・裁判

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詳しく言うと、今回の決定書全文の公表については、元裁判官による守秘義務違反という司法制度の根幹に関わる重大な問題を孕んでいることはもちろんですが、次の2点においても極めて問題です。


1 少年のプライバシーに対する配慮を欠いておりその更生を著しく阻害する懸念がある


 まず今回の決定文全文公表は、少年の犯行について本人と推知することができるような記事の掲載を禁止した少年法61条に反するのみならず、少年審判の非公開を定めた同法22条2項にも反しています。

  そもそも、少年法1条は少年の健全な育成を期するという目的を規定していますが、これは少年が人格発達途上の未成熟な存在であることに基づき、子どものもつ成長発達権を保障する趣旨にたったものです。

  それを受けて、少年法22条2項・61条はこの趣旨を踏まえ、少年及びその家族のプライバシーを保護するとともに、過ちを犯した少年の更生を図ろうとするものであり、裁判所の報道機関に対する審判要旨の公表についても、これら条項との関係から慎重にしなければならないとしているのです。

  そして、これらの趣旨は、少年が成人したあとにももちろん遵守されなければならないのです。なぜなら、それが非行を犯した少年の更生へ意欲を高め、新たな被害の発生を防止するという公共の福祉にとっても有益だからなのです。


 つまり、少年はもちろんこと、それのみならず社会にとっても大事なのが、少年事件における徹底したプライバシーの秘匿なのです。

  もちろん、文春や井垣さん、共同通信の記者らには憲法21条が保障する表現の自由が保障されていますが、表現の自由も絶対無制約ではなく、「公共の福祉」に反する表現は許されません。


 この点、今回の決定文全文公表は元少年のプライバシー権を著しく侵害し、その更生を著しく阻害し、被害者遺族など関係者に多大な損害を与え、なおかつ今後の少年審判に対する信頼を著しく損なうなど少年事件の処理にも重大な支障をきたすことに鑑みれば、今回の記事が違法であることは明らかです。


 

それでも少年を罰しますか
野口善國
株式会社共同通信社

 

 冒頭で触れた弁護団団長の野口善國弁護士の名著です。本物の少年事件弁護士の姿がここにあります。
 
 
 
 
少年法

(この法律の目的)
第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。
 
第二十二条 審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない。
2  審判は、これを公開しない。
3  審判の指揮は、裁判長が行う。
 
(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。





2 遺族に対し深刻な二次被害を及ぼすものであること

  次に、全文公表によって、遺された遺族に対し、またも好奇の視線が向けられる懸念があります。実際に、土師くんのお父さんは先ほどご紹介したように「大変つらい」とコメントされているのです。


 まさか、被害者遺族に何の断りもなく、決定文全文を雑誌社に渡してしまうとは驚きます。


 この決定文全文公表により、遺族の名誉・プライバシー権も著しく侵害された可能性が高く、遺族に対し深刻な二次被害を及ぼすことになりかねないのです。


 このように犯罪被害者の人権の観点からも、今回の決定文全文公表は極めて重大な問題を孕んでいるのです。




 私は井垣さんとは個人的にも親しくさせてもらっており、医学宅には何度もうかがって、勉強会にも参加しました。


 勉強会の後には、非行少年たちと交流するために井垣さんが自宅に設置された卓球台をはさんでビールを飲みながら対決したり、お互いに夫婦でダブルスを組んで戦ったり、井垣さんとは楽しい思い出がいっぱいあるのです。


 あれほど、非行少年の更生に熱い弁護士さんもめったにおられないほどの人です。


 でも、今回のことを思うと私には『蛮行』という言葉しか浮かんできません。井垣さんの視野があまりにも狭いことを深く深く嘆くものです。


 文春と井垣さんたちは、須磨事件の遺族の方々や、A少年やその家族や、少年審判そのものを踏みにじりました。


 ですから、井垣さんと文芸春秋と共同通信社の記者には、やはり激しく抗議せざるを得ないのです。


 そしてそれだけでなく、井垣さんは井垣さんを敬愛した私の教え子たちと私たち家族も大きく傷つけたのです。



 

 

 

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毎日新聞 2015年04月10日 23時23分

 ◇月刊「文芸春秋」5月号 文芸春秋、執筆者、弁護士3者に

  神戸市須磨区で1997年に起きた連続児童殺傷事件で、中学3年だった加害男性を医療少年院送致とした神戸家裁決定の全文が10日発売の月刊「文 芸春秋」5月号に掲載された。神戸家裁(岡原剛所長)は10日、文芸春秋と記事を執筆した共同通信社の佐々木央編集委員、全文を提供した元神戸家裁裁判官 の井垣康弘弁護士の3者に抗議文を送った。

 家裁は決定時、要旨だけを公表した。抗議文では、3者に「少年法で非公開とされている少年審判に対する信頼を著しく損なう」とし、更に井垣弁護士には「守秘義務に反する」と指摘した。

 決定の全文は、井垣弁護士から提供を受けた佐々木編集委員が文芸春秋に寄稿する形で掲載。要旨にはなかった詳細な成育歴などを盛り込む一方、名前の一部は伏せ字にした。

  文芸春秋は「全貌を知ることによって、社会がくみ取ることができる教訓が多いと考えた」、共同通信社総務局は「掲載された詳しい経緯など事実関係 を調査中」とのコメントを出した。井垣弁護士は取材に「決定時、全文公表を家裁所長にお願いしていた。要旨が公表された以上、守秘義務違反には当たらな い。少年の償いについて具体的な提案を考えており、成育歴も含めて社会に知ってもらい、支えてほしいと思った」と話した。【後藤豪、井上卓也】

 

 

2015/4/10 23:55 神戸新聞

 神戸家裁は10日、少年審判の決定全文を掲載した文芸春秋と、記事を寄稿した共同通信社の佐々木央編集委員、事件を担当した元判事で、全文を提供した井垣康弘弁護士に抗議文を送った。

 神戸家裁の岡原剛所長は抗議文で「裁判官が退職後も負う守秘義務に反する行為」とした上で、「非公開とされる少年審判に対する信頼を著しく損なうもの。事件関係者に多大な苦痛を与えかねず、誠に遺憾」と厳しく批判している。

 これに対し、井垣弁護士は「事件を理解する上では、決定要旨で省かれた加害男性の生育歴について、正しい情報を共有することが必要。少年法と照らしても、公開は特に問題はないと考えている」と話した。

 「文芸春秋」編集部のコメント 神戸連続児童殺傷事件は、今日も続く重大な少年事件の原点ともいえる事件で、その全貌を知ることによって、社会がくみ取ることができる教訓が多いと考え、掲載を決意しました。

 共同通信社総務局のコメント 共同通信社は、被害者感情や元少年が社会復帰していることに配慮し、決定全文の内容を報じていません。編集委員が寄稿する形で掲載された詳しい経緯など事実関係を調査中です。

 

2015年04月10日 16時10分

「文芸春秋」中吊り広告
「文芸春秋」中吊り広告

本日発売の「文芸春秋」に、1997年に神戸市で起きた「連続児童殺傷事件」の神戸家裁の決定全文が掲載された。

家裁審判の全文を公表

(株)文芸春秋は4月10日発売の「月刊文芸春秋」に、「少年A(酒鬼薔薇聖斗)神戸連続児童殺傷 家裁審判『決定(判決)』全文公表」という記事を掲載した。

記事の広告には、「時代を新刊させた事件の全貌が初めて明らかになった」と書かれている。

神戸連続児童殺傷事件とは?

1997年、神戸市で連続児童殺傷事件が発生した。兵庫県警はこの事件の容疑者として「酒鬼薔薇聖斗」と名乗る当時中学3年の少年を逮捕。神戸家裁は少年に「医療少年院送致」の保護処分を決定した。

神戸家裁はこの事件について、公表は要旨までに留めていた。

「少年法には触れない」と弁護士

今回の全文掲載には、神戸家裁の裁判官として決定を出した井垣弁護士が関わっているという。井垣弁護士は今回の公表について「加害男性の名前は出ていないので少年法には触れない」と説明し、このように話した。

要旨では男性の成育歴が大きくカットされた。事件の特殊性や、その後も重大な少年事件が相次いでいることにかんがみ、全文を国民に読んでもらうべきだ

文芸春秋の担当者は「全貌を知ることで多くの教訓を読み取れると考えた」と話している。

ネット上には賛否両論の声

この報道に対して、ネット上にはさまざまな意見が寄せられている。

  • これは買わねば
  • 当時の決定全文を知る権利は国民にはある
  • 少年犯罪の正しい理解の妨げになる可能性もある
  • もう被害者の名前は出さなくてもいいだろうに
  • 被害者の家族は納得しているのか?
  • 被害者遺族の思いも斟酌した掲載であればいいが
  • 全文を国民に読んでもらいたいのに商業誌に掲載する意味がわからない

「読みたい」という声も多数みられたが、中には「被害者家族への配慮を心配する意見」や、「全文公開は裁判官としてやってはいけないことなのではないか」という意見もあった。

被害家族への配慮はあるのか?

今回の家裁決定全文の公表について、ネット上には被害者家族への配慮を心配する声が多数投稿されていた。

被害者家族のもとには毎年、加害者から手紙が届いている。被害女児の母親は、その手紙を読んで毎年涙を流しているという。

加害者男性の名前は出ていないということだが、被害者家族への配慮は行われているのだろうか?

 

 

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