チハルだより

絵本・童話作家 北川チハル WEBSITE

えほんのひろば

2010-03-29 | エッセイ


「えほんのひろば」へ、毎回百冊の絵本を持って出かけています。かめおかっこひろば(子育て支援センター)ふれあいプラザにやってくるお子さん、親御さんたちと一緒に絵本を楽しむためです。
「子どもに絵本を読んであげたいけれど、どうすればいいのか分からない」
「絵本は一日どのくらい読めばいい?」
「うちの子は、絵本に全然興味がないみたい」
「絵本をなめたりかじったり、破ったりしてしまう」
「お店や図書館へ行っても、絵本がいっぱいありすぎて、どれを選べばいいか、とても悩む」
「子どもより、親のほうが絵本が好きで」
など、様々な思いや悩みをお持ちの方々が、たくさん遊びに来てくれます。お子さんは、0~3歳ぐらいが多いでしょうか。
 わたしの親子で楽しむ絵本デビューは、上の子が生後三か月のころでした。なかなか眠らず、抱っこで歩いていないと泣くわが子。ともに涙しながら寝転んで、絵本を広げたのが始まりです。まだ首のすわらない子に絵本は早いと思いましたが、情けない自分の涙を止めたくて、わたしはわたしのために、わたしの好きな絵本を声に出して読んだのです。
 ふしぎなことに、子どもはぴたりと泣き止みました。絵本を読む親の声に泣き止んだのです。内容を理解したわけではないでしょう。親の心が、絵本に癒されていくことを感じ取り、赤ちゃんも、ほっと安心したのでしょう。
 その後、わが家の絵本は、どんどん増えていきました。今では二人の子どもたちも、活字の並ぶ本を好む、中学生と小学生。棚に眠る絵本たちが、あんまり寂しそうなので、補修やクリーニングを施して、「えほんのひろば」で、自由に遊んでもらうことにしたのです。
 赤ちゃんに、いっぱい絵本にふれてほしいから、こまめな補修とクリーニングが必要で、そのため貸し出しはしていません。一斉の読み聞かせもしていませんが、「これ読んで」とリクエストがあったなら、字のない赤ちゃん絵本も読んでいます。ただ、どんな読み方をしようとも、決してママには、かないません。
 赤ちゃんは、ママに読んでもらうことを、なによりも喜びます。絵本は読み方よりも、そばに寄り添って読んでくれる人の心が大切です。家族の声が、いちばん安心できて楽しめて、心地よいものなのです。
 親御さんたちにも楽しんでほしいから、赤ちゃん向け以外にも、様々なグレード、ジャンルの絵本をご用意しています。親子で遊ぶ絵本タイムのお手伝いは、とても楽しくてうれしくて、「えほんのひろば」へ行く日が毎回待ち遠しいのです。

■京都新聞 2010年3月23日 丹波版 口丹随想


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