東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

2023年 展覧会ベスト10

2023年12月31日 | 展覧会(日記)
   今年見た展覧会のお気に入りベスト10(今年で14回目)。
 
 
 
1位:やまと絵 受け継がれる王朝の美
2023年10月11日〜12月3日
東京国立博物館
 
 1期から4期まで皆勤。
 質量ともに圧倒的。個々にはこれまで見たことのある作品も相応にあるけれども、一堂に会するのは壮観。「日本美術の教科書」を実物で読むという体験。私的に今後の日本美術鑑賞の拠り所となるだろう。
 
 
 
2位:東京大学経済学図書館所蔵
ウィリアム・ホガース版画(大河内コレクション)のすべて
近代ロンドンの繁栄と混沌(カオス)
2023年5月13日〜6月25日
東京大学駒場博物館
 
 18世紀英国の画家ウィリアム・ホガース。
 その名前は認識していたが、ジン横丁とビール街の版画を除き、作品実見の記憶がなく、イメージがなかった。
 東京大学経済学部で長く教鞭をとられた大河内一男・暁男両教授が親子二代にわたって収集し、2017年に東京大学経済学図書館に寄贈された、ホガースの銅版画のコレクション全71点を一挙公開した本展。
 18世紀英国の社会・文化が細密に描かれ、いろいろな仕掛けがなされて情報量が多い風刺的な版画群。
 私が楽しんでいるのは画家のメッセージのごく一部に過ぎないであろうが、それでも非常におもしろい。
 入場無料、鑑賞者も少なく自分のペースで鑑賞できるのがありがたく、来場者が質問・疑問を記して作品のまわりに貼る黄色のポスト・イット(監修の先生からの回答を記した青色のポスト・イットもあったらしい)や、学生さんたちが作成した作品解説も為になり、結局4回訪問してしまった。
 
 
 
3位:永遠の都ローマ展
2023年9月16日〜12月10日
東京都美術館
 
 なんといっても、《カピトリーノのヴィーナス》の奇跡の来日! 
 私的には、本展展示品を通じて古代ローマ美術への関心が高まったこともありがたい。
 次の巡回先・福岡市美術館にも、カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》を見に行きたい。
 
 
 
4位:重要文化財の秘密
2023年3月17日〜5月14日
東京国立近代美術館
 
 明治以降の絵画・彫刻・工芸の重要文化財のみ(国宝はまだない)で構成された展覧会。開催時点で重要文化財に指定されている全68件のうち51点が出品された。
 前期は未訪問も、後期に2度訪問。
 個々の作品も楽しかったが、評価が揺れる可能性がある時代の美術品ならではの、重要文化財指定のドラマを伺うのも楽しかった。
 
 
 
5位:没後200年 亜欧堂田善
江戸の洋風画家・創造の軌跡
2023年1月13日〜2月26日
千葉市美術館
 
 江戸時代後期に活躍した、現福島県須賀川市出身の洋風画家、亜欧堂田善(1748〜1822)。
 府中市美術館「春の江戸絵画まつり」などにより興味を持っていたところ、待望の回顧展。
 前後期とも訪問。
 洋風画家の作品は、画家それぞれに独特の味があって、おもしろいが、田善の洋風画は、より不思議感が強くて、一層おもしろい。
 
 
 
6位:レオポルド美術館 エゴン・シーレ展
ウィーンが生んだ若き天才
2023年1月26日~4月9日
東京都美術館
 
 ルドルフ・レオポルド(1925〜2010)の個人コレクションを主とするウィーンのレオポルド美術館のコレクション展。
 エゴン・シーレ50点に、同時代の作家たちを含めて全120点ほどの展示。
 貴重な機会を大いに楽しんだが、物足りなさも感じてしまうのは、美術鑑賞を始めたばかりの時代に経験したBunkamuraのシーレ100%・100点超のあまりにも濃厚すぎる回顧展の余韻がいまだ強烈に残っているため。
 
 
 
7位:パリ ポンピドゥーセンター
キュビスム展 美の革命
2023年10月3日〜2024年1月28日
国立西洋美術館
 
 50年ぶりだという大「キュビスム展」。
 1910年代およびその前後の数年間に制作された、質量ともに高レベルの作品群で紹介するキュビスム展は、日本ではおそらく初めてであろうし、今後も期待できないだろう。私的好みでこの順位にしたけれども、私が行ったなかでは、2023年西洋美術展のNo.1の内容だと思う。まだ会期があるし、京都に巡回するので、未見の方は是非。
 
 
 
8位:モネ 連作の情景
2023年10月20日〜2024年1月28日
上野の森美術館
 
 このご時世に、海外12ヵ国34館等から50点のモネ油彩画(東京・大阪あわせて)を、パリの美術館抜きで集めたというのは凄い。
 そして国内18館25点の油彩画(東京・大阪あわせて)も加わっての「100%モネ」展。
 ベリール、積みわら、クルーズ渓谷、ロンドン(ウォータールー橋、チャリングクロス橋、国会議事堂)の連作展示は見応えがあるし、《昼食》ほか印象派以前の時代も押さえているのも高評価。
 国内所蔵作、および「モネの庭、睡蓮の池」作品の展示は、2024年に巡回する大阪展のほうが充実する計画。
 大阪展でも見たいモネ展。ただ、クルーズ渓谷が、東京は2点に対し、大阪は1点となることが惜しい。
 
 
 
9位:椿椿山展 軽妙淡麗な色彩と筆あと
2023年3月18日~4月16日
板橋区立美術館
 
 江戸後期の文人画家・椿椿山(1801-54)。
 後期に訪問。花鳥画・山水画は概ねスルーだが、肖像画に嵌ってしまう。
 師の没後12年かけてようやく完成したという重文《渡辺崋山像》とその画稿群。
 モデル夫妻の10年という月日の経過を認識させられる《佐藤一斎(七十歳)夫妻像》&《佐藤一斎夫妻像(一斎八十歳)》。
 前期未訪問を惜しく思う。
 
 
 
10位:関東大震災-原点は100年前 -
2023年7月29日〜9月18日
神奈川県立歴史博物館
 
 2023年は関東大震災から100年。首都圏の美術館・博物館でも、いろいろな関連展覧会が開催された。
 その代表として、神奈川県立歴史博物館の展覧会を挙げるが、ほかにも、国立科学博物館、東京国立博物館、東京国立近代美術館、国立公文書館、東京都復興記念館、消防博物館、吉村昭記念文学館、千代田区立日比谷図書文化館、東京新聞本社、半蔵門ミュージアム、UNPEL galleryなどの企画を訪問した。
 
 
 
次点:ゴッホと静物画 - 伝統から革新へ -
2023年10月17日〜2024年1月21日
SOMPO美術館
 
次点:北宋書画精華
2023年11月3日~12月3日
根津美術館
 
次点:インド細密画
2023年9月16日〜11月26日
府中市美術館
 
次点:合田佐和子展 帰る途もつもりもない
2023年1月28日〜3月26日
三鷹市美術ギャラリー
 
 
 
 2023年は、コロナの影響も激減し、年間を通して概ねコンスタントに美術鑑賞を楽しめた。
 
 ただ、行動範囲は、東京・神奈川・千葉どまりで、一度も遠征していない。
(あべのハルカス美術館「絵金展」は見たかった。)
 
 また、6月と10-11月は、特定の展覧会にハマって何度も通ったため、見逃した展覧会が多数あるのは心残り。
(その代表は、サントリー美術館「幕末明治の絵師たち」展と、東京国立近代美術館「棟方志功展」)
 
 2023年は、2022年のメトロポリタン美術館展やスコットランド国立美術館展のように、西洋の中世・ルネッサンスやバロック時代の名品・優品が出品される展覧会がなかったことが私的に物足りない。2024年も厳しそうな雰囲気である。
 
 事前予約制の展覧会も引き続き少なくないけれども、枠を拡大したのか、一部のキャパシティ懸念の美術館や会期末を除けば、当日でも入手できる、または窓口での当日券狙いでも概ねスムーズに購入できる感じ(例外はある)。
 おそらく来場者数は、コロナ禍前の水準には戻っていないのだろう。私のようなヘビーユーザーは変わらないとしても、ライトユーザーの来場が戻っていないのだろう。入場料水準アップの影響もあるだろう。
 
 
 
 2024年も、素敵な展覧会、素敵な作品に多数出会えますように。
 
 
 


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