東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

2016年 展覧会ベスト10

2016年12月31日 | 展覧会(日記)

   今年見た展覧会のお気に入りベスト10(今年が7回目)。 

 


1:カラヴァッジョ展
2016年3月1日~6月12日
国立西洋美術館

 

   回顧展は15年ぶり2回目。そもそも作品の来日自体が6年ぶりのこと。ファン渇望の展覧会。

   画家の真筆11点とカラヴァッジェスキ作品。

   世界初公開の新真筆作品《法悦のマグダラのマリア》が話題となった。日本人にとって、「カラヴァッジョ」=「マグダラのマリア(が法悦するシーン)を描いた画家」でイメージが定着してしまったのではないか。

   個人的には、ウフィツィ美《バッカス》。宮下規久朗氏の書籍での『画面左のワインのフレスコには、カラヴァッジョ自身の顔が映っているが、残念ながらこれは図版からでは判別できない。美術館でじっくり見ることをお勧めしたい。』との記述を読んでから10年近く。願いが叶った。

 

2:ボッティチェリ展
2016年1月16日~4月3日
東京都美術館


   2014年春のBunkamura「ポルディ・ペッツォーリ美術館展」、2014年秋の東京都美「ウフィツィ美術館展」、2015年春のBunkamura「ボッティチェリとルネサンス」展と続いたボッティチェリ・シリーズは、最高レベルの回顧展で締められた。

   ウフィツィ美の《ラーマ家の東方三博士の礼拝》 と《アペレスの誹謗(ラ・カルンニア)》、ポルディ・ペッツォーリ美の《聖母子(書物の聖母)》、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの《胸に手をあてた若い男の像》の4点は忘れがたい。

   これをもって、ボッティチェリにはまたしばらくご無沙汰期間が続くのかなあ。

 

3:クラーナハ展-500年後の誘惑
2016年10月15日~2017年1月15日
国立西洋美術館


   宗教画、肖像画、裸婦像、神話や聖書に登場する「誘惑する女性」像、ルターと宗教改革とプロテスタントの教義を主題とする新たな宗教画の創造。
   宮廷画家であり、大工房を運営し効率的なシステムの構築により大量の作品を生産した経営者であって、政治にも関わる。
   クラーナハの世界は、想像以上に広くて深いものであることを知った展覧会。

 

4:ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏
2016月2月20日~4月10日
東京ステーションギャラリー


   大半の作品のモデルが瓶や容器で、それも画家の「お気に入り」の瓶や容器が同じテーブルの上で同じ壁を背景にして、ちょっと位置を変えたりちょっと向きを変えたり少し物を入れ替えたりして、繰り返し描かれる。
   そんなモランディの世界が実に魅力的であった。

 

5:アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち
2016年7月13日~10月10日
国立新美術館


   ヴェネツィア・ルネサンスに絞った展覧会は初だろう。

   サン・サルヴァドール聖堂のティツィアーノ作の高さ4m超大型祭壇画《受胎告知》やジョヴァンニ・ベッリーニの赤い天使が不気味な《聖母子》。
   ラッザロ・バスティアーニの《聖ヒエロニムスの葬儀》は、サン・ジローラモ同信会のために制作された作品で、ある意味ヴェネツィアらしくてお気に入りの1点となった。

   本展は、大阪の国立国際美術館で1/15まで開催中である。

 

6:初期浮世絵展-版の力・筆の力-
2016年1月9日~2月28日
千葉市美術館


   初期の浮世絵版画は、今までほぼスルーしていた私。この全195点からなる「日本初の総合的な初期浮世絵の展覧会」により、「浮世絵版画のはじまり」約100年間を実物で追うことで、古くて、色に乏しく、硬い描写、では済まない、初期独特の魅力を知ることができた。

 

7:世界に挑んだ7年  小田野直武と秋田蘭画
2016年11月16日~17年1月9日
サントリー美術館

   お目当て作品は、初見となる小田野直武の重文《不忍池図》だが、今まで気になっていた「秋田蘭画」をたっぷり観ることができた。また『解体新書』の挿絵を小田野直武が担当していたことを初めて知ったほか、西洋油彩画の模写作品も見ることができた。 

 

8:新発見!天正遣欧少年使節  伊東マンショの肖像
2016年5月17日~7月10日
東京国立博物館 本館7室


   日伊国交樹立150周年記念企画。カラヴァッジョ展やボッティチェリ展のような空前絶後の大型展は勿論ありがたいが、本企画のように貴重作品の1点もの企画も非常に嬉しいもの。
 

   東博での関連講演会にも行ったが、美術史の研究というのはこういう感じで進められるのか、と印象に残る内容であった。

   2017年開催予定の「遥かなるルネサンス 天正遣欧使節が辿ったイタリア」も非常に楽しみである。 


9:生誕300年記念 若冲展
2016年4月22日~5月24日
東京都美術館

   シルバーデー 5/18(水)10:45時点に記録した320分を頂点に、5/20(金)の入場最終時刻19:30時点での180分など、特にGW後の凄まじい待ち時間や、通勤時の満員電車並みの鑑賞環境も話題となった本展。そんな情報が急速に行き渡ったのか、5/21(土)から5/24(火)の最後の4日間は、それほどまでの数値には至らなかったのは意外感あり(感覚が麻痺したことは否めない)。

   《動植綵絵》30幅。フルオープンの重文《菜蟲譜》絵巻。木版着色の《花鳥版画》全6点。《果蔬涅槃図》や《百犬図》。オールスターが揃う濃い展覧会であったことは確か。

   なお、京都市美術館の若冲展「若冲の京都 KYOTOの若冲」も、地元らしく普段使いっぽい?出品構成が好印象であった。

 

10:ゴッホとゴーギャン展
2016年10月8日~12月18日
東京都美術館

   ゴッホ27点、ゴーギャン19点。関連画家14名の作品を含め、オール油彩画の計62点。

   特にゴーギャン期待の私は、スコットランド国立美《タヒチの3人》、オードロップゴー美《ブドウの収穫、人間の悲惨》、ビュールレ・コレクション《肘掛け椅子のひまわり》などのラインナップに満足。

 

 

   2017年も素敵な展覧会に多数出会えることを期待しています。

 



3 コメント

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Unknown (左京区)
2017-01-01 00:00:07
K様

 お世話になっております。

 記事に挙げられた第1位から第3位は、文句なしに同感です。ここ数年のオールドマスターの充実ぶりには、本当にうれしい限りです。来年も、ティツィアーノ、アルチンボルド、ボイマンス美術館展(ブリューゲル・パティニール)、エルミタージュ美術館展などなど。
 定番の印象派以降の絵画でも、国立新美術館のルノワール展は、過去最高のルノワール展であったと思います。

 記事に挙げられた展覧会では、奈良国立博物館の信貴山絵巻展に地元ながら、行けなかったのが、痛恨事でした。
 他方で、東京国立博物館で櫟野寺展が開催され、遠征して会場でその素晴らしさを実感できたのは収穫でした。

 12月10日の記事の末尾に春の関西旅行のお話がありましたが、お伝えしたい展覧会として、下記を挙げます。是非「海北友松展」「快慶展」とのセットをご検討ください。

 ○「木×仏像」展
   大阪市立美術館
   2017年4月8日~6月4日

 また、秋の話で京博の国宝展とのセットをお勧めしたいのが、大英博物館との共同プロジェクトで、肉筆画メインという内容が大変気になる北斎展です。

 ○「北斎 -富士を超えて-」展
   あべのハルカス美術館
   2017年10月6日~11月19日
   http://hokusai2017.com/

 また、現在開催中で、もっと話題になって良いと思うのが…

 ○「北宋汝窯青磁水仙盆」展
   大阪市立東洋陶磁美術館
   2017年3月26日まで

 中国陶磁の中でも、北宋汝窯と言えば、紛れもなく最高傑作と思います。2014年の台北故宮博物院展でも、来日しなかった「青磁無紋水仙盆」は筆舌に尽くしがたい美しさです。

 また、少し先の話ですが、貴ブログ記事でその存在を知った2018年の「ビュールレコレクション展」は、とても楽しみです。同年春には、京都国立近代美術館で「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」も気になります。こちらは、東京への巡回があるのではないかと思います。

 いずれにしましても、来年以降も素晴らしい展覧会に恵まれそうです。

 良いお年をお迎えください。
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Unknown (左京区)
2017-01-01 00:10:12
K様

 続けてのコメント、申し訳ございません。

 コメント中、「信貴山縁起絵巻」展に言及しましたが、貴ブログ「2016年に見た印象に残る作品10選」記事と混同していました。失礼いたしました。
 また、「良いお年を」と言いながら、投稿時刻は、年を越していました。年初からのご愛嬌ということでお許しください(笑)。

 本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
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左京区様 ()
2017-01-02 21:39:00
左京区 様

あけましておめでとうございます。

コメントありがとうございます。

2016年の第1位から第3位まで、ご同感いただけて、嬉しく思います。

関西の展覧会情報、ありがとうございます。

 大阪市立美術館の「木×仏像」展は認識しておりませんでした。「木」という素材と木彫の「技」に注目する展覧会とのこと。奈良×天王寺の組合せは個人的に都合がよいので、有力案として考えたいです。

また、大阪市立東洋陶磁美術館の「北宋汝窯青磁水仙盆」展。この分野はいつもはスルーする私も、本展は非常に気になっています。上手くいけば1-2月に関西プチ美術旅行が可能となりそうなので、実現した際は、「青磁無紋水仙盆」を是非観たいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。
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