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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「西洋絵画、どこから見るか?」(国立西洋美術館)

2025年04月07日 | 展覧会(西洋美術)
西洋絵画、どこから見るか?
ルネサンスから印象派まで
サンディエゴ美術館vs国立西洋美術館
2025年3月11日〜6月8日
国立西洋美術館
 
 
 アメリカ・カルフォルニア州のサンディエゴ美術館と国立西洋美術館、それぞれが所蔵する(主に)オールドマスター絵画の共演。
 
【本展の構成】
第1章 ルネサンス
 1 ゴシックからルネサンスへ
 2 ヴェネツィアの盛期ルネサンス
 3 北方ルネサンス
第2章 バロック
 1 スペイン
 2 イタリア、フランス
 3 フランドル、オランダ
第3章 18世紀
第4章 19世紀
追加出品作品(*常設展示室に展示)
 
【出品数】
サンディエゴ美術館:54点
(うち追加出品作品5点)
国立西洋美術館  :39点
計93点
 
 
 驚いたのは、サンディエゴ美術館が所蔵する主なオールドマスター絵画がこぞって出品されていること。
 
 サンディエゴ美術館のウェブサイトで、Collection>Browse Highlights>European Art before 1900  を確認すると、95点の掲載。
 うち版画11点を除くと、84点の掲載。
 その84点のうち、なんと!47点!が来日。
 しかも、主要と思われる作品は、ほぼ全て来日してくれているではないか。
 
 特にスペイン絵画。
 エル・グレコこそ2点所蔵のうち1点の来日であるが、サンチェス・コターン2点、リベラ2点、スルバラン4点、ムリーリョ1点、ゴヤ1点と、所蔵作品の全てが来日。
(もう1人の巨匠ベラスケスは、所蔵していない模様。)
 
 イタリアや他地域の絵画も、今回非来日の作品のなかで私的に気になるのは、1〜2点程度。
 
 このような美術館挙げてのオールドマスター絵画の大移動は、あまり例がないのではないか。
 
 
 
 改めて認識させられたのは、国立西洋美術館によるオールドマスター絵画の収集の取組み。
 
 フランス国家から寄贈返還された松方コレクションを保管・公開するために1959年に設立された国立西洋美術館。
 当初の所蔵品は、パリに保管されていた松方コレクション、つまり、モネやルノワールなどの印象派や同時代のフランス美術ばかりであった。
 最初期も、オールドマスター絵画の購入は少しはあったが、旧松方コレクションだからという理由であったようだ。
 1968年、2代目館長に就任した山田智三郎がオールドマスター絵画の体系的な収集に着手する。1968年度に3点、1969年度に5点。
 その後55年間、19世紀以降の絵画の収集とバランスを取りつつ、継続的に収集に取り組み、オールドマスター絵画の所蔵数は、2024年11月現在で138点になったとのこと。
 
 そして、そのうち39点が選ばれて、本展にてサンディエゴ美術館の作品と共演する。
 
 常設展示では脇役の感もあるオールドマスター絵画。サンディエゴ美術館と小テーマ(36?)にもとづくペア・小グループを組むことで、今まで気付かなかった魅力(逆に足りなさ)を認識させられる、それが本展の楽しみの一つ。
 サンディエゴ美術館との相性や展示構成の都合もあるのだろう、自慢作品と思われるのに選ばれなかった作品もある。常設展示室にて展示されているそれらを見ながら、何故選ばれなかったのかを想像するのもおもしろい。
 
 
 
サンディエゴ美術館と組むことで、認識を新たにした国立西洋美術館の3選。
 
「カテーナの聖母子」
ヴィンチェンツォ・カテーナ(1480頃-1531)
《聖母子と幼い洗礼者聖ヨハネ》
1512-15年頃、40.7×51.9cm
国立西洋美術館
vs
ヴィンチェンツォ・カテーナ
《聖家族と聖アンナ》
1520年頃、86.36×134.62cm
サンディエゴ美術館
 ルネサンス期のヴェネツィアの画家。ジョヴァンニ・ベッリーニの弟子で、同門のジョルジョーネとも非常に近しい仲にあったという。
 カテーナといっても、国立西洋美術館がその作品を所蔵しているということ以上の認識はなかったところ、サンディエゴの似た主題・画風の作品を並べるという直球の共演に、もう少しカテーナを知りたいと思わされる。
 
 
「修道僧の画家スルバラン」
フランシスコ・デ・スルバラン(1598-1664)
《聖ドミニクス》
1626-27年、201.5×135.5cm
国立西洋美術館
vs
フランシスコ・デ・スルバラン
《聖ヒエロニムス》
1640-45年頃、185.42×104.14cm
《洞窟で祈る聖フランチェスコ》
1658年頃、15705×100.5cm
サンディエゴ美術館
 国立西洋美術館は初期、サンディエゴは中期と後期、制作年代の異なる、大きなサイズの聖人の単身像が並ぶ。
 画風の変遷を体感できて楽しい。
 国立西洋美術館の初期作品は、サンディエゴの中期・後期作品と比べ、硬質であるがその分存在感があって、国立西洋美術館は素敵な作品を取得したんだなあと強く実感させられる。
 
 
「ローマの都市景観画 - カプリッチョ」
「ヴェネツィアの都市景観画 - ヴェドゥータ」
 
ジョヴァンニ・パオロ・パニーニ(1691-1765)
ユベール・ロベール(1733-1808)
ローマの都市景観画
vs
ベルナルド・ベロット(1721-80)
フランチェスコ・グアルディ(1712-81)
ヴェネツィアの都市景観画
 サンディエゴはヴェネツィアのヴェドゥータを用意(国立西洋美術館は所蔵していない)し、国立西洋美術館はローマのカプリッチョを用意する。この役割分担に感心。
 
 
 
 あと、気になるのは、国立西洋美術館が手が出なかったらしい小テーマもあるようだ。
 
「オランダの市民とその生活」
 
フランス・ハルス《イサーク・アブラハムスゾーン・マッサの肖像》1635年頃
ニコラース・マース《少女の肖像》1664年頃
ヤコーブス・フレル《座る女性のいる室内》1660年頃
 サンディエゴが3点並ぶコーナーとなっている。
 
 
 
 本展は、京都に巡回するが、国立西洋美術館の39点のうち、京都へ行くのは6点のみらしい。京都は、東京とはだいぶ趣きの異なるものとなるようだ。
 なお、サンディエゴ美術館の54点はすべて京都に行くのかと思っていたが、1点のみ行かない作品があるらしい。


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