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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

【その2】長沢芦雪展(愛知県美術館)

2017年10月14日 | 展覧会(日本美術)
長沢芦雪展
京のエンターテナー
2017年10月6日〜11月19日
愛知県美術館
 
 
 
   84点が出品される本展。
   以下、気になった作品についてひとことコメントを記載する。
   なお、別記事とした、無量寺方丈の襖絵4点を除いている。
 
 
 
第1章   氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
 
 
《蛇図》
一幅、安永年間(1772-81)
 
   松の幹に巻きつく蛇。拙さを感じさせる描写がなんだか逆に印象に残る。
 
 
《若竹に蛙図》
一幅、安永後期〜天明初期頃か
 
   蛙1匹。かわいい蛙。
 
 
《虎図》
一幅
オオタファインアーツ
 
   細かく丁寧に描かれた精悍な虎。肉球にも注目。
 
 
《布袋・雀・犬図》
三幅、1786年以前
無量寺・串本応挙芦雪館
 
   布袋が操るのは皿回しをする人形。
   子犬たち。
   布袋の袋の口からこぼれ出た木の実に集う雀たち。
 
 
《岩上猿・唐子遊図屏風》
六曲一双、1786年以前
 
   右隻は黒い大岩に3匹の猿。大岩の表面、流れ落ちる水流や紅葉と緑の蔦が鮮やか。左隻は遊ぶ子供たちと子犬たち。
 
 
《牛図》
一幅、1786年以前または寛政前期
有限会社鐡齋堂
 
   画面に収まりきれない青い目の黒牛。
 
 
 
 
第2章   大海を得た魚:南紀で筆を揮う
 
 
《絵変わり図屏風》
六曲一双、1786年
 
   元々別であった絵を屏風仕立てにしたもの。網を持って海老を見つめる禅師、舟から川に突き落とされた禅僧と突き落とした禅僧、仏像を燃料として起こした焚き火で尻の暖をとる禅僧、衣装のみで表される後姿の達磨、画面の下部は墨で塗りつぶし上部は点々を打ちその後点に帆を描き足して実は墨の部分は鯨の背中!という人前でのパフォーマンス絵、ほか1点。
 
 
重文《群猿図屏風》◎
六曲一双、1787年
草堂寺
 
   たぶん府中市美で見て衝撃的だった作品に再会。
   右隻。黒い岩のてっぺんに座る1匹の白い猿が下界を見下ろす。その黒い岩は「アクション・ペインティングの抽象画」であるかのように荒々しく大胆。
 
 
《寒山拾得図》
一幅、1787年
高山寺
 
   大画面に上半身のみ描かれるむさ苦しそうなおっさん2名。
 
 
《朝顔に蛙図襖》◎
六面、1787年
高山寺
 
   襖の左隅から生えた朝顔の蔓が上辺まで伸びて、そのまま右へ上辺付近を三面分伸び続けて、四面目の細竹に絡みつく。若竹の根元には2匹の蛙。ほとんど真っ白な画面なのに、見事な緊張感。傑作。
 
 
 
第3章   芦雪の気質の奇質
 
 
《酔虎図》
一幅、1787年以降
無量寺・串本応挙芦雪館
 
   目や鼻先が赤色の虎。つまり酔っ払い。
 
 
《爆布登鯉図》
一幅、1787年以降
 
   ぱっと見、滝だとは判別できない荒々しい墨のタッチ。小さく鯉らしきものが描かれ、確かに滝だと分かる。府中市美で見た記憶あり。
 
 
《鵞鳥之図》
一幅、天明年間(1781-89)
 
   芦雪がある一時期に集中して試みた「黒っぽく染めた紙に、油彩画風の粘りをもった絵具で描いた」4作品、そのなかの1点。物珍しいタッチを楽しむ。
 
 
《なめくじ図》
一幅、寛政後期(1794-99)頃
 
   なめくじの軌跡は、墨の一筆書き!府中市美で見た記憶あり。
 
 
 
 
第4章   充実と円熟:寛政前・中期
 
 
《昔噺図》
一幅、寛政前期(1789-93)
ヤング開発株式会社
 
   桃の花咲く山間の風景。画面右隅には川で洗濯のお婆さん、画面真ん中には山へ柴刈りのお爺さん。江戸時代まで、桃太郎の話は桃を食べた老夫婦が若返って桃太郎が生まれる話が主流だったという。
 
 
《象背戯童図》
一幅、寛政前〜中期
 
   縦に超細長い画面。その体のほんの一部しか画面に入っていない象と、その背に乗る大勢の楽しそうな人々。
 
 
 
 
第5章   画境の深化:寛政後期
 
 
《大原女図》◎
一幅、寛政後期(1794-99)頃
静岡県立美術館
 
   魅力的な美人画。行商人の女性。右手で頭上の大きな柴を支え、左手で結わえ紐を持ち、絶妙なバランスを保つ。頭上の柴から一枚の紅葉が落ちる。丁寧に描かれる着物の模様が上品さを感じさせる。
 
 
《巌上母猿図》◎
一幀、寛政後期頃
 
   1匹の猿。毛並が丁寧に描かれる。
   「この猿の胸には乳房が垂れていて、母猿であることがわかる。うつろな眼差しと寂しげな表情から、子猿を亡くしたのではないかとみる説があり、腹の前に差し出した左手には、抱いていた子猿の感触が残っているかのようにも見える。」
 
 
《有魂の図》
一幅、寛政後期頃
奈良県立美術館
 
   私の訪問日は展示期間外、残念。東京藝大美「うらめしや〜、冥土のみやげ展」で、いかにも恨めしそうな表情が印象に残った作品。
 
 
《群牛図》
一幅、寛政後期頃
 
   4頭の牛。1頭が子牛。墨による牛たちの造形を楽しむ。
 
 
《瀧に鶴亀図屏風》◎
六曲一双、寛政後期頃
 
   右隻に14匹の亀、左隻に9羽の鶴。亀の1匹が他の亀の背中に手をかけこちらを向いて笑っている。貝をつつこうとしている子鶴もこちらを向いている。
 
 
《白象黒牛図屏風》
六曲一双、寛政後期頃し
エツコ&ジョー・プライスコレクション
 
   向かい合う白象と黒牛、ともに屏風の画面に収まりきれない大きさ。
   白象の背中には二羽の黒い鴉、黒牛の腹の前に一匹の白い子犬。この白い子犬は本展のマスコットキャラクター。
 
 
重文《山姥図》
額一面、1797年頃
厳島神社

   厳島神社に奉納。子供である金太郎の手を引いている山姥。その形相はやはり怖い。

 
《方寸五百羅漢図》
一幅、1798年
 
   2010年に82年ぶりに発見。3.1cm四方の紙に微小に大勢の羅漢たち。森美術館「村上隆の五百羅漢済図展」で見ている。
 
 
 
 
   以上、24点。特にお気に入り5点に◎印を付す。
 
   芦雪作品のみ触れたが、師匠の応挙の作品も数点出品。
 
   全84点のなかには見た記憶がある作品もチラホラ。おそらくその大半が府中市美の春の江戸絵画まつりだろう。府中市美術館に改めて感謝。
 


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