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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

名古屋で長沢芦雪の無量寺方丈襖絵を観る ー 長沢芦雪展(愛知県美術館)

2017年10月13日 | 展覧会(日本美術)
長沢芦雪展
京のエンターテイナー
2017年10月6日〜11月19日
愛知県美術館
 
 
   長沢芦雪を単独で取り上げる展覧会は、2000年の千葉・和歌山、2011年の滋賀以来、3回目だという。
 
   個人的には、府中市美術館の春の江戸絵画まつりを筆頭とする様々な展覧会にて、数点程度ずつの芦雪作品を見る機会はあって、その構図の斬新さや小動物の可愛さなどに感心してきたが、まとまった数を見るのは初めてである。
 
   本展は全84点の出品で、目玉を含む殆どの作品が通期展示(期間限定出品は4点のみ、他に絵巻の巻替え1点あり)、10.24〜11.05の間に訪問すれば、全出品作を見ることができるという。日本絵画の展覧会としてはそうはないパターンではないかと思う。
 
 
   で、会期早々、名古屋行きを敢行する。新幹線で名古屋へ、愛知県美術館で芦雪展を鑑賞し、直ぐに新幹線で東京に戻る。愛知県美術館訪問のためだけの大移動。
 
 
   芦雪の魅力をたっぷりと味わうことができる展覧会であった。
 
 
 
 
本展の構成
 
第1章   氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
 
第2章   大海を得た魚:南紀で筆を揮う
 
第3章   芦雪の気質の奇質
 
第4章   充実と円熟:寛政前・中期
 
第5章   画境の深化:寛政後期
 
 
 
   目玉は、第2章に属する「和歌山県串本市・無量寺方丈の襖絵の再現配置」である。
 
 
   無量寺はもと串本の港の近くにあったが、宝永4(1707)年の宝永大地震(南海トラフ沿いが震源地とされるマグネチュード8.6〜8.8の巨大地震)による津波(紀伊半島では5〜17メートルの高さだという)によって壊滅し、現在の地に仮堂を建てる。享保10(1725)年には本堂その他が再建されるが、その後約50年の間に大破したため、当時の住職が再度の造営を企て、天明6(1786)年に完成する。京都時代に応挙と親交があった住職は、襖絵を応挙に依頼する。多忙の応挙は弟子の芦雪を代理に指名する。
   天明6(1786)年10月頃、33歳の芦雪は応挙が描いた一部屋分の絵を携え、上京していた住職とともに南紀に向かう。翌年2月中旬にかけて、臨済宗の無量寺・成就寺・草堂寺、真言宗の高山寺など現地の寺院や個人のために多くの作品を残す。



   無量寺方丈の襖絵は、

1)室中乃間、仏間
   芦雪《虎図襖》《龍図襖》
2)上間一乃間
   応挙《波上群仙図襖》
3)上間二乃間
   芦雪《薔薇に鶏・猫図襖》
4)下間一乃間
   芦雪《群鶴図襖》
5)下間二乃間
   芦雪《唐子遊図襖》

からなる。
 
 
    そのうち本展には、室中乃間、仏間の2室、および室中乃間を挟む上間二乃間、下間二乃間の2室の配置としつらえが再現される。
    出品作で言えば、《虎図襖》六面と《龍図襖》六面が向かい合わせに展示され、《虎図襖》の裏に上間二乃間の《薔薇に鶏・猫図襖》八面が、《龍図襖》の裏に下間二乃間の《唐子遊図襖》八面が展示される。
 
 
 
《虎図襖》六面
・芦雪の代表作の一つで、最も有名な作品であるらしい。
・前脚から肩にかけてはほぼ正面から見た形、左後脚は真横から見た形になっている。手前に飛び出してくるかのような効果を狙っている。
・仏間側には三角形の石が長く伸び、虎が起こすとされる風で笹竹がなびいている。
 
 
《龍図襖》六面
・仏間側からやってきて、振り返る龍。
・稲妻が走り、また、墨が襖の上を流れ落ちて、龍が降らせる雨を表している。
 
 
《薔薇に鶏・猫図襖》八面
・八面は、四面で直角に折れ、部屋の角の位置に描かれた岩が左右の襖をつなぐ。
・左の襖には2羽の鶏が、右の襖には3匹の猫が描かれる。水際の猫は、水中の魚を狙っている。この子猫は《虎図襖》の虎の顔の真裏に描かれているため、魚から見たこの猫が虎なのだ、という説もあるという。
 
 
《唐子遊図襖》八面
・八面は、四面で直角に折れ、右側の襖が室内(寺小屋風)で、左側の襖が屋外で、楽しそうに遊ぶ子供たちが描かれる。
・一番左の一面は、他の面の楽しそうな雰囲気とは異なり、薄く小さめに描かれる三人の子供と白い子犬が画面の奥上の方に消え入るように駆けていく。なんだか落ち着かない嫌な雰囲気である。
 
 
    襖は、鑑賞者の膝の辺りの高さに置かれ、あたかも畳に座って鑑賞しているかのように配慮されている。
 


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