遊鵬窟

展覧会感想メモ等

プーシキン美術館展 フランス絵画の300年

2013-09-08 11:16:51 | 展覧会

会場:横浜美術館 会期:2013年9月16日まで

 

2013年7月6日のブロガー夜間特別観覧会にて観覧。今頃記事にしたのは、大神社展の時に比べて参加者のマナーが非常に悪く、写真撮影可の特典が完全に裏目に出て、大変不快な思いをしただけでなく、作品保存上も疑問に思ったからです。ピント合焦用光線は当てる、フラッシュは焚く、観覧者の耳をかすめてカメラを突き出す……一体何をしに来ているのでしょうか。やはり今後はカメラ撮影は禁止して、ブログ掲載用写真を別途提供するべきだろうと思います。

「夜間特別観覧会のため特別に撮影許可がおりました」

私も撮影許可の恩恵を受けたものの、害は恩恵を上回ります。

 

展覧会の内容自体は、渋好みの作品選択で、アングルの聖母像だけでも足を運ぶ価値があるでしょう。作品自体の完成度もさることながら、作品の生まれた背景を知り、ピョートルから露仏同盟に至る政治経済文化の強い結びつきの中に位置付けるとともに、ロシア国内におけるツァーリの位置づけ、正教ロシアとカトリックの関係等々に思いを馳せるなら、一層この作品を楽しめることと思います。

 


ミケランジェロ展 天才の軌跡

2013-09-08 10:44:21 | 展覧会

会場:国立西洋美術館  会期:2013年11月17日まで

 

1996年以来久々のカーサ・ブオナローティからの出展。展示品は前回とかぶっているものも多いのですが、新鮮な目で楽しめました。

 

ミケランジェロの素描が余人と大きく違うのは、対象を面的に捉えて、彫刻にした時を構想しながら強いコントラストで描いてるところ。これは絵画作品の構想段階の素描でも一貫している。ハッチングも、木彫小品「キリストの磔刑」(60)に残された細い鑿跡に照応するようです。今回は、クレオパトラ(59)に加えてレダの頭部習作(15)も来ており、眼福という他ありません。

 

ミケランジェロは、構想倒れのレオナルドと違い、現に巨大建築を実現させた人物ですが、カーサ・ブオナローティに残る図面は、結構アバウトなもので、意外でした。ヴァティカンにはもっと精巧な図面があるのか、現場での施工図は実務を仕切る施工監督が起こしていたのか、興味は尽きません。デューラーとの絵画表現を巡る確執の逸話は真偽が定かではありませんが、多分几帳面なドイツ人画家とは、図面の書き方でも反りが合わなかったと思われます。


松崎和実箔画展 水奏曲

2013-09-08 10:09:26 | 展覧会

会場:日本橋靍島屋美術画廊 会期:2013年9月10日まで

 

金属箔に描いた魚類等をアクリル板に貼り付ける技法による作品群。作者の思い入れの差が動植物画では如実に出るところ、松崎氏は、野生の淡水魚には並々ならぬ生気を吹き込んでいる。今回の目玉、60号の「水奏曲」で言えば、ヨシノボリ等々。しかし、同じ作品中でもイシガメ、イモリはさほどでもない。両生類・爬虫類は好きじゃないのか、ヤモリやヤドクガエル(アズレウスとテリビリス)を描いた別作品も記号的な描写で、対象への親密性、畏れ、賞賛といったものとは無縁な印象を受けた。

 

海水生の魚介類では、蛸やタチウオは上手いが、全体的に江戸期の博物画のような生硬さを感じる。博物画調の表現は意図したものだろうが、淡水魚のように、生体の観察と結びついていない。築地で買って来た死魚を写したような印象を受ける。同時に、海水の深さと海水を透過した光をどう表現するか、淡水の場合にアクリル板と背景の距離を取ることで成功した手法そのままでは課題があると思われる。

 

2013年9月4日観覧