遊鵬窟

展覧会感想メモ等

バロックからバルビゾンまで 山寺 後藤美術館コレクション展

2015-01-19 17:29:08 | 展覧会

会場:そごう美術館 会期:2015年1月25日まで

少なくない日本人が印象派やピカソのしょうもない凡作(はっきり言えば駄作)を買いあさっていた頃,一筋通った審美眼で形成された,「こうであってほしい」コレクション!

教会音楽が聞こえてくるようなムリーリョ「悲しみの聖母」,観る者に元気を与えてくれるブーグロー「いとしの小鳥」,絶望感と運命の重圧を画布に込めたカバネル「デズデモーナ」の3点だけでも足を運ぶ価値あり。

後藤コレクションの凄さは,マイナー作家でも,これはという優品を揃えている点。サッソフェラートの「祈りの聖母」,パリエイの「夜会」,リボの「ざくろのある静物」などなど。美的センスの良さに脱帽する。

また,更に2点あるカバネルの下絵が後代の作家の本画よりきちんと描かれているのには,絵画市場のありようについて考えこまざるをえない。


2014年展覧会10選

2015-01-19 16:34:47 | 展覧会

昨年の展覧会を回顧して,出品作品の質,展覧会の構成力,展覧会の意義点を勘案の上ベスト10を選んでみました。

1.國立故宮博物院 神品至宝展

 内容と開催意義において冠絶。しかし,主催マスコミの愚行による開催直前の騒動は,まさしく「信義なくして国が立つか!」。

2.オルセー美術館展

 展覧会の構成力にフランスのエスプリと底力を見た。

3.ウフィッツィ美術館展 黄金のルネサンス ボッティチェルリからブロンヅィーノまで

 名の名づくべきは常の名に非ず。あなたの鑑賞眼が試される。

4.メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神

 ありそうでなかった企画。ステレオタイプでない,ナイルの万華鏡。

5.テート美術館の至宝 ラファエル前派展

 世界帝国はそれにふさわしい美術を生み出すのか。

6.華麗なる英国美術の殿堂 ロイヤル・アカデミー展

 ベラスケスの理解度において,J.E.ミレイの無双ぶりが光る。

7.栄西と建仁寺展

 風神雷神よりも友松,等伯。

8.正倉院展

 今回は密かに武器特集。上古にも名工あり。

9.ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション

10.祈りの道へ 四国遍路と土佐のほとけ

 運慶作でしょう,これは。

 

 

 


龍口経太個展

2015-01-19 15:57:34 | 展覧会

会場:銀座フォレスト 会期:2015年1月24日まで

新作本画3点プラス水彩小品1点(11月展既出)の構成。

中心は,ルネサンス絵画に通じる実在感のある裸婦を,動的な兆しを孕む静謐のうちに描いた30号作品「髪枯」。従来の作品以上にリアルな肉体と対照的に,彼岸を看る眼差しは,「エヴァ」「熾天使」の系譜に属します。大阪で売れてしまったという「天魔」を別にすると,東京で発表されたものとしては久々の長髪黒髪美女です。

案内状に眼の周りだけ紹介された「鳩子」は,「黒羽」の系統のポップ系キャラクター。隠し銘は帽子に入ってます。同じ黒髪ですが,描き方が30号作品と異なり,「魔由」と同じく,面のコントラストを活かしたものとなっていて,ポップな画題とよくマッチしています。最後の1点は,「魔美」「魔由」に続く連作小品を構成する,少女の正面図「魔尋」。


ウフィッツィ美術館展

2014-11-10 20:23:46 | 展覧会

会場:東京都美術館 会期:2014年12月14日まで

ボッティチェリが6点プラス工房作2点,周辺画家1点・・・こんな展覧会が日本で実現できる日が来ようとは。バブルの頃よりも優品が気軽に来日する昨今です。

フィレンツェとは光線環境が違いますので,現地で見た時とはまた違った印象を受け,またスコープのお陰で新しい発見があったりします。特に海の聖母は,今回が一番きれいに見えました。

ボッティチェリの音楽性に対し,ギルランダイオの作品には彫刻性を感じます。今回来ている3聖人の図はその特徴がよく現れています。

今回の展示の隠れた目玉は,ペルジーノ作品の間に唐突に置かれた,17番「悲しみの聖母」!なんでメムリンクがここに??応えて曰く,「ペルジーノによる模写である」と。ええ~!!?実は,これ,図録を読んで初めて判る,ウフィッツィ(の現学芸員主流)からの観客への挑戦状です。図録解説によると,本作がイタリアでの模写であることは木材・技法的に確実のようで,作者としてこれまでに挙げられたのが,アルベルティネリ,ドメニコ・ギルランダイオ,そしてペルジーノとのことです。ウフィッツィは,現在,ペルジーノ及び工房の作という説を採用しているわけですが,アルベルティネリ(37番),ギルランダイオ(3番),ペルジーノ(16,18番)を合わせて出品することで,どうだ比べてみろというわけです。私は,むしろここまで精緻で立体感のある模写は,ギルランダイオ説に与したいと考えました。

もう一つの隠れた主役はアンドレア・デル・サルト。企画者サイドとして,サルトの本格的紹介の嚆矢となることを狙ってますね。優品揃いです。憂いを秘めた画面は明るいチンクエント絵画とは別の魅力があります。

2014年10月11日観覧


青蓮院青不動開帳

2014-11-10 20:06:49 | 展覧会

会場:将軍塚山頂 会期:2014年12月23日まで

京都盆地を一望におさめる山頂に移築された大正の大建築,そこに遷座した秘仏中の秘仏,平安仏画の最高峰の一つ。これを構想し,実現した青蓮院には脱帽するしかありません。

青不動の繊細な描線と,コバルトブルーと温かみのある肌色を特徴とする色遣いは,平安仏らしい反面,宋の影響もそこはかとなく感じます。構図の精緻な点が,特に。7羽の迦楼羅を象る火炎光背は,それと指摘されねば見落としがちなほど,火炎として自然に描かれており,迦楼羅と認識すると今度は舞い飛ぶ迦楼羅そのものと見える,だまし絵のような技倆の冴えですが,色即是空空即是色を視覚化しているのです。

2014年11月8日観覧。