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スポンサーを活用しての事業再生

2021-06-28 11:09:40 | 経営
スポンサーを活用しての事業再生(事業承継)の概要、
メリット
留意点

多額な累積赤字 有利子負債ゆえに今後の事業展開に出口の見えないで
悩んでいらっしゃる経営者の方々へ


私的整理においてスポンサーの支援を得ることも少なくありません。スポンサー型事業再生の概要、メリット、留意点を説明します。


1 スポンサー型事業再生とは

自力での収益改善が困難であるとか、後継者不在とか、金融機関や取引先等との信頼関係が失われているなど様々な事情によって、現経営陣のもとでの自主再建が難しい場合には、スポンサーに事業を譲渡して事業再生を目指す方法が考えられます。

事業再生を考える会社の場合には、株式譲渡というスキームを使うことは必ずしも多くありません。

簿外債務リスクが切断されない問題があるからです(許認可その他の理由により、現法人を活用するために、株式譲渡スキームを取ることもあります。)。

そこで、会社そのものではなく、事業をスポンサーに切り出す方法、すなわち事業譲渡・会社分割という手法を用いることが多いです。


スポンサー型事業再生の中でも、第二会社方式を活用する場合、スポンサーは、再生会社(旧会社)から事業を譲り受けることと引換えに、譲渡代価を旧会社に支払うこととなります。旧会社は、スポンサーから受け取った事業譲渡対価を債権者に配当することになります。

私的整理の場合、仕入先、外注先等への商取引債務はスポンサーに承継されるため、ここでの配当の対象となる債権者は金融機関に限られるのが一般的です。金融機関には、旧会社からの配当と引換えに、残った債権については、特別清算、特定調停、破産手続を通じて実質的に債権を放棄してもらうこととなります。



スポンサースキームは、再生支援協議会、特定調停スキームなどの準則型私的整理手続はもちろんのこと純粋私的整理の場面でも使われることがあります。

2 スポンサー型事業再生のメリットとは


スポンサー型事業再生のメリットとしては、
.スポンサーの知見を活用できる点で、事業再生の確実性が高まる
.上記と関連しますが、スポンサーの経営資源、得意先への販路拡大、信用補完、経費削減等による収益力改善効果(いわゆるシナジー効果)が得られるため、金融機関は自主再建の場合に比較して、回収額が高まる可能性がある

.後継者問題(事業承継問題)の解決を図ることが可能

.スポンサーへの事業移転後、旧会社は清算することになるため、経営責任、株主責任の明確化を果たしやすいといった点があげられます。



3 スポンサー型事業再生の留意点

スポンサー型で進める場合には、スポンサーから支払われる代価が債権者に対する返済原資となり、債権放棄を伴うことも多いことから、債権者としては、誰が、どのようにしてスポンサーとして選定され、いくらの代価を支払ってくれるのかという点に最大の関心をよせることになります。

その意味で、スポンサー選定手続の公正性を担保することが肝になります。

この点、スポンサー選定のためには入札まで必ず必要だとの意見もなくはありませんが、中小企業の私的整理でそこまで求めるのは現実的ではありません。

事業再生研究機構の
「事業再生におけるスポンサー選定研究会」
によると、スポンサー選定を2つの基準に分け、第1段階では合理性の基準が相当する事案と厳格な基準が相当する事案とを振り分け、第2段階においてはそれぞれの基準を具体的に適用するという考え方(総合考慮説、二重の基準説と言われる)が発表されております。


中小企業の場合、スポンサー候補が引手あまたということはあまり多くないですし、何よりも、広くスポンサーを募る場合には、信用不安が広がることで、事業価値が毀損してしまうリスクが高まります。そこで、二重の基準によると、合理性の基準が相当する案件が多いと言えるでしょう。
なお、金融機関に有利子負債の債権放棄を要請する場合には、保証債務問題が顕在化します。経営者の方としては、この点が心配になろうかと思いますが、現在は自己破産せずとも、経営者保証に関するガイドラインを活用して保証債務整理の交渉を行うことも可能です。


経営者保証に関するガイドラインを活用して、自宅を残す方法

経営者保証に関するガイドラインを活用する場合、破産に比べて、自宅を残しやすいという説明を行いました(経営者保証に関するガイドラインと破産との比較)。


破産の場合には、財産の管理処分権が破産管財人に移りますので、破産管財人が自宅を処分、換価してしまいますので、親族が管財人から自宅を買い戻すことが出来なければ、自宅を残すことは困難です。 他方で、経営者保証に関するガイドラインを活用する場面は、金融機関債権者の理解が得られることが条件になりますが、以下の方法により、自宅を残す余地があります。様々な場面がありますので、場面ごとに説明します。


1 住宅ローンがオーバーローン状態の場合

経営者保証に関するガイドラインが適用される案件では、保証人個人の資産の価値は、早期処分価格等で試算するとされています
(経営者保証に関するガイドラインQA7-25参照)。

住宅ローンの残債務額が住宅の価値(早期処分価格等)を上回っている場合には、対象債権者である金融機関にとって、住宅自体の価値はないと考えることになります。そこで、(華美でない自宅かどうかの議論をするまでもなく)住宅ローンの支払さえ継続出来れば、自宅を残すことは可能です。

住宅ローン債権者は、原則として、経営者保証に関するガイドラインの対象債権者になりませんので、今後の収入等で住宅ローンを支払い続けることは何ら問題になりません。


なお、住宅ローンの債務額があまりに過大であり、住宅ローンの支払を継続すれば、経営者保証に関するガイドラインに基づく弁済計画を策定することが出来ない場合、例外的な扱いにはなりますが、「弁済計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れのある」と評価できるケースの場合、住宅ローン債権者も対象債権者に取り込んで、債務免除の交渉を行うことも考えられます。


2 住宅ローンの方が住宅の価値よりも小さい場合や無担保の場合

では、逆に住宅ローンの方が住宅の価値よりも小さい場合(余剰がある場合)や無担保の場合はどうでしょうか。

この場合には、剰余の範囲(無担保の場合には、住宅の価値相当額が剰余額になります。)が「回収見込額の増加額の範囲内」かどうかで対応が変わってきます。範囲内であれば、「華美でない自宅」であれば、「インセンティブ資産」として自宅を残すことが可能です。

他方で、「回収見込額の増加額の範囲内」と言えないケースの場合には(例えば、主債務者が破産で異時廃止、つまり、配当ゼロの場合など)、原則として、「インセンティブ」資産として残すことは出来ません。

この場合には、自宅は「非残存資産」になりますので、換価・弁済することが原則になります。



もっとも、この場合でも、余剰部分の処分価値相当額を分割弁済し(経営者保証に関するガイドライン7項(3)④)、対象債権者との協議により、自宅を残す処理が考えられます。経営者保証に関するガイドラインにより、柔軟な解決が図ることが出来る一例と言えます。

3 主債務の担保が設定されている場合

主債務の担保が設定されている場合、これがオーバーローンの場合には、自宅の価値(早期処分価格当)相当額については、支払をしなければなりません。保証人や第三者が自宅の価値相当額を一括ないし分割で支払う交渉を行うことになります(債務者や担保権設定者の変更が必要になるでしょう。)。他方で、住宅の価値を上回る分については、担保解除及び当該債務相当額の免除を要請することになります。

なお、住宅の価値の方が住宅ローン債務よりも高い場合(余剰がある場合)ですが、余剰部分については、2項記載のとおり、(回収見込額の増加額の範囲内であれば)インセンティブ資産として残すか、余剰部分の価値相当額を分割で支払う合意をすることが考えられます。




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