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Iwaoのタルムード 事実は小説より奇なり

日々の体験の中に真実を学ぶ すべてノンフィクションです

 

SCM 実話 桜庭支配人の現場一直線 第十話

2018-07-03 08:03:00 | SCM ノンフィクション劇場
桜庭支配人の現場一直線 第十話





・見捨てられた顧客と見捨てられた名簿

 結婚式の営業といっても、営業ミーティングに参加して思うことは、どこから結婚式をやるカップルの情報をつかんでくるのか、桜庭にとっては雲をつかむような話でならなかった。
そもそも、結婚を考えているカップルが、自分たちがそろそろ結婚する、という事自体を始めは他人には絶対公表しないのに、その情報をどこに訪問してもらっていているのか、不思議だった。
これは、もしかしたら世界で一番難しい営業でないのか、そんな勝手な定義をつけ始めて、桜庭は
「いかん、また自分の悪い癖が出てきた。出来ない理由さがしを始めてしまった。」
と今回は気がつくことができた。
 しかし 他の営業マンは自分の持っている情報は絶対にくれそうにない。





そこで 鬼の後藤部長に相談した。
「今すぐに結婚式の契約を取るという営業は無理ですが
3ヶ月間は宴会の獲得の件数を伸ばして結婚式の組数分を補うということではダメですか。」
「3ヵ月後から、宴会の件数も取りながら、結婚式の契約も挙げさせていただきます。」

「出来なかったらどうするんですか。」
(、、、、そうきたか。さすがたたき上げの後藤部長だ)
「私がもう一度結婚式をここに申し込みます。」
「、、、、いいでしょう。」




どちらが支配人なのか分からないような圧力をかけられながら、「勢いのあるほうが勝つ」という有島副社長の指導を思い出し、ここはきっぱりと言い切って自分を追い込むしかないのだと腹をくくった。

 とにかく 宴会でいいので営業をかける事となった桜庭は、早速石原マネージャーの助言に従って、その日の夜から宴会のサービスに入ると、主だった参加者にことごとく挨拶して回り、名刺を交換するだけでなく、石原マネージャーや他のスタッフたちにも手伝ってもらって、自分を宣伝してもらった。

名刺を交換しながら、ふと疑問を感じた桜庭は石原マネージャーに質問した。
「こうした宴会をするときに、申し込み台帳には幹事さんやら、企業の所在地が記載されて保管されているんじゃないんですか。?」
「そうですよ。台帳には10年前からのものが全部残ってますよ。」
「営業部のメンバーはどうしてその名簿を活用して挨拶回りしないんでしょうね。?」





「、、、、きっと 結婚式の情報とは関係が無いと思っているんじゃない?」
「もしかして、ここにきているアルバイトの学生たちの名簿も営業かけていいのかな?」
「支配人、そんなことしなくても、3ヶ月に一度くらいアルバイト全員集めて食事会やっているから、支配人も参加すればいいじゃないですか?」

 石原マネージャーがさらに心配して釘をさしてきた。
「いっときますけどね 支配人 営業営業って言うけれど、今まで耕して仲良くしていたのは私たちなんですよ。分かってるんですか。無理やり申し込ませるようなやり方辞めてほしんですけど。」
さすが もと鬼のマネージャーだ。(少なくとも桜庭にとってはもう鬼ではなくなった)
人情の機微を良くわきまえている。




















SCM 実話 桜庭支配人の現場一直線 第九話

2018-07-02 07:57:54 | SCM ノンフィクション劇場
桜庭支配人の現場一直線 第九話


<登場人物>

桜庭支配人~ このシリーズの主人公。
株式会社アジア開発 入社2年目の新人にして現場の支配人の辞令を受けた。
35歳 結婚式場の責任者の経験はまったく無く、営業の経験も無い。ないない尽くしで自信もないまま 指導を受けて独り立ち上がる。
河野俊一~ 隣町の結婚式場の支配人。同じアジア開発の社員で、やはり支配人として人材派遣された。桜庭より1年早く入社して現場に配属されいた。30歳。
後藤部長~ハートロード結婚式場の営業部長。営業部10年目。現場のたたき上げで
     規則を守ることに厳しい。現場の鬼と呼ばれている。32歳
石原とよ~ バンケットマネージャー。ハートロード結婚式場の創立メンバーで、地元の顧客には顔きき役。親分肌で面倒見もよく、影のボスといわれている。52歳。
白石庄平~地元の生命保険のトレーナーで引退後も後輩の面倒を見ながら研修会に参加している中で桜庭と出会う。72歳。

大林友子~ハートロード結婚式場の専務婦人。フロント予約課課長。
内田悟~ハートロード結婚式場営業部課長代理。
柏崎理恵~ハートロード営業課長で最古株社員。営業の実力ナンバーワン。
小森友和~ハートロード結婚式場営業部主任。







それでも 桜庭にとってこの後藤部長は、以前にも増して付き合いにくく敵対感さえ感じさせる難しい存在と化して来ていた。

有島副社長にまた正直に相談した。
「また鬼が出たのか?」
「お前も幸せだね、いつまで同じ事で悩んでいられるんだ。」
そんなことを言われても 当の本人である桜庭にとっては以前の石原マネージャーの時より苦しい状態に追い込まれてきていた。



「ご指導どおりに 後藤部長を理解し 好きになろうと3ヶ月間努力してきたつもりですが、
 ますます 態度が硬くなり 最近は実績だけでものを言え、というような雰囲気なんです。」
「そんなの当たり前だろう、結果の変革のためにお前が来ているというのは、後藤部長が一番良く知っているんだ。こうした責任者に対しては まずは実績を出して 行動で示して こいつはたいしたもんだ、とならない限り次に進まないぞ。」

 そうだ、鬼のいない現場なんてこの世に存在しないのだ、と桜庭は妙にこの指導に納得をしていた。
今まで桜庭は 鬼のいない、自分に都合のいい職場環境をいつも想定して探して生きてきた。安全か安全でないか、鬼が出るのかいないのか、そんなデータを分析していただけの頭でっかちで世間知らずだったのだ。


「いつまで同じ事で」という有島副社長の指導には本当に深い意味合いがこめられていたが、このときの桜庭はその意味合いを少し深く感じることが出来るようになっていた。







SCM 実話 桜庭支配人の現場一直線 第八話

2018-07-01 07:55:08 | SCM ノンフィクション劇場



桜庭支配人の現場一直線 第八話



・もう一人の鬼
 
「もう3ヶ月も経ってるんですよ支配人、いい加減に情報あげてください。」
いよいよ来たか、支配人という立場を盾に 現場に入っているという言い訳をして
営業実績が無いことを許してもらっていたが、この後藤部長はそんなに甘くは無かった。





 せっかくバンケットのおばちゃんたちと信頼の絆が出来たところで また営業にでて元も木阿弥にしたくはなかった桜庭は、2階のバンケットルームで井戸端会議に参加して正直に石原マネージャーに相談した。

「ダメね支配人、そんなことでもうめげているようじゃ。営業に出なくても、宴会に来ているお客さんに営業かければいいじゃないの。外に出るよりずっと効果的だと思うけど。私たちがその都度支配人を紹介してあげるわよ。」

この井戸端会議の方が桜庭の営業会議といってよかった。そして 桜庭の営業はもっとも身近な社内のバンケットのおばさんたちの援助によって開かれた。