Josephcunlife107の日記

ロンドン(カナダ)生活、IVEY BUSINESS SCHOOLの日常。

クリスマス休暇③‐松島‐

2006年01月10日 | 

 湯気が立ち昇る早朝の温泉は爽快だった。眠気眼だった僕の目も瞬間的に覚えて、不思議な位にリフレッシュしていた。温泉旅館に泊まることの醍醐味は、いつでも好きなときにお風呂に入れることだと思う。温泉に浸かっていると、頭がボーとしてきて何もかもを忘れることができる。

 風呂を出て部屋へ戻ると丁度朝食が運ばれて来るところだった。昨夜の夕食で旅館の食事に対する免疫がある程度できていた僕にとって、鮭の塩焼きやお漬物といったごくありきたりの朝食を食べることは、完全に無問題だった。そもそも、こういった手を加えることのない料理を作ることを失敗するということ事態有り得ないがないのだが、味噌汁だけは例外で昨夜同様全く同じおかしな味付けが施されていた。抗体が不十分だった僕の体は、咄嗟にアレルギー反応を起こして、これ以上食べ続けることを拒絶した。僕は声を大にして、この味噌汁ならカナダの味噌汁の方が美味しいと言いたかった。

 朝食を食べ終え、チェックアウトを済ませると、僕は、松島方面へと車を走らせた。雪道を15分ばかり運転すると、右手に道の駅が見えたので、朝食を食べたばかりだというのに口直しをしようと思い店内へ立ち寄ることにした。道の駅は、早朝にもかかわらず活気に満ちていて、店内は人で溢れていた。ここの道の駅は、「あ・ら・伊達な道の駅」といい昨年の道の駅雑誌投票1位に選ばれたとのこと。施設内は、レストランや郵便局が入っているだけでなく、産直野菜、味噌等の地元名産の加工品、地域食材を活かした手作り餅やたまこんにゃく等、顧客を惹きつけるのに十分な品揃えがされていた。お土産コーナーには、地酒や凍り豆腐が並んでいたのだが、それらと一緒に北海道銘菓のロイズのチョコレートが置かれていて、僕は少し首を傾げてしまった。

 こういう場所での店作りの鉄則は、いかに観光客を呼び込むかに尽きると思うのだが、地元客を惹きつけられうことができれば更なる売り上げ増を期待することができる。そういう意味では、観光客向けの土産品だけでなく、低価格で地産の新鮮な野菜を豊富に品揃えすることで、周辺のスーパーと差別化しているのであろう。豊富な品揃えというのは、顧客に買い物を楽しむ空間という価値も提供している。

 僕は、お餅屋さんでふと目に付いた納豆もちを買い込み車へ乗り込んだ。僕は昔からお餅も納豆も大好きなのだが、最後に納豆餅を食べた時を思い出せない位納豆餅とは御無沙汰だった。搗き立てのお餅と納豆の組み合わせは絶妙で、カナダで食べている冷凍の納豆の味とは雲泥の差だった。後で分かった事だが、岩出山は納豆の産地として有名らしく、これらはつと納豆と呼ばれているそうだ。昔からの納豆作りを今でも実践していて、わらで納豆を巻いて作っているそうだ。こうして納豆を作るとコシが強い味が特徴の納豆に仕上がるそうだ。そういえば、朝食でも納豆だけは、唯一例外的に美味しかった。

 お餅を食べながら車を一時間程走らせると、日本三景の一つに数えられる松島に到着した。雪深かった鳴子の景色とはうって変わって、雪の無い冬の寒々しい景色が広がっていた。松島湾には、大小260余りの島が松の木と共に浮かんでいる。これらを総称して松島と呼ばれている。夕焼時には、海に反射する夕日と島とが重なり合って、とりわけ綺麗に映る。日本三景が日本で最も美しい場所だということに異論を挟む人は多いと思う。実際僕もその一人だ。多くの人は、京都の嵯峨野の方が美しいとか、赤富士は美しいというかもしれない。しかしながら、日本全国でも特に優れた美しい場所として、日本三景が定義されたのは江戸時代のことなので、歴史を遡ってこれに異論を挟むことはできない。

 人類は、建設技術の発達により多くの巨大建築物を作ることができるようになった。エジソンによる電灯の発明は、夜景という新しい景色を作り出した。これらの技術を用いることにより、僕らは様々な角度で自然を見たり、人工的に美しい景色を鑑賞ることが出来るようになった。例えば、函館山の頂上から見下ろす函館山の夜景は、100万ドルの夜景として知られている。上空から飛行機を用いて富士山を見下ろすといったことは、飛行機の存在しない江戸時代には出来なかったことである。こうして考えると、自然の景色といいながら、僕らは人間が作り出した人工的な景色を見て、自然は美しいなどと言っているのかもしれない。

 松島の景色を堪能してから、レンタカーを返却して、温泉旅行は終了となった。今回の旅行では、温泉に入れたことは非常に良かったのだが、温泉宿の選択の難しさという問題を改めて考えさせられた。最近楽天トラベルやじゃらんといったインターネット宿泊ポータルサイトが業績を伸ばしているが、彼らがインターネット上で提供する温泉宿の情報は、非常に限られているのが現状だ。ビジネスホテルは、内装やサービスにそれ程大差が無く、価格や立地条件をベースに予約をするので、情報を持たない買い手にとってもとても便利な予約サイトだ。しかしながら、温泉旅館のように施設が食事や様々なサービスを提供していると、ある程度の情報が無いと旅館によって当たりはずれが大きい。それ故、現在のネット予約サイトが提供している情報は不十分といわざるを得ない。今回利用した旅館では、海鮮鍋というオプションがあったのだが、肝心の料理の質自体が悪いので、鍋というオプションにプレミアムを払う以前の問題であった。高いプレミアムを払った結果、コストパフォーマンスは悪く、僕の最終的な満足度は低くなった。当然ながら、次回も訪れたいと思うことにはならない。

 そうすると、帰結は、外で美味しいものを食べて、温泉に素泊まりするということになる。いたずらにリスクを取らないことが、満足度を最大化する方法という結論だ。とはいえ、露天風呂に入れたことで、僕は十分満足だったし、久しぶりに浴衣を着て改めて日本人であることを実感できたことは何より楽しかった。

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