だせなかったLove Letter:23

2010-06-30 | 自作小説:私小説
それは突然やってきた。
2学期になって、1ヶ月くらい過ぎた頃だ。
何がきっかけだったのかも思い出せない。
N原を除いた全員で話し合い決めた。
 “全員で柔道部を辞めよう。”
そして、S先輩に退部届けをだす順番を決めた。
そして、まず、Oが道場に向かった。Oは10分もしないうち戻ってきた。
 “どうだった?”
 “特に何も言われずに、あっさりと辞められた。”
僕は、Oは問題なく辞められるだろうと思っていた。
Oは中学時代、県大会で3位になったことがある男だった。
柔道の強い高校からスカウトも受けていたほどだ。
そして、先輩達より強かった。
強いためか、僕ら見下し、部の仲間と呼べるような感じではなかった。
そんなOを先輩は疎ましく感じていたようだった。
それに、先輩は5人、Oがいると誰かがレギュラーから脱落する。
辞めて、ほっとしているのではと、僕は思った。
次に、Kが道場に行った。
Oとは違い、彼はなかなか戻ってこなかった。
みんな、考えていることは同じだ。
・・・・・説得されている
Oを除いた3人で一緒に道場へ行くことにした。
全員で退部届けを提出し、強行突破するしかないと思ったからだ。
予想どおり、Kは先輩達に囲まれて説得されていた。
僕ら3人が道場に入ると、先輩達はかなり動揺していた。
察しがついたようだ。
 “まさか、お前達もか?”
 “そうです。”
W辺が言った。
そして、それぞれが、退部理由を先輩に説明した。
T先輩が、心から残念そうに、
 “どうしてだよ、W辺。お前の内股(柔道の技)は凄いぞ。
  もっと強くなれるのに。”
 “興味ないです。”
W辺は、説得には絶対に応じないという強い意志を込めて言い放った。
 “お世話になりました。失礼します。”
先輩達が呼び止める間を与えずに、彼は道場から出て行った。
それに呼応するかのように、KもW辺のあとを追って、道場を出て行った。
僕は、そんな二人の行動をあっけにとられて見つめていた。
残ったのは、僕とT巻だった。
僕達二人はタイミングを逸し、それから、2時間近く説得をされた。
最終的に、僕らは柔道を続けることになった。
今、考えてもよくわからない。
なぜ辞めようとし、なぜ辞められなかったのか?
本心は辞めたくなかったのかもしれない。

そして、僕ら1年生部員は3人なった。

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