【アメリカ合衆国での初回放送 = 2008年9月22日】※「バタフライ効果」により、世界に新たなる破滅の危機が訪れるのか?
カリフォルニア州コスタ・ヴェルデ市。ベネット家。
サンドラ・ベネットが娘のクレアを気遣う。
クレアがサイラーに襲われて脳をいじられたからだ。
クレアは「痛覚がなくなった」と嘆く。
不死身のクレアはこれまで、痛みを感じることによって「自分はまだ人間なのだ」と確認していただけに辛い。
ニューヨーク。リムジン車の中。
アンジェラ・ペトレリはうたた寝し、悪夢を見る。
善玉と悪玉の特殊能力者たちが凄絶な戦いを繰り広げ、次々と死んでいく。
アンジェラはピーター・ペトレリ(未来)と再び会い、彼の行為が「バタフライ効果」を生んでしまったのだと責める。
ネイサン・ペトレリ狙撃事件がなければ、クレアも自宅ではなく、別の場所にいるはずだった。
ピーター(未来)は「クレアに何があったというんだ?」と心配する。
「それは自分の目で確かめてみることね」
モヒンダーのラボ(元アイザックのアパート)。朝。
マヤがモヒンダーを探しに来る。
モヒンダーはなんと、上半身裸で天井からぶら下がっていた。
そして、パッと飛び降りてはまたスルスルと壁を登ってみせる。
彼は新たに得たスーパーパワーのおかげで、自由自在に動き回れるのだ。
また、精神も高揚し、エネルギーに溢れている。
マヤも吊られて興奮してくる。
2人は熱い口づけを交わし、服を脱がし合う。
※この2人、結構お似合いだよね。
荒野。
マット・パークマンは灼熱の太陽の下をさ迷い続けたあげく、気を失う。
ニューヨーク。プライマテック施設。ボブ・ビショップの執務室。
エル・ビショップは「今度こそ、サイラーを見つけてみせるわ」と意気込むが、これ以上失敗を重ねられては叶わないと、任務を外されてしまう。
東京。ヤマガト・インダストリー本社。
中村ヒロは高報酬で秘密厳守だという私立探偵チームを雇い、化学式メモを奪った女の手掛かりを探る。
探偵チームは指紋から、犯人はダフニ・ミルブルックという、パリ在住のアメリカ人だと突き止める。
ヒロは早速、1人でパリに瞬間移動しようとする。
未来世界で安藤に殺された自分の姿が脳裏に焼き付いており、親友であるはずの安藤を信用できなくなってしまったのだ。
安藤にとっては何が何だか、わけがわからないが、ヒロは敢えて説明せず、一緒に連れて行くことにする。
パリ。ダフニのアパート。
ヒロと安藤が出現する。ダフニは留守だ。
さすが泥棒の棲家らしく、部屋は芸術品や金の延べ棒等、盗品でいっぱいだ。
なんと、ダヴィンチの『モナリザの微笑み』まであるではないか!
ワシントンDC。
トレイシー・ストラウスはロバート・モルデン知事にネイサン・ペトレリの州議会への登用を強く薦める。
こうして、トレイシーはテキサス州オデッサ市に飛ぶことになった。
駐車場。
胡散臭いレポーターがトレイシーにつきまとう。
「あなた、ラスベガスでストリッパーをやってましたね?」
そんなの、全く覚えがない。言いがかりもいい加減にしてほしい。
「あなたが認めようと認めまいと、明日、この記事を出しますよ」
「そんな事したら、タダじゃおかないわよ」
Reporter: I'm running this story with or without your comment.
Tracy: You run this story and I will hunt your ass down and destroy you.
※このセリフ、後で読み返すと皮肉的だ。
コスタ・ヴェルデ地域の鉄道。
クレア・ベネットはビデオカメラをセットし、猛スピードで迫る列車の前に立つ。
これで7度めだ。
何度やっても死なないどころか、痛みさえ感じないので、かえって、やるせない気分だ。
Claire: (ビデオカメラに向かって) It seemed to help last time I made a tape. But this time it's different because I'm starting to wonder if I'm even human anymore... because if you can't feel anything, do you still have a soul? Will I live forever? All of these questions, I just... I need to prove that I'm still alive. So I guess I should just start by saying that... my name is Claire Bennet, and this is attempt number seven.
列車がぶつかる寸前、クレアはどこからともなく飛んで来たピーター(未来)にすくわれてしまう。
クレアは「不死身能力なんて、つまらない」と嘆く。
念力や飛行能力や瞬間移動能力等と比べて、不死身能力は受け身でしかなく、「戦う」役には立たないからだ。
Claire: You can't save me all the time, Peter. What happened was my fault. I can't defend myself. Yeah, I can... I can heal, but what kind of lame power is that? I'm still just a victim.
テキサス州オデッサ市。病院。ネイサンの病室。
トレイシーが現れ、ネイサンにニューヨーク州議会員にならないかと持ちかける。
「ニキ、何トボけてるんだい?君と私はラスベガスでよろしくやった仲じゃないか」
トレイシーには何の覚えもないことである。
Tracy: Do you think that you know me?
Nathan: The word "biblically" comes to mind.
彼女は「決心がついたら、ご連絡下さい」と言って退室する。
入れ替わりに、リンダーマン氏が入って来る。
リンダーマン氏によると、トレイシーの申し出は「神の計画」の一部なのだという。
ネイサンは「神の計画が何なのか、あんたにわかるわけはない」と突っぱね、追い出す。
ニューヨーク。プライマテック施設。ボブ・ビショップの執務室。
エル・ビショップは「良い計画を思いついたわよ!」と言いながら、入って来る。
(地下?)5階に捕えてある凶悪な能力者たちを囮にしてサイラーをおびき寄せようというのである。
他者の能力を次々と吸収しようとして止まないサイラーにとって、この施設の5階は食べ放題のレストランのようなものだから、きっと食いついてくるに違いない。
ボブは反対側を向いて座ったまま、返事をしない。
回り込んでみると、ボブはすでに死んでいた。頭蓋骨を切断されて。
おびき寄せるもなにも、サイラーはすでに現れて、「食べ放題」を始めていたのである!
エルは5階に急行し、独房に入れられていたノア・ベネットを解放し、拳銃を渡す。
その時、サイラーが現れる。
ノアはサイラーの胸を数発、撃つ。
サイラーは一旦、倒れるが、ほどなく、身体から弾丸がポロポロと落ち、蘇生する。
サイラーが不死身になったということは...つまり、クレアを襲ったということだ。
ノアは愕然とする。
サイラーはノアを気絶させた後、エルの方を向く。
エルの額が念力で切られて行く。
エルは絶叫しながら、全身から電光を迸らせる。
サイラーは壁に叩きつけられ、気を失う。
同時に、ビルの警備システムも無効となり、凶悪な特殊能力者たちが脱走してしまう。
ダフニのアパート。
ヒロと安藤は化学式メモを探しながら、口喧嘩をしている。
ヒロが安藤を罪人のように扱うからである。
ヒロは仕方なく、未来で見た「安藤のヒロ殺し」場面を話して聞かせる。
安藤は「それは僕に似た奴か、ロボットかもしれないじゃないか」と指摘する。
それにしても、化学式メモが見つからない。ダフニが肌身離さず持っているのかもしれない。
それなら、ダフニ自身が大切にしている物を盗み、交換を持ちかけてみよう。
ヒロは部屋を見渡し、ダフニの高校時代の陸上競技のメダルを選ぶ。
病院。
ネイサンはピーター(未来)に、州議員の席をオファーされた事を明かす。前回、議員だった時に苦い経験をしているため、迷っているのだ。
Nathan: Last time I was in a position of authority, I nearly let Manhattan get wiped off the face of the map. I'm not really sure what that says about my basic nature.
Peter: Well, you're different now. Everything's different.
ピーター(未来)も「実は俺は兄さんを殺すために未来からやって来たんだ」と打ち明ける。
その目的はあくまでも「世界を救う」事だったが、却って悪い結果を招いてしまったかもしれない。
ネイサンは「未来を知っているのなら、私がどうすべきか、教えてほしい」と頼む。
だが、その「未来」は時間軸が変わってしまったから、もう存在しない。
ピーター(未来)には「正しい選択をするんだ」としか答えようがなかった。
※ピーター(未来)の時間軸が存在しないのなら、なぜ、ピーター(未来)は消えないのか?
ワシントンDC。駐車場。
トレイシーが車を乗り入れた時、ネイサンから「オファーをお受けします」という連絡が入る。
彼女は喜び、「記者会見の手配をします」と約束する。
そこに、例のレポーターが現れる。待ち伏せしていたのだ。
彼はネイサンとニキのセックス・ビデオを見せ、コメントを求める。
トレイシーは「あたしはニキじゃないわ」と主張するが、レポーターはしつこく迫る。
トレイシーが思わずレポーターの腕を掴むと、その全身が凍結し、粉々に砕け散る。
プライマテック施設。5階の独房。
サイラーが全身を縛られて眠っている。
エルとアンジェラが窓越しにその姿を眺めている。
アンジェラは「ボブが死んだ今、プライマテックの指揮権はあたしにあるわ」と宣言する。
その初仕事はエルの解雇だった。
ボブは生前、愛娘のエルがいくら失態を犯そうとも、ずっと擁護し続けた。
だが、今回、エルは電光放射によって施設の電源を落とし、凶悪能力者たちを逃がす結果を招いてしまった。
もう、誰も彼女を庇えない。
Elle: I have worked for this company my entire life! What am I supposed to do now?
Angela: I suppose you'll have to get yourself another life.
ダフニのアパート。
ダフニが帰宅する。
ヒロはメダルを見せ、「化学式のメモと交換しよう」と持ちかける。
ダフニは『モナリザの微笑み』の後ろからメモを取り出す。
なんと、メモはずっとそこにあったのである。
ダフニはダッシュしてメダルを奪い返そうとするが、ヒロは瞬間移動でかわす。
さらに、時間も止めるのだが、止まったのは安藤だけで、ダフニは普通の速度で動けるのだった。
ダフニは安藤の咽喉にナイフを突きつけ、ヒロを脅迫する。
安藤の首はちょっとだけ切られてしまうが、結局、ヒロは安藤を見殺しにはできず、化学式のメモもメダルもダフニに取られ、逃げられる。
ダフニはこれから、もう半分のメモを取りに行くつもりらしい。
時間が再び動き出すと、安藤が自分の首から血が流れている事に気付き、ヒロを責める。
ヒロは「計画通り」と余裕を見せる。
ダフニのメダルに追跡装置を仕掛けておいたのである。
ほどなく、GPS反応がある。
彼女の居場所はベルリンだ。
2人はドイツに急行する。
モヒンダーのラボ。
モヒンダーが目覚める。マヤは隣ですやすやと眠っている。
どうも、体調がオカシイ...と、モヒンダーは起き上がり、鏡を覗く。
すると、なんと、あちこちの皮膚が変色し、剥がれかかっている。
まるで、鱗のようだ。
灼熱の荒野。(ここだけはずっと昼間?)
マットがうつ伏せに倒れている。
ふと目を覚まして顔を上げると、目の前に大きな亀がいる。
それにしても、咽喉がカラカラだ。水が欲しい。
すると、亀が「そこの草を引っこ抜いて吸ったら良いよ」と教えてくれる。
マットはその通りにする。たしかに、草には水分がたっぷり含まれていた。
「亀さん、ありがとう。君は命の恩人だ」
だが、亀が喋ったと思ったのは錯覚で、マットの後方に親切そうな初老の男が立っていた。
Matt: Thank you, turtle. You saved my life.
Usutu: Why are you talking to a turtle?
※亀を「turtle」と言っているが、陸亀は「tortoise」が正しい。
その男...ウストゥの話から、ここはアフリカ大陸だということがわかる。
マットは本来、ここにいるべきではないのだという。
ウストゥは故・アイザックのように、予知絵を描く能力を備えており、それによれば、マットには別の運命が待っていたらしい。
岩の上の「地球真っ二つ」の絵を描いたのもウストゥである。
病院。
リンダーマン氏はネイサンとチェスをしながら、「君は正しい選択をした」とうそぶく。
ネイサンは「今度はあんたの操り人形にはならないぞ」と念を押す。
そこに看護婦が入って来る。
「そろそろ、おやすみになった方がよろしいですよ」
「だけど、このゲームを終わらせなきゃ」と、ネイサンはチェス盤を示す。
看護婦は怪訝な顔をする。
彼女にはリンダーマン氏の姿が見えないのだった。
ベネット家。
クレアが帰宅すると、父ノアも久しぶりに戻っていた。
ノアはクレアの無事な姿を見て安堵する。
Noah: I was so worried about you. Are you all right?
Claire: No, but I'm better now.
だが、ノアはまた、すぐに出かけなければならない。
脱走した凶悪能力者たちを捕まえるためだ。
クレアは「あたしにも手伝わせて」と頼むが、ノアは「それは危険だ」と聞き入れない。
でも、家にいたところで安全とは限らないのではないか?
「それなら大丈夫。助けを呼んでおいたよ」
そこに、サンドラに案内されたメレディスが入って来る。
メレディスはクレアの生母で、強力な発火能力を備えている。
ノアが留守の間、家族をしっかりと守ってくれるだろう。
プライマテック施設。5階。
ピーター(未来)が現れる。
彼はピーター(現在)を凶悪能力者のジェシー・マーフィーの身体の中に隠しておいたのだが、そのジェシーは他の悪党たちと一緒に行方をくらましている。
真相を知ったアンジェラは怒る。
プライマテック施設付近。夜。
ジェシーの身体の中に閉じ込められたピーター(現在)はとりあえず、他の悪党たちと行動を共にしていたが、隙を見て、公衆電話からネイサン宛にメッセージを残す。
「俺にそっくりの奴に気をつけるんだ」
もちろん、ピーター(未来)のことである。
その間、ノックスとフリントとドイツ人(名前?)はそれぞれの特殊能力を使い、ガソリンスタンドで無益な殺人を行う。
奴らには人を殺すのが楽しいらしい。
やがて、気が済むと、悪党どもは車に乗り、「おめぇも一緒に来るかい?」とジェシーに声をかける。
ジェシーことピーター(現在)は少し考えてから、車に乗り込む。
プライマテック施設。5階。
アンジェラは1人でサイラーの独房に入り、優しく語りかける。
彼女は息子たち(ネイサン&ピーター)にガッカリさせられる結果となったが、これからはサイラーを母として導いてやるつもりなのだという。
「あんたは俺の母親なんかじゃない」
「いいえ、あたしはあなたの母なのよ」
Angela: My sons have been such a disappointment, but you... I can give you what all boys crave from their mothers: inspiration and guidance; comfort. Isn't that right, Gabriel?
Sylar: My name is Sylar. And you are not my mother.
Angela: But I am, dear. I am.
※え!?
*本文中で省略した名言・迷言集
Angela: You have no idea the fire you're playing with. You don't screw with time. It's called the butterfly effect. Step on a butterfly today, (and) three years from now a million people are wiped out.
Peter: Let's hope it's no one I know.
Angela: Ah, but what if it is? What if it turns out to be someone you do know? Someone you care about?
※「バタフライ効果」は「ブラジルでの蝶の羽ばたきがテキサスでトルネードを起こすか?」という仮説(地名はどこでも構わない)。日本の「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺と似たようなもの?時間旅行物に於いては「過去の出来事を1つ変えてしまうだけで、時間軸にとんでもない影響を与えてしまう」という警告として引用される。
(日本語音声+英字幕)
Hiro: You understand your part of the plan, right?
Ando: It sounds dangerous. Does Batman put Robin in danger when he sets a trap for Catwoman?
Hiro: Sometimes. To teach him a lesson.
Ando: Stop punishing me for something I haven't done yet.
Hiro: Don't kill me and I won't punish you.
※DCコミックス界で「Robin」は「Batman」のサイドキック。「Catwoman」は悪玉だが、Batmanと恋仲になったりもする。また、BatmanとCatwomanの娘が活躍する『Birds of Prey』という作品もある。
Peter: What were you doing?
Claire: What does it look like? Trying to get hit by a train!
Usutu: You come from America?
Matt: Yes. How did you...
Usutu: You know Britney Spears?
※「Britney Spears」はアメリカのポップ歌手。
Matt: Your cell. I gotta use your cell. I've got to call home.
Usutu: No service here. I should've gone with Sprint.
※「Sprint」はアメリカの携帯電話会社だが、アフリカでも商売してるのか?
*その他のトリヴィア
* タイトルの『The Butterfly Effect』は元々、この1つ前のエピソードの仮題だった。
* 当エピソードには『Dreamtime』という仮題が使われていた。
* Tracy StraussはNiki Sanders(第2シーズン最終話で死んだはず)と瓜二つだが、その関係は(現時点では)不明。少なくとも、本人たちはお互いの存在を知らなかったらしい。Nikiと生き別れになった双子姉妹か、あるいはNikiの別人格か生まれ変わりなのか?
* トレイシーの「冷凍能力」は英語では「cryokinesis」、それを操る者を「cryokinetic」と言う。
カリフォルニア州コスタ・ヴェルデ市。ベネット家。
サンドラ・ベネットが娘のクレアを気遣う。
クレアがサイラーに襲われて脳をいじられたからだ。
クレアは「痛覚がなくなった」と嘆く。
不死身のクレアはこれまで、痛みを感じることによって「自分はまだ人間なのだ」と確認していただけに辛い。
ニューヨーク。リムジン車の中。
アンジェラ・ペトレリはうたた寝し、悪夢を見る。
善玉と悪玉の特殊能力者たちが凄絶な戦いを繰り広げ、次々と死んでいく。
アンジェラはピーター・ペトレリ(未来)と再び会い、彼の行為が「バタフライ効果」を生んでしまったのだと責める。
ネイサン・ペトレリ狙撃事件がなければ、クレアも自宅ではなく、別の場所にいるはずだった。
ピーター(未来)は「クレアに何があったというんだ?」と心配する。
「それは自分の目で確かめてみることね」
モヒンダーのラボ(元アイザックのアパート)。朝。
マヤがモヒンダーを探しに来る。
モヒンダーはなんと、上半身裸で天井からぶら下がっていた。
そして、パッと飛び降りてはまたスルスルと壁を登ってみせる。
彼は新たに得たスーパーパワーのおかげで、自由自在に動き回れるのだ。
また、精神も高揚し、エネルギーに溢れている。
マヤも吊られて興奮してくる。
2人は熱い口づけを交わし、服を脱がし合う。
※この2人、結構お似合いだよね。
荒野。
マット・パークマンは灼熱の太陽の下をさ迷い続けたあげく、気を失う。
ニューヨーク。プライマテック施設。ボブ・ビショップの執務室。
エル・ビショップは「今度こそ、サイラーを見つけてみせるわ」と意気込むが、これ以上失敗を重ねられては叶わないと、任務を外されてしまう。
東京。ヤマガト・インダストリー本社。
中村ヒロは高報酬で秘密厳守だという私立探偵チームを雇い、化学式メモを奪った女の手掛かりを探る。
探偵チームは指紋から、犯人はダフニ・ミルブルックという、パリ在住のアメリカ人だと突き止める。
ヒロは早速、1人でパリに瞬間移動しようとする。
未来世界で安藤に殺された自分の姿が脳裏に焼き付いており、親友であるはずの安藤を信用できなくなってしまったのだ。
安藤にとっては何が何だか、わけがわからないが、ヒロは敢えて説明せず、一緒に連れて行くことにする。
パリ。ダフニのアパート。
ヒロと安藤が出現する。ダフニは留守だ。
さすが泥棒の棲家らしく、部屋は芸術品や金の延べ棒等、盗品でいっぱいだ。
なんと、ダヴィンチの『モナリザの微笑み』まであるではないか!
ワシントンDC。
トレイシー・ストラウスはロバート・モルデン知事にネイサン・ペトレリの州議会への登用を強く薦める。
こうして、トレイシーはテキサス州オデッサ市に飛ぶことになった。
駐車場。
胡散臭いレポーターがトレイシーにつきまとう。
「あなた、ラスベガスでストリッパーをやってましたね?」
そんなの、全く覚えがない。言いがかりもいい加減にしてほしい。
「あなたが認めようと認めまいと、明日、この記事を出しますよ」
「そんな事したら、タダじゃおかないわよ」
Reporter: I'm running this story with or without your comment.
Tracy: You run this story and I will hunt your ass down and destroy you.
※このセリフ、後で読み返すと皮肉的だ。
コスタ・ヴェルデ地域の鉄道。
クレア・ベネットはビデオカメラをセットし、猛スピードで迫る列車の前に立つ。
これで7度めだ。
何度やっても死なないどころか、痛みさえ感じないので、かえって、やるせない気分だ。
Claire: (ビデオカメラに向かって) It seemed to help last time I made a tape. But this time it's different because I'm starting to wonder if I'm even human anymore... because if you can't feel anything, do you still have a soul? Will I live forever? All of these questions, I just... I need to prove that I'm still alive. So I guess I should just start by saying that... my name is Claire Bennet, and this is attempt number seven.
列車がぶつかる寸前、クレアはどこからともなく飛んで来たピーター(未来)にすくわれてしまう。
クレアは「不死身能力なんて、つまらない」と嘆く。
念力や飛行能力や瞬間移動能力等と比べて、不死身能力は受け身でしかなく、「戦う」役には立たないからだ。
Claire: You can't save me all the time, Peter. What happened was my fault. I can't defend myself. Yeah, I can... I can heal, but what kind of lame power is that? I'm still just a victim.
テキサス州オデッサ市。病院。ネイサンの病室。
トレイシーが現れ、ネイサンにニューヨーク州議会員にならないかと持ちかける。
「ニキ、何トボけてるんだい?君と私はラスベガスでよろしくやった仲じゃないか」
トレイシーには何の覚えもないことである。
Tracy: Do you think that you know me?
Nathan: The word "biblically" comes to mind.
彼女は「決心がついたら、ご連絡下さい」と言って退室する。
入れ替わりに、リンダーマン氏が入って来る。
リンダーマン氏によると、トレイシーの申し出は「神の計画」の一部なのだという。
ネイサンは「神の計画が何なのか、あんたにわかるわけはない」と突っぱね、追い出す。
ニューヨーク。プライマテック施設。ボブ・ビショップの執務室。
エル・ビショップは「良い計画を思いついたわよ!」と言いながら、入って来る。
(地下?)5階に捕えてある凶悪な能力者たちを囮にしてサイラーをおびき寄せようというのである。
他者の能力を次々と吸収しようとして止まないサイラーにとって、この施設の5階は食べ放題のレストランのようなものだから、きっと食いついてくるに違いない。
ボブは反対側を向いて座ったまま、返事をしない。
回り込んでみると、ボブはすでに死んでいた。頭蓋骨を切断されて。
おびき寄せるもなにも、サイラーはすでに現れて、「食べ放題」を始めていたのである!
エルは5階に急行し、独房に入れられていたノア・ベネットを解放し、拳銃を渡す。
その時、サイラーが現れる。
ノアはサイラーの胸を数発、撃つ。
サイラーは一旦、倒れるが、ほどなく、身体から弾丸がポロポロと落ち、蘇生する。
サイラーが不死身になったということは...つまり、クレアを襲ったということだ。
ノアは愕然とする。
サイラーはノアを気絶させた後、エルの方を向く。
エルの額が念力で切られて行く。
エルは絶叫しながら、全身から電光を迸らせる。
サイラーは壁に叩きつけられ、気を失う。
同時に、ビルの警備システムも無効となり、凶悪な特殊能力者たちが脱走してしまう。
ダフニのアパート。
ヒロと安藤は化学式メモを探しながら、口喧嘩をしている。
ヒロが安藤を罪人のように扱うからである。
ヒロは仕方なく、未来で見た「安藤のヒロ殺し」場面を話して聞かせる。
安藤は「それは僕に似た奴か、ロボットかもしれないじゃないか」と指摘する。
それにしても、化学式メモが見つからない。ダフニが肌身離さず持っているのかもしれない。
それなら、ダフニ自身が大切にしている物を盗み、交換を持ちかけてみよう。
ヒロは部屋を見渡し、ダフニの高校時代の陸上競技のメダルを選ぶ。
病院。
ネイサンはピーター(未来)に、州議員の席をオファーされた事を明かす。前回、議員だった時に苦い経験をしているため、迷っているのだ。
Nathan: Last time I was in a position of authority, I nearly let Manhattan get wiped off the face of the map. I'm not really sure what that says about my basic nature.
Peter: Well, you're different now. Everything's different.
ピーター(未来)も「実は俺は兄さんを殺すために未来からやって来たんだ」と打ち明ける。
その目的はあくまでも「世界を救う」事だったが、却って悪い結果を招いてしまったかもしれない。
ネイサンは「未来を知っているのなら、私がどうすべきか、教えてほしい」と頼む。
だが、その「未来」は時間軸が変わってしまったから、もう存在しない。
ピーター(未来)には「正しい選択をするんだ」としか答えようがなかった。
※ピーター(未来)の時間軸が存在しないのなら、なぜ、ピーター(未来)は消えないのか?
ワシントンDC。駐車場。
トレイシーが車を乗り入れた時、ネイサンから「オファーをお受けします」という連絡が入る。
彼女は喜び、「記者会見の手配をします」と約束する。
そこに、例のレポーターが現れる。待ち伏せしていたのだ。
彼はネイサンとニキのセックス・ビデオを見せ、コメントを求める。
トレイシーは「あたしはニキじゃないわ」と主張するが、レポーターはしつこく迫る。
トレイシーが思わずレポーターの腕を掴むと、その全身が凍結し、粉々に砕け散る。
プライマテック施設。5階の独房。
サイラーが全身を縛られて眠っている。
エルとアンジェラが窓越しにその姿を眺めている。
アンジェラは「ボブが死んだ今、プライマテックの指揮権はあたしにあるわ」と宣言する。
その初仕事はエルの解雇だった。
ボブは生前、愛娘のエルがいくら失態を犯そうとも、ずっと擁護し続けた。
だが、今回、エルは電光放射によって施設の電源を落とし、凶悪能力者たちを逃がす結果を招いてしまった。
もう、誰も彼女を庇えない。
Elle: I have worked for this company my entire life! What am I supposed to do now?
Angela: I suppose you'll have to get yourself another life.
ダフニのアパート。
ダフニが帰宅する。
ヒロはメダルを見せ、「化学式のメモと交換しよう」と持ちかける。
ダフニは『モナリザの微笑み』の後ろからメモを取り出す。
なんと、メモはずっとそこにあったのである。
ダフニはダッシュしてメダルを奪い返そうとするが、ヒロは瞬間移動でかわす。
さらに、時間も止めるのだが、止まったのは安藤だけで、ダフニは普通の速度で動けるのだった。
ダフニは安藤の咽喉にナイフを突きつけ、ヒロを脅迫する。
安藤の首はちょっとだけ切られてしまうが、結局、ヒロは安藤を見殺しにはできず、化学式のメモもメダルもダフニに取られ、逃げられる。
ダフニはこれから、もう半分のメモを取りに行くつもりらしい。
時間が再び動き出すと、安藤が自分の首から血が流れている事に気付き、ヒロを責める。
ヒロは「計画通り」と余裕を見せる。
ダフニのメダルに追跡装置を仕掛けておいたのである。
ほどなく、GPS反応がある。
彼女の居場所はベルリンだ。
2人はドイツに急行する。
モヒンダーのラボ。
モヒンダーが目覚める。マヤは隣ですやすやと眠っている。
どうも、体調がオカシイ...と、モヒンダーは起き上がり、鏡を覗く。
すると、なんと、あちこちの皮膚が変色し、剥がれかかっている。
まるで、鱗のようだ。
灼熱の荒野。(ここだけはずっと昼間?)
マットがうつ伏せに倒れている。
ふと目を覚まして顔を上げると、目の前に大きな亀がいる。
それにしても、咽喉がカラカラだ。水が欲しい。
すると、亀が「そこの草を引っこ抜いて吸ったら良いよ」と教えてくれる。
マットはその通りにする。たしかに、草には水分がたっぷり含まれていた。
「亀さん、ありがとう。君は命の恩人だ」
だが、亀が喋ったと思ったのは錯覚で、マットの後方に親切そうな初老の男が立っていた。
Matt: Thank you, turtle. You saved my life.
Usutu: Why are you talking to a turtle?
※亀を「turtle」と言っているが、陸亀は「tortoise」が正しい。
その男...ウストゥの話から、ここはアフリカ大陸だということがわかる。
マットは本来、ここにいるべきではないのだという。
ウストゥは故・アイザックのように、予知絵を描く能力を備えており、それによれば、マットには別の運命が待っていたらしい。
岩の上の「地球真っ二つ」の絵を描いたのもウストゥである。
病院。
リンダーマン氏はネイサンとチェスをしながら、「君は正しい選択をした」とうそぶく。
ネイサンは「今度はあんたの操り人形にはならないぞ」と念を押す。
そこに看護婦が入って来る。
「そろそろ、おやすみになった方がよろしいですよ」
「だけど、このゲームを終わらせなきゃ」と、ネイサンはチェス盤を示す。
看護婦は怪訝な顔をする。
彼女にはリンダーマン氏の姿が見えないのだった。
ベネット家。
クレアが帰宅すると、父ノアも久しぶりに戻っていた。
ノアはクレアの無事な姿を見て安堵する。
Noah: I was so worried about you. Are you all right?
Claire: No, but I'm better now.
だが、ノアはまた、すぐに出かけなければならない。
脱走した凶悪能力者たちを捕まえるためだ。
クレアは「あたしにも手伝わせて」と頼むが、ノアは「それは危険だ」と聞き入れない。
でも、家にいたところで安全とは限らないのではないか?
「それなら大丈夫。助けを呼んでおいたよ」
そこに、サンドラに案内されたメレディスが入って来る。
メレディスはクレアの生母で、強力な発火能力を備えている。
ノアが留守の間、家族をしっかりと守ってくれるだろう。
プライマテック施設。5階。
ピーター(未来)が現れる。
彼はピーター(現在)を凶悪能力者のジェシー・マーフィーの身体の中に隠しておいたのだが、そのジェシーは他の悪党たちと一緒に行方をくらましている。
真相を知ったアンジェラは怒る。
プライマテック施設付近。夜。
ジェシーの身体の中に閉じ込められたピーター(現在)はとりあえず、他の悪党たちと行動を共にしていたが、隙を見て、公衆電話からネイサン宛にメッセージを残す。
「俺にそっくりの奴に気をつけるんだ」
もちろん、ピーター(未来)のことである。
その間、ノックスとフリントとドイツ人(名前?)はそれぞれの特殊能力を使い、ガソリンスタンドで無益な殺人を行う。
奴らには人を殺すのが楽しいらしい。
やがて、気が済むと、悪党どもは車に乗り、「おめぇも一緒に来るかい?」とジェシーに声をかける。
ジェシーことピーター(現在)は少し考えてから、車に乗り込む。
プライマテック施設。5階。
アンジェラは1人でサイラーの独房に入り、優しく語りかける。
彼女は息子たち(ネイサン&ピーター)にガッカリさせられる結果となったが、これからはサイラーを母として導いてやるつもりなのだという。
「あんたは俺の母親なんかじゃない」
「いいえ、あたしはあなたの母なのよ」
Angela: My sons have been such a disappointment, but you... I can give you what all boys crave from their mothers: inspiration and guidance; comfort. Isn't that right, Gabriel?
Sylar: My name is Sylar. And you are not my mother.
Angela: But I am, dear. I am.
※え!?
*本文中で省略した名言・迷言集
Angela: You have no idea the fire you're playing with. You don't screw with time. It's called the butterfly effect. Step on a butterfly today, (and) three years from now a million people are wiped out.
Peter: Let's hope it's no one I know.
Angela: Ah, but what if it is? What if it turns out to be someone you do know? Someone you care about?
※「バタフライ効果」は「ブラジルでの蝶の羽ばたきがテキサスでトルネードを起こすか?」という仮説(地名はどこでも構わない)。日本の「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺と似たようなもの?時間旅行物に於いては「過去の出来事を1つ変えてしまうだけで、時間軸にとんでもない影響を与えてしまう」という警告として引用される。
(日本語音声+英字幕)
Hiro: You understand your part of the plan, right?
Ando: It sounds dangerous. Does Batman put Robin in danger when he sets a trap for Catwoman?
Hiro: Sometimes. To teach him a lesson.
Ando: Stop punishing me for something I haven't done yet.
Hiro: Don't kill me and I won't punish you.
※DCコミックス界で「Robin」は「Batman」のサイドキック。「Catwoman」は悪玉だが、Batmanと恋仲になったりもする。また、BatmanとCatwomanの娘が活躍する『Birds of Prey』という作品もある。
Peter: What were you doing?
Claire: What does it look like? Trying to get hit by a train!
Usutu: You come from America?
Matt: Yes. How did you...
Usutu: You know Britney Spears?
※「Britney Spears」はアメリカのポップ歌手。
Matt: Your cell. I gotta use your cell. I've got to call home.
Usutu: No service here. I should've gone with Sprint.
※「Sprint」はアメリカの携帯電話会社だが、アフリカでも商売してるのか?
*その他のトリヴィア
* タイトルの『The Butterfly Effect』は元々、この1つ前のエピソードの仮題だった。
* 当エピソードには『Dreamtime』という仮題が使われていた。
* Tracy StraussはNiki Sanders(第2シーズン最終話で死んだはず)と瓜二つだが、その関係は(現時点では)不明。少なくとも、本人たちはお互いの存在を知らなかったらしい。Nikiと生き別れになった双子姉妹か、あるいはNikiの別人格か生まれ変わりなのか?
* トレイシーの「冷凍能力」は英語では「cryokinesis」、それを操る者を「cryokinetic」と言う。
Usutuはなんか好きです。Heroesって色んなキャラがいるんですが、「いい味出してるなー」って人がいなかったので。
と、ここまでのHeroesは面白かったのですが、アンジェラのこの一言から...
「cryo-」(または「cry-」)の語源はドイツ語の「kryo」(その語源はギリシャ語の「kryos」)で「冷たい」、「凍らせる」、「kine」はギリシャ語の「動かす」ですが、SF用語だという事を考慮すると、「cryokinesis」はおそらく、「cryo-」+「telekinesis」(念力)という造語なんでしょうね。造語としてはちょっと無理があるかもしれませんが、音韻的に「pyrokinesis」(発火能力)と対になるように作られたのかもしれません。