Cafe シネマ&シガレッツ

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★裁かるるジャンヌ

2007-01-25 | 映画20年代
数日前に見た「男と女のいる舗道」がかなり面白くて、主人公ナナが涙しながら見ていた映画「裁かる々ジャンヌ」を借りて来て昨夜観ました。寝る前に見るんじゃなかった。。。
白黒の無声映画なのですが、とにかく生々しくてグロイ。今から80年くらい前に撮った、それも1431年の史劇なのに、ある意味ドキュメントに近い感じがして、気色悪いです。ラストの火刑シーンから暴動シーンは恐くて涙が出て来てしまいました。こんな映画見たのは初めてです。一体何なんだ?!

「ジャンヌダルク」は小学校の時、子どものための世界文学全集(?)みたいな本で読みました。そのイメージで残っていたジャンヌダルクは。。。光溢れる教会でのお告げ。白い鎧に身を固め戦隊先頭にたつジャンヌ。火あぶりになったけれど焼け残った彼女の心臓。。。そんな、子ども心に甘美な印象でした。
ところがどっこいこの映画、そんな生易しいもんじゃありません。お話は単純至極。映画の冒頭で字幕で全て語っています。フランスを救うために神から使わされたジャンヌ。だったら敵国のイギリスは悪魔か?って事になりますよね?で、優勢だったイギリスは、彼女を魔女だって事にして火刑にしてしまおうと裁判。映画はここから火刑にいたる1日。ジャンヌを演じていたルネ・ファルコネッティは、日に焼けていて短髪。美しいとかカッコイイとかではなく、見た目にモサイ19歳の少女って感じです。ただ時折見せる表情が崇高で、本当に聖女なのか?それともただの狂信的少女なのか?何だか分からなくなります。実際裁判に立ち会っていた人も彼女に対して同じ印象だったのでは?と思ってしまいました。リアルです。そうそう彼女が「ウイ」って何度も返事するのですが、その度に違った口調の声が聞こえてくるようでした。
裁判官たちはボッスヒロニムスの怪物たちみたいに何故かグロイです。拷問のグルグル廻るトゲトゲ車とか、墓場の髑髏からナメクジにょろりとか、火刑が始まる前に銭稼ぎをしている禍々しい見せ物芸人、火刑時でも乳を赤ん坊に飲ませている生の営み、何だか妙に生々しく痛々しい。
アップのシーンが多い映画で、赤ん坊が含むおっぱいなんかは、画面の三分の二が巨大おっぱいです。乳首のブツブツなんかまで見えて怖いです。そして、ゆっくりなペースで丁寧にジャンヌの表情を撮っているせいでしょうか?そのペースにいつの間にかはまり、それが自然の流れになって、細かいことまで体感したような生っぽい映画でした。
例えがぴったりとは言えないけどナチスのユダヤ人収容所惨殺とかのドキュメントを見た時 プラス 芋虫踏んづけた時みたいな感触。
いやあ、映画って凄いもんです。

(1927/仏 監/カール.ドライヤー)


★舞踏会の手帳

2007-01-24 | 映画30年代
話が多くて疲れちゃう。と、思っていても又見たくなる映画です。何たってステキな貫禄おばさん、フランソワーズ.ロゼーと優雅爬虫類人間、ルイ.ジューベを見られちゃうんですもん。でもって又見たくなって又借りて見てしまいました。

お話は、
年かさの夫を亡くした、まだ30代の未亡人クリスティーヌ。美しい若妻を愛おしむあまり亡夫は、20年もの間、彼女を誰との交際も許さず湖畔の館で過ごさせていた。夫が亡くなった今、クリスチィーヌは味わう事の出来なかった青春を求めるべく旅に出るのだ。初めての舞踏会に出た時のダンス相手10人に会うための。。。で、次々と訪ねていくお話。

一話目に出てくるのが、ロゼー扮する気の触れた母親。クリスティーヌに振られて自殺した青年の母親なのです。彼女は今だ息子が生きていると信じて、いや思い込もうとしているのです。迫真に彼女が「ほら、息子が帰ってきたわよ」と言ってドアを見ると本当に出て来そうでサスペンスです。結局は亡くなっているんですが。。。哀れで良いです。「外人部隊」を見た後だったので一際好きになりました。

二話目登場がルイ.ジューベ扮するキャバレー経営者。なぜか名前が二つあるのです。過去の本名ピエールと、現在の夜盗団の采配を振るうボス、ジョー。ジューベ様、もうっこういうのはまり役です。彼女と気づかずキャバレーで働く事を勧めたりする様はマジメでとても可笑しい。その癖、思い出してピエールとして彼女とヴェルレーヌの詩を口づさんだりして。。。結局その夜の仲間の盗みが失敗に終り、彼女の目の前で警察に引かれて行くのも、何とも言えない気分にさせてもらえます。よいです。

この後も面白い話がてんこもりです。が、詰まり過ぎてちょっと疲れます。ジュリアン.デュヴィヴィエ監督欲張り過ぎです。とか言いながら又見たくなるんだろうなあ?

(1937/仏 監/ジュリアン.デュヴィヴィエ)




★外人部隊

2007-01-24 | 映画30年代
久しぶりの更新。幸か不幸か、小劇団や自主制作映画などの知り合いから頼まれ事が重なり、更新できず。衣装製作やら話のプロットやら台本の手伝いやら、果てはロケ現場にうちのアパートが。。。何故私がみんなの飯の支度まで。。。何て思いながらも結構楽しかったのですが、見ないとストレス溜まってしまうとばかり、暇をみつけて映画を見てもブログ更新ならず。そんなこんなの合間に見た映画で思いもよらず、かなりショックに面白かった映画がこれ!ジャック.フェデー監督の「外人部隊」
ラストシーンの散らばったトランプ占いのカード。うずくまるマダム。そして死の予告のカードとは裏腹の外人部隊の出発する晴れ晴れしい太鼓の音。涙とは別の大きな感動(?)に包まれ、しばし放心でした。
この監督の「女だけの都」「ミモザ館」より私的にはこれが一番に好きです!この後フランソワーズ.ロゼー主演で前述の映画を撮ったのが分かるほど、彼女は魅力的。主役じゃないんだけど、貫禄充分の年増の魅力炸裂です。酸いも甘いも嗅ぎ分けた優しくて人生しょってるような、カッコイイ年増女。こんなおばさんになれるんなら年をとるのも恐くない。ステキです。

お金持ちのボンボン、ピエールが、愛人可愛さに贅沢三昧させたあげく会社の金にまで手をつけ外地送り。そんなピエールは愛人、フローランスにも捨てられ。。。そして彼のたどり着いた先が、地獄生活にも近いモロッコの外人部隊。この生と死の綱渡りのような戦地には過去を忘れたい男たちが自然と集まっています。お話の舞台のほとんどは、ピエールの泊まっている宿屋とその周辺。フローランスの面影が忘れられず苦しんでいるピエールは、彼女そっくりの女、イルマと遭遇します。でもイルマはフローランスとは正反対のオトナシくて健気な女の子。それでも彼はイルマにフローランスの面影を求め、イルマも彼に愛を捧げるようになり。。。ふたりの愛も深まった頃、彼の伯父が亡くなり遺産を譲り受ける事に。このままハッピーエンドになるかと思いきや、偶然にもピエールはあの嘘つき贅沢女フローランスに道で再会してしまうのでありました。さてピエールはどちらを選ぶのか?!。。。結局、再会したフローランスにも違和感を感じ、かといってイルマのもとへ行くには身勝手な自分を感じ。。。彼はまた外人部隊に戻ってゆくのでありました。
と、まあ簡単に言うとこんな筋書きです。
ん?最初に誉めていたフランソワーズ ロゼーに一言も触れてない?彼女は宿屋の女将さんです。彼女の他にも宿屋のイヤらしい旦那さん、ピエールの親友のロシア亡命者、イルマと同じ酒場の綺麗な歌手などなど個性的で魅力的な登場人物がお話に面白みや深みをズズイと添えています。
いやあ、いい映画でした。
あ、そうそうヒロイン役のマリーベルは「舞踏会の手帳」のヒロインマダムですが、この時はちょっと太っていて別人かと思いました。

(1933/仏 監/ジャック.フェデー)

★時計仕掛けのオレンジ

2007-01-05 | 映画70年代
明けましておめでとうございます。
今年も皆様にとって良い年でありますように。
私、本日新潟から帰ってきました。我が家は農家ではないのですが、マメな母のおかげで無農薬野菜のおせちをたんと食して参りました。畑を借りて老人介護の仕事の合間に作った大根やお芋のお雑煮、小豆のお汁粉は柄も言えぬ美味でした。やっぱりお正月は故郷に限ると思わせるのはそんな母のおかげだと思います。感謝。
ただし、田舎のテレビの大画面で映画が見れるぞ、との期待は見事に外されました。親戚の子どもが山のようにずっといたのでした。上は5年生。下は1歳児。全部男の5人兄弟。凄まじいパワーでかけずり回り、しつこく遊びを強要され、郵便屋さんごっこ、花札、カルタ取り、仕舞には書き初めの教師となり。。。こっそり二階の小さい画面で見ていても押し掛けられ、結局見れたのは弟の持っていたDVDの中の1本。「時計仕掛けのオレンジ」お正月からヤバいですこれ?!

何がヤバいって、暴力や暴行の溢れるこの映画。主人公のアレックス(マルコム・マクダウェル)は凄まじく悪い事してるって分かってるのに、見ていると高揚して気持ちよくなっていくんです。ビジュアルもデカダン趣味で格好良く、音楽も何故かクラッシックの名曲揃い。この快感は一体何?!凶暴で不敵な笑みを浮かべているアレックス君は、見かけだけでなく中身も真の極悪人。なのに何故?!何故なんだ~っ?!キューブリックさん、あなたは危険人物だ。面白すぎです。「シャイニング」も怖かったけど、ある意味この映画の方が恐いです、見てる自分の気持ちが恐ろしい。

お話は、単純そのもの。
不良グループの頭首アレックス君が仲間と悪事をはたらきまくって、果てにオールドミスを過失致死。刑務所に入ってからも聖書の暴力シーンに酔いしれ、それとは知らぬ神父さんに気に入られ、短期で出所できるという犯罪者の強制洗脳実験を受け成功。暴力や性的な事、そして大好きなベートーベンの第九を聞くと強烈な吐き気をともなう人間に改造されてしまいます。その事は新聞でも取り上げられ出所。でも出所した彼を待っていたものは、今までの彼に恨みを持つ人間ばかりの町。彼は家庭からも追い出され、浮浪者、かつての友人、暴行をはたいた文筆家やらに虐待され、あげく飛び降り自殺。洗脳実験に関わっていた政治家はマスコミから叩かれ、自殺は未遂に終わったアレックスと手を結ぶのです。が、アレックス君の洗脳はその時解けてしまったのでした。
と、いうブラックなお話。


「大丈夫。大丈夫。ワクワクしたけどアレックス君みたいなあんな事しない。
 気持ちいいのはキューブリックさんが上手すぎるからなんだ。
 いちいち楽しい小道具や小気味いい音楽の乗り、美術の綺麗さのせいなのさ」

と、自分に言い聞かせる私です。ホント、カッコよくて楽しい映画でした。
前半は完璧!だからこそヤバヤバです。せめてR15指定。

(1971/米 監/スタンリー・キューブリック)