Cafe シネマ&シガレッツ

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なんと贅沢!
黄金の輝き

★踊るニューヨーク

2006-11-30 | 映画40年代

10日くらい前からずっと見たかった映画、フレッド.アステア主演「踊るニューヨーク」(40/米)を見ました。見るのは始めて。新宿のTUTAYAで借りてきました。
もうっ、アステアにメロメロ。とにかくこの人の踊りは凄い!そして対をはって踊れる女優エレノア.パウエルも凄い、柔軟なのにバネがあってパワフル!二人の踊りは圧巻!クライマックスの舞台の装置や衣装はモノクロ映画の妙!輝く漆黒と光の粒の中で、ビギン.ザ.ビギンの曲をバックに凄まじく美しい踊り。最後の最後のタップの競演、意味もなく鼻の奥がツンとしました。

ストーリーは、
売れない男性ダンサー2人組、ジョニー・ブレット(アステア)とキング.ショー。結婚式のショーで目に止められ、ジョニーはスカウトを受けるが、借金の取立屋と勘違いして相方であるキング・ショーの名を名乗ってしまう。勘違いされたキング・ショーは舞台のスター、クレア・ベネット(パウエル)の相手役として主役に大抜擢を受ける。ジョニーは事の真相を知るが、相方キング.ショーのために親身になって応援する。でもやっぱりごたごたになって、2人組はバラバラに。しかし、真相を知ったキングショーの粋な計らいでハッピー・エンド!


分かりやすいストーリーの中で、何の違和感もなく踊りや歌が挿入されるこの頃のミュージカルって大好きです。アステアがパウエルを思って彼女の写真と踊るシーン、魅力的。パウエルが彼の踊っている所を目撃しちゃうんですが、誰だって魅了されずにいられない。アステアが踊ったら恋が発生!そういうアステア主演映画のパターンは説得力ありすぎ。私は、いつもアステアの映画を見ると「変な顔だな?タコ爺みたい」から始まって「ああ、素敵!アステア様~っ!」で終わります。それでは飽き足らず踊りの真似したり、夢覚めやらず、三日間。てな感じです。
酔っ払って踊れないキング.ショーの代わりにオセロマスクで踊るシーンの衣装、素敵!黒いバレエ衣装で太い足丸出しのパウエルが可愛く見えるのは好みの問題でしょうか?それに白黒格子のブラウス姿の細身のアステアも綺麗。2人がシルエットになった時はため息まじりの歓声!
そうそう、ランチに行ったアステアとパウエルのタップも。。。って、2人の踊り全部凄いです。
この映画、ジンジャー・ロジャースとのコンビを解消した後の初めてのミュージカルなのだそうです。これに出てジンジャーなしでもやって行けると自信がついたそうで。。。よかった、よかった。おかげでアステア様のこの後のお姿拝見できました。ありがたい。

※年号見て驚いた。1940年って第二次世界大戦中?一体アメリカってどうなってたの?!


★雨に唄えば

2006-11-29 | 映画50年代
月曜日、NHKBS2でヴィスコンティーの「若者のすべて」やってたんだよな。見逃してしまった愚かな私。。。ま、そんな事もあるさ。ルルルッル♪ルル、ルルル ルルルぅ♪これも昨日までの雨のせいなのさ。
てな事で「雨に唄えば」(1952/米)をDVDで見た。何度見ても面白くて楽しい映画です。ジーン.ケリーのあの大きな顔、大きな体、大きな笑顔。そのくせちょっとかすれたような甘い優しい歌声。向かう所敵なし!って感じです。とか言いながら、この頃のミュージカル映画は大敵だらけの黄金期!歌も踊りも見せ場だらけの豪華絢爛!そのうえこの映画は話も面白いうえに、笑いの見せ場や楽しくなるシーンの多い事!何度あの声の入れ替えで笑った事か!

時は、映画がサイレンからトーキーへと移り変わる頃。小劇場のコメディーダンス(こんな言葉あるのかな?ま、いいかっ)や映画のスタントの下積みを経て、ハリウッドのスターになったドン(ジーン.ケリー)は、美人人気女優のリナとコンビを組んで物凄い人気。リナはドンを勝手に恋人だと決めつけているが、ドンはそんな気は毛頭ない。だって綺麗だけどリナの喋り方と声は、知性のちの字も魅力のみの字もないんだもの。甲高くて発音も変。無声映画じゃそんな事分からないけど。。。追っかけてくるファンから逃げている時、ドンはキャシーという演劇少女に出会い恋してしまう。リナ、ドン、キャシーは三角関係になっちゃうのだ。
そんな時、トーキー映画の「ジャズシンガー」が大ヒット。はてさてドンたちの所属している映画会社もトーキーに乗り出すのだが、録音での問題はもりだくさん。試写会は散々!ドンもリナも俳優生命がたたれるんじゃないか?!
そこで立ち上がったのが、ドンの相棒コズモーとキャシー。
映画は成功するんだろうか?!
リナの嫉妬や妨害の中、キャシーとドンの恋は成就するんだろうか?!
はてさて?!
ま、ここはお決まりハッピーエンド!

とにかくトーキーと無声の狭間ってとこを利用しておもしろ可笑しいエピソードがてんこ盛り。ジーンケリーのあの有名な雨の中で歌うシーンもスゴいけど、相棒役のドナルド.オコナーの壁を蹴って空中一回転を盛り込んだ歌と踊りもスゴい。とにかく全編スゴいです、踊り!それから女優さん二人の個性も対局でどっちも可愛い。いい気分にさせてくれる映画です。
ところで、同じ時期を扱ったエディット.ピアフ主演の「光りなき星」(45/仏)って言うのがあるんですが、これも歌の下手な女優の吹き替えを、田舎育ちのピアフがする話ですが、最後が悲惨です。ピアフは天才的に歌がうまいので、こんな終わり方でいいのか?って。。。そう考えるとお決まりのハッピーエンドは素晴らしいぞ!

★キスなんて嫌い

2006-11-29 | 映画その他
フランスの短編映画「キスなんて嫌い」をケーブルテレビで見た。大人の女性ナレーションで進行。何故?と思いながら、15歳の女の子の思春期の違和感が割と説明的な映像で続く。「私はクラスのみんなから骸骨とかウジ虫と呼ばれている」のナレーションには、ホントそのまま骸骨とか生きているウジ虫とか出て来てちょっとえげつなくて気持ち悪い。見るのやめようかな?と思ったが、10分くらいだから全部見てみようと。。。結果、最後にホロリ。
主人公は「チビ。頭は脂性。顔はにきび面」のモテない女の子。他人がキスしているのが嫌い。学校や街中でキスしている人たちも嫌い。舌の速度がどうとか胸が大きい女の子がどうとか、冷静に分析しているけど、それは興味や羨望の裏返し。母親に答えにくいような質問したり、父親のキスが大嫌いだったり、いい子ぶったり、自分へのラブレターを偽造したり。。。そんな小さな反抗が散りばめられていて、思春期ってそうだったななんて思い出す。私も思春期にはもどりたくないもの。で、どうしてキスが嫌いなのかはコンプレックスの裏返しで本当は羨ましい、という事を自白。これで終わるかと思ったら。。。あの謎だった大人の女性のナレーション。実は彼女はもう大人になっていて、先月に母親を亡くしていたのだ。あの頃には決して帰りたくないって言っていた彼女が、優しい気持ちであの頃を受け入れる。思春期のあの頃は嫌いだけど、母親がいたあの頃は素敵だったと。母親と秋の木陰で戯れる15歳の彼女の映像に、そんなナレーションがかぶさる。胸の奥がジーンとした。よくフランス映画で「人生は素晴らしい」って言うけど、辛い時も楽しい時もみんな素敵なのかもって思うのだった。

★江戸の誘惑

2006-11-28 | 美術
 週末、両国の江戸博物館で行われていた「肉筆浮世絵展~江戸の誘惑~」へ行ってきました。チラシの地図ではJR両国から目と鼻の先のはずなのに、道に降りたらトンカツの臭いのする飲食店立ち並ぶ道。おかしいなと思いながら、青い空をバックに鳩やら人が書いてある長いコンクリートの壁を眺めながら歩いて行きました。博物館までは遠くはなかったけど。。。出口が逆だったみたいです。ま、亀に乗った像とか妙な物も見れたし良しとしよう。
 今回の展示品はボストン美術館の所蔵品80点。明治の頃、お医者のウイリアム.ビゲローという人が集めてボストン美術館へ寄贈した物だそうだ。今回展示されていたのは80点だけど、このビゲローさん、何と数万点の日本美術作品を集めてボストン美術館に贈っているそうだ。よほど気に入ったんだろう。それもそのはず見たらみんな欲しくなる気持ち分かる。日本人の私が見てもちょっとカルチャーショック的に細かく綺麗で不思議空間。お江戸へ行けるんなら行ってみたいと思うのでした。それにしてもあの日本画の白は一体何なのでしょう?透けるような立体感のあるあの色。印刷物には決して写り得ないあの艶かしい白色。生で見ると感動的です。感動的といえば、美人画の髪の毛の生え際の細かさ、美しさ。そして着物の柄。花見の遊女が黒地に孔雀の羽根の柄の着物を羽織っていたなんてモダンすぎ。
 今回たくさんの絵を見たわけですが、菱川師宣の「芝居町 遊里図屏風」と葛飾北斎の「鏡面美人図」が心に残りました。師宣は「見返り美人」で有名な画家ですが。。。この屏風、遊里の外を歩いている男たちや、格子や暖簾の中にいる女の人などを上下に分けて流れるように左から右に移動するのですが、最後には何故かそれが繋がって、壇上で身をくねらせ楽しそうに踊る遊女と地べたで見物している客たち、に到着するのです。当たり前の絵なのにだまし絵のエッシャーみたいで面白い。絵の中に立ちこめている金色の雲のせいなんでしょうか?不思議です。
そして北斎!北斎はやっぱり天才です。今回この展覧会に来たひとつの理由が、昨年見た「北斎展」で見た肉筆の美人画があまりにもよかったから。絵のタイトルは忘れましたが、「いる」んです。存在するっていうか。絵なのに。。。今回の「鏡面美人図」もそんな感じでした。そうそう、北斎が画狂老人卍と名乗って書いている輪郭線なしの絵も、真髄を探している心持ちが見えて、北斎かっこいい~!と叫びたくなります。あと10年生きていたらどこまで到達したんだろう?
 お土産で版画の浮世絵が売っていました。値段は13,000円くらいと21,000円くらい。鈴木春信の可愛いくてモダンな物やら、北斎の富岳36景やら。お金があったら好きなのを買い揃えたい気分になりました。ビゲローさんの気持ち、よぉく分かりました。

★音楽

2006-11-27 | 映画70年代
三島由紀夫原作「音楽」(1972/日)をケーブルテレビで見ました。
いやあビックリ!!
70年頃って本当に妙ですな。たまたま見たのがそうなのか?そういう時代なのか?ちょっと不思議なトンデモ映画でした。
~女性の性と心理の奥に鋭いメスを入れた三島文学を映画化した、増村保造監督のATG作品~ と、いうだけあって裸とHシーンのオンパレード?!そして、あのミニスカートやフリフリファッション!ひとつ間違うと笑いを誘うあのテンション!実は笑うシーンでない場所で大笑いしながら見ていました。ただ最後はちょっと胸にこたえたのは確かです。
精神科に通う不感症の女。その女の不可解な言動を精神科医が解いて行く話でした。

幼くして父親を亡くしたその女はヒステリーで嘘つき。恋人と体を重ねても何も感じない。恋人を嫉妬させるために、精神科医とやりもしないセックスを手帳に書いてしまうような女。彼女の症状のひとつは音楽が聞こえないという事。これがタイトル「音楽」の由縁なんですが、悦楽に達すると音楽が聞こえるらしいのです。正常な恋人とは何も感じないのに、死にそうな病人や不能者と肌を寄せると、「ああ、音楽が聞こえる!ああ、感じる!感じるわ~っ!」と、女は身悶えするのです。なな、何じゃこりゃ~っ!変態だ~っ!と、あまりに突飛で本気な事態なので、爆笑せずにはいられないのでした。ただ、彼女がそうなった本当の原因を知った時には、愕然としました。どうしようもない兄、への恋慕。禁じられた愛の行為。そして終焉。切なかったです。
ただここはやっぱり70年代!不感症が完治したであろう彼女、そして恋人に「もう治りました。今夜は彼女をモーレツに愛してやりなさい」と主治医が心優しく言うのです。モーレツですよ、モーレツ!オチがついたところで。。。70年頃ってどこまで本気なのだろう?全部が本気?なんだろうな。エロ グロ ナンセンス でも本気。面白いなあ。