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シリアで勢力争う外国、地域紛争に拡大の恐れ IS崩壊で混迷深まる

2018-03-02 00:58:02 | 戦争・内戦・紛争・クーデター・軍事介入・衝突・暴動・デモ

シリアで勢力争う外国、地域紛争に拡大の恐れ

IS崩壊で混迷深まる

2018 年 3 月 1 日 13:04 JST  THE WALL STREET JOURNAL

各国の戦略的・経済的利害の衝突により、シリア内戦は地域紛争に拡大する恐れが強まっている。


 シリアではこの1カ月間に外国の軍事行動が相次いだ。米国が東部を空爆し、ロシアの軍事会社に所属する複数の雇い兵が死亡。

イスラエルはシリア領内にあるイランの軍事施設を爆撃した。トルコはシリア北部でクルド人民兵に対する越境軍事作戦を本格化

させた。


 この不安定な状況は、ISとの戦いを通じて生まれた副産物といえる。シリアの各勢力が支配地域の争奪戦を展開する一方、

外国勢力はそれぞれが支援する勢力に武器を供与し、長年にわたる民族対立や政治的な分断は悪化の一途をたどった。

この結果、大国間で衝突が起き、紛争がシリア国外に広がる恐れが生じている。


 「誰も戦争を望んでいないが、誰もが戦争の準備を整え、戦争が起こると予想している」と、英国際戦略研究所(IISS)のシリア

問題専門家エミール・ヘケム氏は語る。


 シリアのバッシャール・アサド政権を支持するロシアは、政府軍が劣勢となっていた内戦の形勢を逆転しようと軍事介入に踏み切り、

圧倒的な影響力を持つに至った。ただ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は12月に勝利宣言した後もシリアへの介入を続けて

いるが、情勢を十分に制御できずにいる。


 ロシアとイランを後ろ盾とするアサド大統領は、反体制派に対しおおむね優位に立っている。シリア政府軍は、残忍な攻撃で支配

地域を奪還し、首都ダマスカス郊外の東グータ地区や北西部のイドリブ県などで反体制派を追い詰めている。

 

ダマスカス郊外の東グータ地区でシリア政府軍による空爆(2月25日)



 北部ではトルコ軍がシリアのクルド人民兵を抑え込もうとしており、東部では米軍がISの残存勢力と戦闘を続けている。

南部では、親イラン勢力の伸長を受けてイスラエルがシリア内戦に引きずり込まれる恐れが生じている。

 2月、ロシアの雇い兵などがシリア東部デリゾール近郊のガス田を占拠しようとしたため、米軍が空爆と迫撃砲で攻撃。

米当局者によると雇い兵など約100人が死亡したが、ロシア外務省は死者は少なかったと述べた。ブルッキングス研究所の

パベル・K・バエフ客員上級研究員は先週、ロシアは緊張の激化を避けようとしているようだとの見方を示した。


 ロシア軍機と米軍機が、シリア上空で危うく空中衝突しそうになったこともある。米中央軍の報道官によれば、昨年10月以降、

ロシア軍機が米国の管理下にあるユーフラテス川東部上空を1日に数回侵犯している。


 同報道官は「ロシア軍機のパイロットの行動が意図的なものか、それとも単純なミスか、米軍機のパイロットにとって識別するのが

ますます難しくなっている」と述べた。米軍は過去60年間以上にわたってロシア軍機を撃墜しておらず、撃墜した場合、報復を招く

可能性が大きい。


 アサド政権を強力に支援するイランは、イスラエルと米国に対する「抵抗戦線」を固めている。イスラエルは2月、ゴラン高原上空で

イランの無人機を撃墜するとともに、国境から遠いシリア領内にあるイランとシリアの軍施設を爆撃した。その際、イスラエル

軍機1機が地対空ミサイルで撃墜された。


 イスラエルの爆撃は、この地域で制空権を握っているロシアの同意を得ていたもようだ。イスラエル軍機が離陸し、標的を爆撃

しても、ロシア軍は静観していた。しかしイスラエル軍情報部門の元トップであるアモス・ヤドリン氏は、同軍機の波状攻撃が突然

中止されたことから、ロシアが介入を決断した可能性が大きいとの見方を示した。


 ヤドリン氏は「ロシアは緊張緩和を望んでいたと思う」とし、「できるだけシリアの安定を維持することがロシアの利益になる」と

述べた。イスラエル首相府は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がプーチン氏と電話で話したことを認めたが、ロシアがイスラエルの

対シリア空爆に介入したかどうかについてはコメントしなかった。


 シリアがある程度不安定になることがロシアの利益にかなう可能性もある。それはロシアの敵対国が互いに相手を弱め合う場合で、

アサド政権の存続が危うくならない限りにおいてである。


 トルコ軍が1月に、クルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」を駆逐しようと、クルド人支配地域の飛び地アフリンに侵攻した際、

シリア北西部の制空権を持っているロシアから暗黙の了解を得ていた。トルコ外務省は、アフリン侵攻作戦について了解を得るため、

トルコ当局者がモスクワを訪れていたことを明らかにした。


 トランプ米政権は、米軍をシリアに無期限に駐留させる意向を示唆しているが、戦闘に直接参加したり紛争の調停役を担ったり

することには後ろ向きだ。米国のシリア離れの姿勢は地域紛争のリスクを高めていると、へケム氏は懸念する。

敵対する各国は衝突を回避するため意思の疎通を必要としているが、米国の仲介以外には明確な意思疎通のチャンネルがないという。