「コロナ拡大は中国政府のせい」欧米で激しい怒りの表明が相次ぐ
2020年04月08日 日刊SPA
新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。東京でも感染者数が1000人を超え、
4月7日には政府がついに緊急事態宣言を発令した。
欧米各国の惨状は、すでに報じられている通り。医療崩壊したイタリアやスペインは
おろか、アメリカのトランプ大統領も、3月末の会見で米国内での死者が20万人にのぼる
可能性がある、との試算を明らかにし、「地獄のような2週間になるかもしれない」
と述べた。
新型コロナウイルスの除染を行う英emergency serviceの防護服
「中国政府が隠蔽しなければここまで広がらなかった
このように、全世界がいまだ収束への道筋を見いだせないでいる現状だが、同時に、
国際情勢は、すでに“アフターコロナ”を見据えた動きを見せ始めている。
アメリカでは、先月12日にフロリダ州の個人や企業が中国政府を相手に損害賠償請求の
訴えを起こした。テキサス州やネバダ州でも同様の訴訟がなされているという。
フランスも、政府のサイトにコロナウイルスの伝染が「中国から広まった」と明記。
これに対し、中国メディアが「発生源が中国とは限らない」との中国政府の主張を
用いて反論した。
イギリスのジョンソン首相。自身も感染して、4月7日時点でICUに入院中
そんななか、いま最も厳しい視線で中国を見つめているのがイギリスかもしれない。
実際には中国全土で最大40倍以上もの感染者数がいた可能性を伏せていたとして、
ジョンソン首相が激怒しているのだ。 『BUSINESS INSIDER JAPAN』3月31日の記事
によると、イギリス政府関係者は、コロナ危機が一段落ついたあかつきには、
<中国政府は「報い」を受けるだろうと警告している。>というのだ。
その中には、5Gへのファーウェイ参入を白紙に戻すことや、中国に依存したサプライ
チェーンを全面的に見直すことなどが含まれている。 「世界経済を台無しにしておいて、
何もなかったかのように戻ってこようとする中国政府の秘密主義を傍観し、許すことは
できない」と語る閣僚までいたそうだ。
イギリス政府と歩調を合わせるように、情報機関「MI5」の新しいトップに就任した
ケン・マッカラムも、中国の脅威に対して監視の目を光らせると約束した。
3月30日配信の『The Guardian』によると、イギリス国内での中国による企業スパイ
活動やサイバー犯罪が看過できない段階にまで達して
いるためだ。
「中国は敵性国家」イギリス主要紙の激烈コラム
そして、とうとうイギリスの主要メディアからも中国に対する容赦のない批判が
飛び出した。『The Telegraph』4月1日の記事には、衝撃的な見出しが付けられていた。
「Coronavirus means that we must now treat China like a hostile state」
(コロナ危機が意味するものは、今こそ我々は中国を敵性国家として扱わねばならないと
いうことだ。/以下すべて筆者訳) コラムの筆者は、テレグラフ紙の外交欄のチーフ
コラムニスト、コン・コフラン。つまり、過激な思想を持つ読者の投稿ではなく、
いち新聞社の公式な見解として読まれるべき文章であるという事実が重要なのだ。
中国の習近平国家主席(写真中央)
コラムは、ジョンソン政権を怒らせた感染者者数の“偽装”疑惑のみならず、その後の
中国政府の取った無責任な振る舞いを、こう断罪する。
<あたかもウイルスの被害者であるかのようなメディアキャンペーンを展開し、
40000を超える人命が失われる世界的な公衆衛生上の危機を作った責任から逃れるのみ
ならず、第2次大戦以来最悪の世界不況を招いた。>
そのうえで、中国との経済的な結びつきによるメリットに目がくらんできた欧米の
政治家たちのナイーブさこそが問題だったと分析し、こう締めくくっている。
<西洋のお人好したちによる、とりあえず中国を信用してみようかなどという時代は、
完全に終わったのだ>
「中国人」批判ではない。当の中国人も政府に怒り
とはいえ、誤解してはならないのは、こうした非難の矛先は中国共産党指導部であり、
中国人ではないという点だろう。むしろ、かねてより中国国民の間でくすぶっていた
党指導部への不信と不満が、コロナ危機をきっかけに爆発しつつあるからだ。
中国・深センの検疫所
昨年12月30日に原因不明の肺炎に警鐘を鳴らしたものの、今年の1月1日に
「デマを流した」として武漢の公安当局から摘発された李文亮医師を覚えているだろうか。
中国のネットユーザーは国家による言論弾圧に激しく反発し、その怒りは2月7日の
李医師の感染死によって頂点に達した。中国国民も、市当局や共産党執行部が李医師の
忠告に従わなかったことが、事態の悪化を招いた原因だと信じているのだ。
中国問題グローバル研究所所長で、筑波大学名誉教授の遠藤誉氏も、こう記している。
<人類を滅亡の危機にまで追い込んでいるのは習近平の保身であり、WHOのテドロス
事務局長の習近平への忖度だ。>
(「志村さん訃報で広がる中国非難の中、厚労省の『悪いのは人ではなくウイルス』は正しいのか」ヤフー個人 3月31日配信)
アメリカ、フランス、イギリスが厳しい態度で臨むのも、こうした不正を見過ごせば、
世界の秩序が失われるという危機感を抱いているからなのだろう。
コロナ終息でも、中国政府への怒りは終息しない?
いまでこそ、各国は国境を封鎖し、ヒトとモノの動きを止めている。全世界が鎖国の
ような状態だ。 だが、事態の収拾にある程度の目途がついたとき、世界はかつてない
強固さで結びつくかもしれない。ただし、その原動力は、かつてないほどに激しい憤りで
ある。
現在、中国は世界に先駆けてコロナ終息を宣言し、通常の経済活動を再開させつつある。
だが、果たしてそれがすなわち勝利と呼べるのかは疑わしい。
本当に、来年オリンピックは開催されるのだろうか? <文/石黒隆之>