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北朝鮮出稼ぎ労働者、欧州で外貨送金絶つ動き。 ポーランドも北朝鮮労働者追放へ

2018-01-31 08:41:16 | 北朝鮮

北朝鮮出稼ぎ労働者、欧州で外貨送金絶つ動き

ポーランドも北朝鮮労働者追放へ

2018 年 1 月 28 日 04:24 JST   THE WALL STREET JOURNAL

ポーランド北部のグダニスク造船所

【ワルシャワ(ポーランド)】昨年のクリスマスの数日前、ポーランドの議会が緊急招集された。ポーランドで数百人の北朝鮮人が

過酷な条件下で働き、核武装した「のけ者国家」のために外貨を稼いでいるという擁護できない取り決めを終わらせるためだ。


 ワルシャワ郊外でのトマト栽培、国営企業での溶接作業などに従事する北朝鮮人がいることは知られていた。あるノルウェーの

雑誌は、そうした北朝鮮の労働者がポーランドの造船所で北大西洋条約機構(NATO)軍の軍艦を修理していることを示す文書がある、

と報じている。2017年末が近づくと、彼らの存在は特別な緊急性を帯びてきた。というのも、ポーランドは2018年1月1日から

国連安全保障理事会の非常任理事国になることが決まっていたからだ。国連安保理は、海外で稼いだ報酬を政府に没収される北朝鮮の

労働者受け入れを禁じる制裁措置を決議したばかりだった。


ポーランド議会は労働法の改正法案を迅速に圧倒的多数で可決し、ポーランドで数十年続いてきた北朝鮮人労働者の受け入れを

あっさりと終わらせた。


 北朝鮮の出稼ぎ労働者にとって、かつては稼げる目的地だった欧州は、今やそうした労働者の受け入れを事実上拒否している。

北朝鮮の労働者は長年、給料を没収する政府側の人間に監視されながらブルガリアで織物を縫製したり、チェコの工場で自動車部品を

製造したりしてきた。法律の専門家によると、欧州連合(EU)加盟国でそうした慣行を停止していなかったのはポーランドと

小国のマルタだけだった。


 世界の他の地域も、米国主導の制裁措置に従い、北朝鮮政府の収入源を絶つ方向に動いている。

クウェート、カタール、アラブ首長国連邦は昨年、北朝鮮の労働者のビザ更新を停止したと発表した。

ロシアも同様の措置を講じてきており、数十年にわたってロシアに派遣される北朝鮮の労働者の数は減っている。


 林業が盛んなロシア東部のアムール州で出稼ぎをしている北朝鮮人を顧客としている弁護士、リュボフ・タタレッツ氏は「新規の

労働者は来ていない」と述べた。北朝鮮政府に対する制裁措置を監視している国連の委員会が昨年9月に公表した報告書には、

アンゴラ、コンゴ民主共和国、ナミビア、シリア、タンザニア、ウガンダで北朝鮮人が働いていたが、それですべてではないと

記されいる。

 

モンゴル首都ウランバートルの建設現場で働く北朝鮮の労働者

 北朝鮮の労働者を追放しようという国際的な動きによって浮かび上がったのは、窮状が数十年に及んでいる北朝鮮をどうにか

支えてきた奇妙な同盟関係である。国連の推定によると、北朝鮮の労働者海外派遣プログラムの最盛期にあった2015年、北朝鮮は

最大15万人を海外(特に冷戦時代に北朝鮮政府と友好関係にあった旧共産圏国)に派遣していたという。北朝鮮は年間20億ドル

(約2170億円)の収入をもたらすこうした事業のおかげもあって、数々の制裁措置を乗り越えてきた。


 こうした出稼ぎ労働には長時間の作業、限られた行動範囲、危険な条件などが伴う。ただポーランド政府やその他の国の政府は

数年間、ある主張を展開してきた。北朝鮮の共産主義的独裁政権を終わらせるには、北朝鮮国民を外国、特にこうした独裁政権を

転覆させた国に来させることが有効な手段であると。


 ポーランドの指導者の多くは北朝鮮の指導者と互いに理解し合えると感じていた。2007年から2014年にかけてポーランドの外相を

務め、両国の関係拡大に貢献したラドスワフ・シコルスキ氏は「彼らの歴史的な経験の一部は、ポーランドのそれとあまりかけ離れて

いない」と話す。「彼らは米国に対して非常に懐疑的だが、ポーランドに対しては警戒していない」


 ある高級外交官によると、多くの場合、ポーランドの外交官は北朝鮮人を雇うと分かっている企業に対して個人的にロビー活動を

行い、書類の手配まで行ってきたという。

 

グダニスク造船所で溶接する北朝鮮の労働者 

 今やポーランドの公的立場は変わった。国連決議、外交圧力、北朝鮮人の労働条件を巡る国民の怒りの声などに後押しされ、

ポーランド政府は2016年にビザの発給を停止した。先月の法案可決はまだ残っている数百人に関して、短期ビザの期限が来れば、

そのほぼ全員が強制退去させられることを意味している。一部は亡命を要請し、難民として欧州に残ることを希望した人々

(2015年以来で300万人に達している)に加わる可能性もあるが。


 ポーランド政府は2010年から2016年まで、毎年数百人の北朝鮮人に労働許可書を発行してきた。ポーランドはその見返りとして

北朝鮮への特別なアクセスを享受した。駐北朝鮮ポーランド大使は、北朝鮮国内を自由に車で移動し、同国の謎めいた若き指導者、

金正恩朝鮮労働党委員長と会うことさえ許された。


 しかし昨年暮れ、ポーランドは国際社会の圧力を受け、北朝鮮政策を維持するのは不可能なことに気付いた。

新政権は昨年7月にポーランドを訪問したトランプ大統領の機嫌を取ろうと必死だった。9月には国連安保理が北朝鮮の出稼ぎ労働者の

受け入れを禁止。3カ月後、ポーランドは議会の迅速な採決でこれまでの慣行に終止符を打った。