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<ゲノム編集>独占告白!ゲノム編集双子を誕生させた中国人学者の苦しい「言い分」。 米国人協力者も登場、驚愕の大型ルポ!

2018-12-08 05:26:05 | 遺伝子組換え、操作・ライフ科学

独占告白!ゲノム編集双子を誕生させた中国人学者の苦しい「言い分」

米国人協力者も登場、驚愕の大型ルポ!

2018/12/07   https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58823


ゲノム編集国際会議で講演にのぞむ賀建奎・南方科技大学副教授


許されざる行為ではないのか──。世界を騒然とさせた「ゲノム編集赤ちゃん」のニュース。

誕生させた中国人科学者は発表前に米「AP通信」の独占インタビューに応じていた。

驚くべき大型レポートを緊急全訳する。


ある中国人研究者が、「世界初となるゲノム(遺伝子)編集ベビーを誕生させた」と主張している。

この赤ちゃんは、11月に生まれた双子の女児で、そのDNAの操作には、生命の設計図そのものを書きかえる

ことができる、新しい強力なツールを用いたという。


もしこれが本当の話なら、科学や倫理の面であまりに飛躍しすぎた行為だといえる。


ある米国の研究者が「中国でこの研究に参加した」と証言しているが、米国ではこうしたゲノム編集は

禁止されている。DNAの変化が何世代にもわたって受け継がれる可能性があることや、他の遺伝子が

傷つくおそれがあることが理由だ。

主流派の科学者のあいだでは、「この遺伝子編集は試みるには危険すぎるものだ」という意見が大勢を

占めており、この報道をうけて「人体実験だ」として非難する声もある。

 

まだ証拠は示されていない

この研究者は、広東省深セン市の賀建奎(が・けんけい、He Jiankui)氏だ。

賀氏は、7組の夫婦に不妊治療を実施した際に、胚の遺伝子を操作し、これまでに1組が妊娠したと語っている。


彼自身の目標は、遺伝性疾患の治療や予防ではないという。「将来的なHIVウイルス(後天性免疫不全症候群

〈AIDS〉の原因ウイルス)感染への抵抗力という、生まれつき持っている人が少ない形質を与えようと

することです」と説明した。


賀氏は、双子の両親が身元の公表やインタビュー取材を拒否しているとし、両親の居住地や、ゲノム編集が

実施された場所については明らかにできないと語っている。


賀氏の主張には、第三者による裏付けはない。さらに、他の専門家が査読する学術ジャーナルでの

論文発表もしてない。


彼は今回の研究について、11月26日に香港で、翌日から始まるゲノム編集国際会議の主催者に語ったが、

それに先だってAP通信の独占インタビューでも明らかにした。

 

賀氏はAP通信に「これが世界初となるだけでなく、前例となることに、強い責任を感じています」と語った。

こうした科学研究を認めるか、あるいは禁止するかという点については、

「次にすべきことは社会が決めるでしょう」と述べている。


世界から殺到する非難の声

一部の科学者は、賀氏の主張を耳にして愕然とするとともに、強く非難している。


ペンシルバニア大学のキラン・ムスヌル博士は、ゲノム編集の専門家で、遺伝学分野の学術ジャーナルの

エディターもつとめている。博士は、この研究を「受け入れがたいこと」とし、

「道徳的にも倫理的にも正当化できない人体実験にあたります」と語っている。


「これはあまりにも時期尚早にすぎる」と語るのは、カリフォルニアにあるスクリプス・リサーチ・

トランスレーショナル・インスティチュートのエリック・トポル博士だ。

「私たちが扱っているのは、ヒトの操作説明書です。この件はとても重大です」


一方、著名な遺伝学者であるハーバード大学のジョージ・チャーチ教授は、自らが「増加しつつある重大な

公衆衛生上の脅威」と呼ぶHIVへの対応として、ゲノム編集の試みを擁護している。

チャーチ教授はその目的について、「正当化できると考えています」と述べた。

ハーバード大学医学部ジョージ・チャーチ教授。ヒトゲノム解析計画を立ち上げ、近年では「マンモス復活プロジェクト」でも知られる、遺伝学界の第一人者だ 

 

ゲノム編集は成人にしか許されないのか

近年、体をつかさどるDNAの鎖である遺伝子を比較的簡単に編集する技術として、

クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)が発見された。これはDNAを操作することで、必要な遺伝子を

追加したり、問題の原因となる遺伝子を無効にしたりすることが可能なツールだ。


最近になってようやくクリスパー・キャス9は人間に対しても試みられるようになった。しかしその対象は、

命に関わる病気の治療が必要な成人だけであり、この場合の遺伝子の変化は患者本人に限られる。


精子や卵子、胚の遺伝子の編集はそれとは異なり、遺伝子の変化が未来の世代に受け継がれる可能性がある。

そのため米国では、実験室内での研究目的以外には認められていない。


一方、中国では、ヒトのクローン作成は法律で禁止されているが、ゲノム編集は明確に禁止されてはいない。


賀建奎氏(通称「JK」)は、米国のライス大学とスタンフォード大学で学んだ後、中国に帰国して、

深センの南方科技大学に研究室を開いた。さらに深センでジェネティクス企業2社も経営している。


同大学は、賀氏の研究が「学術研究の倫理や基準に著しく違反する」として、調査を検討している。


賀氏の広報担当者は、同氏が今年初めから教育活動から離れているが、いまも教員であり、同大に研究室が

あることを確認している。

 

HIV感染者への差別が背景に?

賀氏は数年にわたって実験室内でのマウスやサル、ヒトの胚のゲノム編集を実践してきており、自らの

手法について「複数の特許を申請中だ」と語った。


さらに、HIV関連の胚遺伝子を編集することにした理由として、HIV感染が中国で大きな問題になっているこ

とをあげた。


賀氏が目指したのは「CCR5遺伝子」を無効にすることだ。この遺伝子が作り出すタンパク質は、

AIDSの原因であるHIVウイルスを細胞内に侵入させる入り口になる。


プロジェクトの参加者は、男性が全員HIV陽性、女性が全員陰性だったが、「今回のゲノム編集は、

わずかにある感染のリスクを防ぐことがねらいではありませんでした」と賀氏は語る。

男性被験者からの感染は標準的なHIV治療薬によって十分に抑えられているし、遺伝子操作をともなわずに

子どもへの感染を防ぐ簡単な方法もある。

実際のねらいは、HIVの問題を抱えているカップルに、彼らの子どもを同じ運命から守る機会を与える

ことだった。


賀氏は、北京に拠点を置くAIDS患者擁護団体「白樺林」を通じて、研究に参加するカップルを募集した。

「白樺」の偽名で通っている同団体代表はAP通信に対し、「HIVへの感染が明らかになった場合に、

職を失ったり、医療を受けるのが困難になったりするのは珍しくないことだ」と語っている。

 

実際にHIVへの感染は食い止められるのか

賀氏は、今回の研究を次のように説明した。


ゲノム編集は、体外受精、つまり実験室の培養皿で受精する際に実施された。まず精子を「洗浄」して、

HIVが潜んでいる可能性がある精液を取り除いた。次に、1個の精子を1個の卵子に注入して、胚を作り出した。

その後、胚にゲノム編集ツールが注入された。


受精後3日から5日に、胚から少数の細胞を採取し、編集の状態をチェックした。カップルは妊娠のために、

編集した胚と編集していない胚のどちらを使うか選ぶことができた。


全体としては、22個の胚のうち16個が編集され、6回の胚移植で11個の胚が使われた。

その結果、双子の妊娠にいたったと賀氏は説明している。


検査の結果、この双子の1人では、ねらった1対の遺伝子の両方が改変されていたが、もう1人では片方しか

改変されていないことがわかった。また他の遺伝子を傷つけた証拠は見られなかったという。


改変された遺伝子が1個の場合、依然としてHIVに感染する可能性がある。ただし実際に感染した場合でも、

病状の進行が遅くなることが、限られた範囲の研究によって示されている。


だが、賀氏がAP通信に提供した資料を検討した数名の科学者は、「これまでの検査が不十分なため、

編集が有効だと述べることも、損傷の可能性を除外することもできない」と語っている。


この科学者らは、編集が不完全であることや、双子の少なくとも1人はさまざまな変化を持つ細胞の

パッチワークのようにみえることを示す証拠についても指摘している。

 

結局は人体実験なのか

ハーバード大学のチャーチ教授は、特定の細胞の一部しか改変されていなければ、HIV感染がやはり起こり

うるので、「まったく編集していないようなものだ」と述べている。


チャーチ教授とペンシルバニア大学のムスヌル博士は、使われた胚のうちの1個について、

それを「妊娠のために使用してよい」と判断したことを問題視している。中国人研究者らが、

「その胚の対象遺伝子の両方が改変されていないことを事前に知っていた」と言っているためだ。


「その子どもにはHIVへの防御という点ではほぼ何の利益もなかった。さらにその子どもを安全上の

あらゆる未知のリスクにさらしている」(ムスヌル博士)


その胚を使用したことは、研究者らが「病気を回避することよりも、編集技術をテストすることに

重きを置いていた」ことを示唆している、とチャーチ教授はみる。

 

仮にゲノム編集の効果が完全だったとしても、通常のCCR5遺伝子を持たない人々では、

ウエストナイル熱ウイルスなど他のウイルスに感染するリスクや、インフルエンザで死亡するリスクが

高くなる。


「HIV感染を防ぐ方法は数多くあり、感染しても治療可能であることを踏まえれば、こうした他の医学的

リスクが懸念点として残る」とムスヌル氏は述べている。


賀氏が語った研究の進め方にも疑問がある。賀氏がこの研究について、中国の臨床試験登録機関に

公式に通知したのは11月8日で、同氏が研究を開始したと語った時期からかなり経過している。


はたして被験者たちは、研究の目的や、潜在的な危険と利益を十分に理解していたのか。そのあたりも

はっきりしていない。たとえば、同意書ではこのプロジェクトを「エイズワクチン開発」プログラムと

呼んでいた。

 

米国人科学者の証言

このプロジェクトをめぐって、中国で賀氏に協力した米国の科学者がいる。

ヒューストンのライス大学在籍時に賀氏の指導教官だった、物理学と生物工学が専門の

マイケル・ディーム教授だ。ディーム教授は賀氏の会社2社の「株を少しばかり」保有しており、

2社の科学顧問の一員でもある。


ディーム教授は、参加予定者が同意したときに自分も中国にいたと表明したうえで、被験者たちがリスクを

理解できたのは「間違いない」と思っていると語った。


さらにディーム教授は、ゲノム編集をワクチンと似たものだとみなしている。

「平易な言葉で言うとそうなるのです」(ディーム教授)

だが、ディーム教授と賀氏はどちらも物理学の専門家だ。ヒトでの臨床試験の経験はない。


賀氏は、「私自身が今回の研究の目標を明らかにしていますし、被験者たちに対しても、胚遺伝子の編集は

これまでおこなわれたことがなく、リスクをともなうことを説明しました」と語った。


さらに、「このプロジェクトを通じて妊娠したすべての子どもには保険を提供する予定ですし、

子どもが18歳になるまで、そして成人後に本人の同意があればさらに長く、医学的なフォローアップを

計画しています」と語った。

 

人工授精を試みたのは発生学者

今回の被験者たちは、研究への参加の条件として、無料の不妊治療を提供されるはずだった。


だが被験者たちの今後の妊娠は、今回の安全性が分析され、専門家による議論が終わるまで保留にされる。

つまり彼らは、いったん「世界初」の試みが達成されたら、申し込んだはずの不妊治療が実質的に

受けられないかもしれないのだ。そして、彼らは事前にそのことを伝えられてはいない、と賀氏も認めている。


賀氏は、深セン和美婦児科医院にプロジェクトの承認を求め、認められた。賀氏は、「4つの病院から自らの

研究や妊娠の試みのために胚を提供された」と述べたが、深セン和美婦児科医院はそのなかに含まれていない。


その他の病院の一部スタッフは、研究の性質について知らされていなかった。賀氏とディーム教授は

この点について、「一部の被験者のHIV感染が公にされないようにするためだった」と述べた。


深セン和美婦児科医院で倫理委員会のトップを務める管理者の林志同氏は、「私たちは、これが倫理的で

あると考えています」と述べている。

「HIVを含む可能性のあるサンプルを扱った医療スタッフはみな、そのことについて認識していました」と

林氏は語った。


一方、賀氏の研究室に所属する発生学者の秦金州氏はAP通信に対して、

「妊娠の試みの一部では、自分が精子を洗浄し、ゲノム編集ツールを注入しました」と認めている。


賀氏は、研究に参加したカップルは倫理問題の専門家ではないが、「何が正しくて、何が間違っているかに

ついては、同じくらい深く理解しています。自分の命が懸かっているからです」とした。

くわえて賀氏は「これが家族やその子どもたちを救うものになると信じています」と述べた。


被験者たちに望まれない副作用や被害が生じてしまったらどうするのか。賀氏はインタビューをこう結んだ。

「私は彼らと同じ痛みを味わうことになり、それは私自身の責任になります」



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