WHOがトランス脂肪酸の排除を計画
戦略的行動指針“REPLACE”を発表
2018年05月21日 06:10 MedicalTribune
世界保健機関(WHO)は5月14日に、世界の加工食品から工業的に製造されたトランス脂肪酸を段階的に排除するための
戦略的行動指針を発表した。WHOによると、トランス脂肪酸の摂取による心血管疾患で毎年5万人超が死亡していることから、
トランス脂肪酸を排除することは人々の健康と生命を守るための鍵になるという。
WHO事務局長のTedros Adhanom Ghebreyesus氏は「加工食品に含まれるトランス脂肪酸を排除ための指針"REPLACE"を
実行することを各国の政府に要求する。"REPLACE"の6つの戦略的行動を実行することで、食品からトランス脂肪酸を排除し、
世界的な心血管疾患との戦いに勝利することができる」と述べている。
非感染性疾患死の減少を推進
工業的に製造されたトランス脂肪酸は、マーガリンなどの固形植物油やスナック菓子、焼成食品、揚げ物などに含まれる。
製造業者は他の油よりも保存期間が長くなることからトランス脂肪酸を使用するが、風味やコストを変えずにより健康的な油を
使用することもできる。
"REPLACE"は、加工食品から工業的に製造されたトランス脂肪酸を迅速、完全、持続的に排除する6つの戦略的行動から成る。
●REview:工業的に製造されるトランス脂肪酸の原材料および必要な政策転換について展望する
●Promote:トランス脂肪酸をより健康的な脂肪や油に切り替える
●Legislate:トランス脂肪酸を排除するための規制措置を講じる
●Assess:食料品に含まれるトランス脂肪酸の量およびトランス脂肪酸の消費量の変化を評価、監視する
●Create:政策立案者、生産者、供給者、国民にトランス脂肪酸が健康に及ぼす悪影響に関する認識を促す
●Enforce:政策と規制のコンプライアンスを強化する
幾つかの高所得国では、加工食品に含有できるトランス脂肪酸の量を法的に規制することで排除に成功した。
また一部の国では、工業的に製造されたトランス脂肪酸の主な原料である部分水素添加油脂の使用を全国的に禁止している。
トランス脂肪酸を最初に制限したデンマークでは、加工食品に含まれるトランス脂肪酸の量が劇的に低下し、心血管疾患死は
経済協力開発機構(OECD)加盟国と比べてより急速に減少した。
工業的に製造されたトランス脂肪酸を世界の食料品から排除することは、WHOの2019~23年の戦略的計画である第13回
総合事業計画案(GPW13)の最優先目標の1つとなっている。
GPW13は5月21~26日にジュネーブで開催される第71回世界保健総会の議題にも挙げられている。国際連合は持続可能な
開発目標の一環として、世界の非感染性疾患による死亡を2030年までに3分の1に減少させることを目標としている。
工業的に製造されたトランス脂肪酸を世界的に排除することで、この目標が達成できる可能性があるという。