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【WSJ 社説】ジャパン・アズ・ナンバースリー

2019-12-12 08:53:28 | 日本経済・輸出入

【社説】ジャパン・アズ・ナンバースリー

 2019 年 12 月 11 日 01:44        WSJ   By The Editorial Board

 ――WSJ日本版創刊10周年にあたり、2010年8月17日付の記事を再掲載します

***

 若い読者にとっては信じ難いことかもしれない。ほんの20年前、米国の政界と学界は、日本を

躍進する経済大国とみなしていた。ハーバード大学の学者、エズラ・ボーゲル氏の著書

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は広く読まれ、メディアは、日本は戦争で米国に敗北を喫したが

経済では米国に勝利を収めた、と報じた。

 中国の国内総生産(GDP)が日本を上回り、世界2位の経済大国となったとのニュースは、

こうした見方を皮肉に変えた。この出来事は一世代前には想像すらできなかった。

それでも、日本の1人当たりGDPと生活水準は中国を大きく引き離している。

 


 しかし、チャートが示しているように、両国の成長トレンドに開きがあるのは否定できない。

1990年から2009年までの中国の年間成長率はほぼ10%だ。これに対し、日本は高度経済成長の後、

成長率が2%を大きく下回る水準まで著しく低下した。一方は貧困から急速に抜け出した。

もう一方が陥ったのは、よく言って繁栄を維持しながらのスタグネーションだ。


 アジアにおける形勢逆転の理由と、これが持つ意味合いを考えたい。明らかな教訓は、国家の

豊かさは生得権ではないということだ。国民の才能を解き放つ健全な経済政策を通じて国家は毎年、

繁栄を重ねていく。

 

 中国にとっての突破口は、鄧小平氏による1978年の改革開放経済政策の導入だった。

 当初は農業、後にそのほかの産業が開かれ、中国は格段に企業家精神に富んだ国になった。

08年の本紙のリポートにあるように、GDPに政府が占める割合は78年の31%から2000年代初めに

約11%に縮小した。中国は一方的に関税を引き下げ、世界貿易機関(WTO)に加盟し、国有企業を

改革して競争にさらした。そして、こうした政策がもたらす成長モメンタムの影響を引き続き

享受している。


 一方、日本は反対の方向に動いている。本紙は84年、「ジャパン・アズ・ナンバー・

トゥエンティワン」との見出しの社説を掲載した。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、

日本は政府歳入のGDP比が27%と加盟23カ国中、21番目で、歳出のGDP比は26%と最下位だった。

しかし、もはやそうではない。日本は消費税を導入し、歳出のGDP比は40%に近い。


 不動産と株式バブルが崩壊した90年、世界的に最も長期にわたり、最も高コストのケインズ

主義政策に日本は乗り出した。この政策は、日本の債務をGDPのほぼ200%に押し上げたが、成長に

ほとんど貢献していない。また、日本は郵便貯金制度の改革にも失敗している。


 訪問客にとって日本は依然として裕福な国に見えるだろう。しかし、相対的な凋落は著しい。

ヘリテージ財団のデレク・シザーズ氏によると、日本の個人所得は今では世界の40位付近だ。

日本人の平均所得は(米国で最も貧しい)ミシシッピ州の住民よりも少ない。失われた世代が

事態を悪化させている。


 単に政策のみならず、国家の意思にも開きがある。日本人は第二次世界大戦での敗北の後、

躍起になって復興に取り組んだ。日本の社会的一体性と企業の内部統制は、世界でも最も優れた

企業を作り出した。こうした日本企業は現在でも世界の健全性に一役買っている。


 現在、日本の人口は高齢化している。老齢人口が多くなれば、リスクを回避する傾向が強まる。

米国やオーストラリアと異なり、若年労働者の供給源である移民を日本は歓迎していない。

日本の政治システムは、持続的な成長を目指す経済政策に回帰する能力がないようだ。


 中国は今日、より力強く自信に満ちた国家だ。国民は失われた数世紀を取り戻そうと努力し、

地域大国として再び主張を始めた。中国は(一人っ子政策のせいで)高齢化の問題に直面しているが、

農村部から都市部に向かう数千万人の出稼ぎ労働者が若い労働力を提供している。


 問題は、中国が一党独裁の限界に突き当たるなか、素晴らしい成長を維持することが可能で

あるかどうかだ。金融危機が米国型経済モデルを傷つけるなか、中国は「国家主導型」の世界企業を

追求している。

 

 中国通で知られるコンサルタント会社APCOワールドワイドのジェームズ・マグレガー氏は

米商工会議所の最近のリポートで、中国は主要7地域において国内企業を競争から保護する政策を

打ち出し、市場経済からの離脱を図っている、と指摘。これにより、国内で効率性と革新性が

後退するとともに、世界各国で反感が芽生える可能性がある、との見方を示した。政治主導の資本は

一時は花を咲かせるが、市場規律の欠落により衰退を余儀なくされることは目に見えている。


 それでも、中国の経済面での躍進は世界の繁栄に寄与している。日本の戦後の復興時と同様だ。

対照的に、日本の20年間のスタグネーションは日本人のみならず世界にとっても悲劇だった。

世界の繁栄はゼロサムゲームでない。各国が貢献することが大切だ。


 米国民にとっての朗報は、他国の順位に変動があっても、少なくとも08年までは米国のGDPの

順位は不動であったことだ。中国は躍進しているが、米国の経済規模はこれを凌駕する。

日本と同じ政策の過ちを犯し、日本の運命をたどることを米国は避けねばならない。

 

 
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