日本の原子力政策、米国が介入すべき時
増え続ける日本のプルトニウム、トランプ政権は動けるか
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個人同士の友情関係と同じように、友好国同士も相手が自己破滅的な行為をしている場合、それを阻止するため時に介入が必要と
なる。日本の原子力政策も手遅れになる前に米国側からの支援を必要としており、その一例だと言えるだろう。
日本は1300発以上の核弾頭を製造するのに十分な量のプルトニウムを既に保有している。表向きには、このプルトニウムは原子炉
の燃料として使われるものだ。しかし2011年に発生した福島第1原発での事故を受け、同国の原子炉はほぼすべてが停止した状態
にあり、再稼働に向けた動きもかなり遅い。その結果、日本がプルトニウムを消費するような状況はほとんどない。
だが同国のプルトニウム備蓄量はさらに増えるとみられる。日本の政治指導者たちは、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する
六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)を稼働させるよう国内で強いプレッシャーを受けている。施設が速やかに稼働しない場合、六ヶ所
村は、処理待ち状態の数千トンの使用済み核燃料を移転するよう求める可能性もある。
増えていく一方のプルトニウムは、核不拡散をうたう日本の政策と矛盾するものだ。安倍晋三首相は、こうした備蓄プルトニウムがテ
ロリストに奪われるリスクがあることを認識している。日本のプルトニウムは中国との緊張感も高め、信用ならない国家が兵器転用可
能な核物質を自ら蓄積しようとするにあたり、あしき前例を作ることにもなる。
幸運なことに、米国はこの問題を解決する手段を持っている。ただトランプ政権が行動するのに与えられた時間は多くない。
もともと日本の核技術はそのほとんどが米国から取得したものであり、日本政府は米政権の同意を得ずに使用済み燃料からのプル
トニウム抽出(再処理)を実施しない協定になっていた。その後、数年に及んだ交渉の結果、1988年7月に効力を持った現行の原子
力協定の下、米国は日本による再処理をを包括的に認めた。
この協定は、2018年7月までに日米が新たな協定を結ばない場合、既存の合意内容が継続されるとしている。1988年の合意が日
本にとって有利なものであるため、日本は再交渉を避けようとしている状況だ。
言ってみれば、これは交渉において米国側に強いレバレッジがあることを意味し、米政権はこれ以上日本のプルトニウム備蓄量が増
えることを避けるため、3段階の確実なステップを推し進める立場にいると考えられる。
まず第一に、日本はプルトニウムから原子炉の燃料を作る別の施設が稼働可能になるまで、再処理工場の稼働は行わないことに同
意するべきだ。この新たな施設抜きに、日本は自らが作り続けるプルトニウムを平和的に利用し続ける方法はない。
次に、日本はプルトニウムの供給が需要を確実に上回らないような方法で再処理施設を稼働させることに同意すべきだ。再処理施
設は日本が利用できるよりもはるかに多い年間8トンのプルトニウムを分離できるよう設計されている。その量は同国がすでに備蓄し
ているプルトニウムの量11トンに迫る。このため日本政府は今後備蓄量が増えないよう、設計よりも控えた形で再処理施設を稼働す
ることにコミットすべきだ。
第三に、日本はプルトニウムの分離とその利用までの期限(おそらく5年間)を設けるべきだ。日本にはプルトニウムを過剰に製造し
ない政策があるが、その方針は強化されるべきだろう。日本政府はプルトニウムを利用する計画があれば、それがいくら先のことであ
ろうとも、備蓄量が過剰であるとは考えないからだ。
官僚的な対応でこの問題を先送りすることは、米国が原子力協定をめぐる交渉でレバレッジを失う大きなリスクとなる。米政府からす
れば2018年7月はまだ当分先のことに見えるだろうが、外交的な視点で見れば、これはすでに喫緊の課題だ。
原子力協定の交渉は極めて複雑であり、一般的には数年かかる。政策の立案から実行までを担う米国務省の関係者の中でも、軍
備管理と国際安全保障を担当する国務次官、そして国際安全保障・不拡散担当国務次官補は、まだ議会に承認されていないどころか
指名すらされていない。
トランプ政権は素早く動かなければ、現行の合意を無条件で延長する以外に選択肢はほぼなくなる。それはつまり、日本の原子力政
策を改善する一世一代の機会を失うことを意味する。