大塚英志原作で戦後の昭和を描いた2作品「アンラッキーヤングメン」と「東京事件」が同時期にコミック化された。
この2作品は戦後の混沌とした中で実際に起きたいくつかの事件や事故をベースに昭和45年の三島由紀夫自決のあたりまでが描かれ、偽史的なフィクションとしてまとめられている。特に、三億円事件と三島由紀夫が絡んだストーリーはどちらの作品にも登場する。
ただこの2作品は同時代を描きながらも似て非なるものである。
「アンラッキーヤングメン」は、角川書店のエセ(?)文芸誌「野生時代」に連載された作品で、作画は藤原カムイが担当している。藤原カムイは荒俣宏の「帝都大戦」や押井守の「犬狼伝説」、最近では矢作俊彦の「気分はもう戦争2」などを描きつつ「ドラゴンクエスト」シリーズで少年誌でも有名である。
藤原カムイの画力は大友克洋の繊細な描写と鳥山明のクリエイティブなマンガ的ユーモアのそれぞれをバランスよく持ち合わせているように思う。
「アンラッキーヤングメン」の主要な人物はすべて実在されたとする人物を投影する。連続射殺魔事件の永山則夫ことN、連合赤軍事件の永田洋子ことヨーコ、三島由紀夫こと作家M、そして「3億円事件」のシナリオを書き、本作の語り部として8ミリカメラを回す漫才師Tは北野武を投影している。
そうして、3億円事件を背景に、1968年前後の、文字どおり幸福でない若者たちの物語が淡々と綴られる。犯罪を犯した者、これから犯す者が螺旋階段を昇っていく、たどりつかない場所をめざして…。それを石川啄木の詩がBGMのようにまた淡々と流れるのだ。
この作品は、実は時代性を語っているようで、しかしながらいたって抽象的な、それでいて誰の時代にも存在するある種淡い記憶のなにものでもない。ぼくらはいわゆる若気の至りの中で、虚無感の中を邁進したのではなかったか…
そういう意味で、だれもが共感できる作品に仕上がっていると思う…そう思うのはぼくだけかもしれないけど…
もうひとつの「東京事件」は、「多重人格探偵サイコ」が連載されていた「少年エース」の増刊号として、主にウルトラマンシリーズの円谷プロと仮面ライダーシリーズの石森プロに代表される特撮系のヒーロー物を扱ったマンガ雑誌「特撮エース」で、おそらく読者の意に反した形で連載されていたと思われる作品である。
この作品は、確かに過去の実際の迷宮入りした事件を取り扱ってるものの、その設定は、同じ大塚英志の作品「黒鷺死体宅配便」と同じで、5人いる能力者(ただし1名は特殊能力なし)がタイムトラベルをベースに事件解決に挑む、といったもの。いわゆるSFミステリーとなっている。
しかしながら、作画の菅野博之の画力は前述の藤原カムイを彷彿とさせるほど、劇画チックな細かい描きこみはリアルさを演出している。菅野博之で調べると著名なところでは「地球防衛企業ダイ・ガ-ド 」。アニメにもなったこの作品の、マンガの作画とアニメでのキャラクター原案でクレジットされている。ただぼくのリアルなアニメではないため、あまり記憶にはないのだけど…
「東京事件」について戻るとして、この作品が少年誌において、昭和40年代を舞台にレトロなSFミステリーとなっていることは前述したとおりだが、扱われる事件にぼくはちょっと心が躍った。それは、ぼくが知らない非常に興味深いものだったからだ。
「草加次郎事件」(昭和37年)「もく星号事件」(昭和27年)「三億円事件」(昭和43年)「光クラブ事件」(昭和23年)「三島事件」(昭和45年)これらは実際に日本の昭和期に起こった事実である。これらの詳細については、ぜひマンガを読んでいただきたい。
こうして、大塚英志の昭和40年代におけるヒトククリがひとつ終わった気がする。
そして(小説版とドラマ版において)連合赤軍事件で誕生したことになっている雨宮一彦の物語が再開する。
この2作品は戦後の混沌とした中で実際に起きたいくつかの事件や事故をベースに昭和45年の三島由紀夫自決のあたりまでが描かれ、偽史的なフィクションとしてまとめられている。特に、三億円事件と三島由紀夫が絡んだストーリーはどちらの作品にも登場する。
ただこの2作品は同時代を描きながらも似て非なるものである。
「アンラッキーヤングメン」は、角川書店のエセ(?)文芸誌「野生時代」に連載された作品で、作画は藤原カムイが担当している。藤原カムイは荒俣宏の「帝都大戦」や押井守の「犬狼伝説」、最近では矢作俊彦の「気分はもう戦争2」などを描きつつ「ドラゴンクエスト」シリーズで少年誌でも有名である。
藤原カムイの画力は大友克洋の繊細な描写と鳥山明のクリエイティブなマンガ的ユーモアのそれぞれをバランスよく持ち合わせているように思う。
「アンラッキーヤングメン」の主要な人物はすべて実在されたとする人物を投影する。連続射殺魔事件の永山則夫ことN、連合赤軍事件の永田洋子ことヨーコ、三島由紀夫こと作家M、そして「3億円事件」のシナリオを書き、本作の語り部として8ミリカメラを回す漫才師Tは北野武を投影している。
そうして、3億円事件を背景に、1968年前後の、文字どおり幸福でない若者たちの物語が淡々と綴られる。犯罪を犯した者、これから犯す者が螺旋階段を昇っていく、たどりつかない場所をめざして…。それを石川啄木の詩がBGMのようにまた淡々と流れるのだ。
この作品は、実は時代性を語っているようで、しかしながらいたって抽象的な、それでいて誰の時代にも存在するある種淡い記憶のなにものでもない。ぼくらはいわゆる若気の至りの中で、虚無感の中を邁進したのではなかったか…
そういう意味で、だれもが共感できる作品に仕上がっていると思う…そう思うのはぼくだけかもしれないけど…
もうひとつの「東京事件」は、「多重人格探偵サイコ」が連載されていた「少年エース」の増刊号として、主にウルトラマンシリーズの円谷プロと仮面ライダーシリーズの石森プロに代表される特撮系のヒーロー物を扱ったマンガ雑誌「特撮エース」で、おそらく読者の意に反した形で連載されていたと思われる作品である。
この作品は、確かに過去の実際の迷宮入りした事件を取り扱ってるものの、その設定は、同じ大塚英志の作品「黒鷺死体宅配便」と同じで、5人いる能力者(ただし1名は特殊能力なし)がタイムトラベルをベースに事件解決に挑む、といったもの。いわゆるSFミステリーとなっている。
しかしながら、作画の菅野博之の画力は前述の藤原カムイを彷彿とさせるほど、劇画チックな細かい描きこみはリアルさを演出している。菅野博之で調べると著名なところでは「地球防衛企業ダイ・ガ-ド 」。アニメにもなったこの作品の、マンガの作画とアニメでのキャラクター原案でクレジットされている。ただぼくのリアルなアニメではないため、あまり記憶にはないのだけど…
「東京事件」について戻るとして、この作品が少年誌において、昭和40年代を舞台にレトロなSFミステリーとなっていることは前述したとおりだが、扱われる事件にぼくはちょっと心が躍った。それは、ぼくが知らない非常に興味深いものだったからだ。
「草加次郎事件」(昭和37年)「もく星号事件」(昭和27年)「三億円事件」(昭和43年)「光クラブ事件」(昭和23年)「三島事件」(昭和45年)これらは実際に日本の昭和期に起こった事実である。これらの詳細については、ぜひマンガを読んでいただきたい。
こうして、大塚英志の昭和40年代におけるヒトククリがひとつ終わった気がする。
そして(小説版とドラマ版において)連合赤軍事件で誕生したことになっている雨宮一彦の物語が再開する。