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このマンガを詠め!サブカルエンタな道

メジャー、マイナー限らず個人的にマンガやアニメをご紹介。記憶の片隅で残るものがメインかな・・・

昭和40年代を描いた大塚英志の2作品

2007年09月05日 00時48分04秒 | 大塚英志
大塚英志原作で戦後の昭和を描いた2作品「アンラッキーヤングメン」と「東京事件」が同時期にコミック化された。
この2作品は戦後の混沌とした中で実際に起きたいくつかの事件や事故をベースに昭和45年の三島由紀夫自決のあたりまでが描かれ、偽史的なフィクションとしてまとめられている。特に、三億円事件と三島由紀夫が絡んだストーリーはどちらの作品にも登場する。
ただこの2作品は同時代を描きながらも似て非なるものである。

「アンラッキーヤングメン」は、角川書店のエセ(?)文芸誌「野生時代」に連載された作品で、作画は藤原カムイが担当している。藤原カムイは荒俣宏の「帝都大戦」や押井守の「犬狼伝説」、最近では矢作俊彦の「気分はもう戦争2」などを描きつつ「ドラゴンクエスト」シリーズで少年誌でも有名である。
藤原カムイの画力は大友克洋の繊細な描写と鳥山明のクリエイティブなマンガ的ユーモアのそれぞれをバランスよく持ち合わせているように思う。
「アンラッキーヤングメン」の主要な人物はすべて実在されたとする人物を投影する。連続射殺魔事件の永山則夫ことN、連合赤軍事件の永田洋子ことヨーコ、三島由紀夫こと作家M、そして「3億円事件」のシナリオを書き、本作の語り部として8ミリカメラを回す漫才師Tは北野武を投影している。
そうして、3億円事件を背景に、1968年前後の、文字どおり幸福でない若者たちの物語が淡々と綴られる。犯罪を犯した者、これから犯す者が螺旋階段を昇っていく、たどりつかない場所をめざして…。それを石川啄木の詩がBGMのようにまた淡々と流れるのだ。
この作品は、実は時代性を語っているようで、しかしながらいたって抽象的な、それでいて誰の時代にも存在するある種淡い記憶のなにものでもない。ぼくらはいわゆる若気の至りの中で、虚無感の中を邁進したのではなかったか…
そういう意味で、だれもが共感できる作品に仕上がっていると思う…そう思うのはぼくだけかもしれないけど…

もうひとつの「東京事件」は、「多重人格探偵サイコ」が連載されていた「少年エース」の増刊号として、主にウルトラマンシリーズの円谷プロと仮面ライダーシリーズの石森プロに代表される特撮系のヒーロー物を扱ったマンガ雑誌「特撮エース」で、おそらく読者の意に反した形で連載されていたと思われる作品である。
この作品は、確かに過去の実際の迷宮入りした事件を取り扱ってるものの、その設定は、同じ大塚英志の作品「黒鷺死体宅配便」と同じで、5人いる能力者(ただし1名は特殊能力なし)がタイムトラベルをベースに事件解決に挑む、といったもの。いわゆるSFミステリーとなっている。
しかしながら、作画の菅野博之の画力は前述の藤原カムイを彷彿とさせるほど、劇画チックな細かい描きこみはリアルさを演出している。菅野博之で調べると著名なところでは「地球防衛企業ダイ・ガ-ド 」。アニメにもなったこの作品の、マンガの作画とアニメでのキャラクター原案でクレジットされている。ただぼくのリアルなアニメではないため、あまり記憶にはないのだけど…
「東京事件」について戻るとして、この作品が少年誌において、昭和40年代を舞台にレトロなSFミステリーとなっていることは前述したとおりだが、扱われる事件にぼくはちょっと心が躍った。それは、ぼくが知らない非常に興味深いものだったからだ。
「草加次郎事件」(昭和37年)「もく星号事件」(昭和27年)「三億円事件」(昭和43年)「光クラブ事件」(昭和23年)「三島事件」(昭和45年)これらは実際に日本の昭和期に起こった事実である。これらの詳細については、ぜひマンガを読んでいただきたい。

こうして、大塚英志の昭和40年代におけるヒトククリがひとつ終わった気がする。
そして(小説版とドラマ版において)連合赤軍事件で誕生したことになっている雨宮一彦の物語が再開する。

気分はもう戦争~アンラッキーヤングメン

2006年02月18日 23時36分36秒 | 大塚英志
「気分はもう戦争」は、漫画アクションに連載され、81年に単行本が発売されたたマンガです。
大友克洋と矢作俊彦が、自身もキャラクターにして、ソ連とアメリカとの冷戦の最中に、中国とソ連の国境付近で大国間紛争が起こり、日本が戦争に突入してしまった世界での群像劇をオムニバスと続き物とがごっちゃになりながら、大友・矢作の作家コンビと、左翼と右翼とアメリカ人傭兵の3人組とがハチャメチャやってくれます。

とにかく、「ぼくたちは戦争がしたいんだあ」というアイロニーをシンプルに受け止めて、シンプルに読むのがベストな傑作です。

そして、そのリメイクとして登場したのが、藤原カムイ版の「気分はもう戦争2」
もちろん原作は矢作俊彦です。
多重人格探偵サイコと同じ少年エースで連載されました。
なぜに少年誌というのもありますが、サイコが連載されてるぐらいだから、まあいいかって感じ。
今回は、911よろしく、カリフォルニア、フロリダ、パリ、そして東京のディズニーランド(ディズニーワールド)がテロ攻撃にあいます。そして、日米同盟である安保が崩れたことにより、日米の関係がおかしくなります。そんな中で、韓国と日本が対馬を舞台に戦争を始めます。東京ではテロも勃発。そして、リストラされたスズキさんと謎の女子高生が戦争に巻き込まれていきます。というところまでで、単行本の1巻出たんですが、その後休載となって音信不通です。
続き早く見たいっす。

そして、今回のメインは「アンラッキー・ヤングメン」
大塚英志と藤原カムイのおそらく初めての顔合わせではないでしょうか。角川の「野生時代」というエセ文芸誌に連載されてるんですが、ストーリーはなかなか秀逸で、60年代に起こった3億円事件などの実際の事件や時事ネタを通して、当時の若者(ヤングメン)のなんだかもどかしい日常が描かれます。

これまで柳田国男や折口信夫のサーガをやってきましたので、この辺の話はお得意ですね。

日本赤軍の永田洋子や三島由紀夫などの実在する人物を下敷きにしていますが、タイトルは元ネタは大江の「われらの時代」に出てくるジャズバンドの名前らしく、ここでも大江健三郎がネタとして使われています。

この作品はこれまでの大塚作品の中でもっとも大人っぽい作品となりそうです。かなり文学的で、石川啄木の詩を引用するあたりは、他の大塚作品にない雰囲気さえあります。しかし、1話のページ数の少なさで一気に読まないとわかりづらいストーリー展開のため、ぜひ早く単行本で見たいものです。

藤原カムイいわく、「いよいよ物語も終盤を迎え、残すところあと数話」らしいので楽しみに待ちたいものです。

多重人格探偵サイコ

2005年09月22日 19時27分21秒 | 大塚英志
この流れなら行けるかも。

大塚英志はグロい死体や犯罪がいっぱい出てくるマンガ「多重人格探偵サイコ」の原作者ですが、大塚英志はおそらくマダラで本来やろうと思ってできなかったメディアミックスのパズルを完成させようとしてるんだと思います。

この作品は、「月刊少年エース」という少年誌に連載されています。
おそらく10代から20代まで(おたくは年齢関係ないけどね)の比較的オタクな青少年向けの雑誌です。アキバ系を代表する雑誌のひとつと言っていいでしょう。

もともと角川書店と大塚英志とは因縁の関係があります(メディアワークスの株問題?とか)。だけど、それも半ば作り物のようにも見えるのだけど、

このマンガには死体がいろんな形で無機質に登場し、サイコサスペンスをより複雑にしています。まあサイコミステリーとかサイコホラーでもいいんだけどね。そんで、このマンガを題材にこれまで小説、テレビドラマ、演劇、ラジオドラマといったメディアミックスを敢行しています。あとはゲームだけすかねえ。

しかしながら、これらのメディアを変えた作品それぞれは、タイトルも含めた基本となる素材が一緒なだけで、ストーリーの連続性や関連性さえもわざと断ち切られています。各メディアはそれぞれ独自の世界観のもとに執り行われているわけです。

ここが今までのメディアミックスと一線を画すことになると大塚英志は考えているのではないでしょうか。

それにしても久々に見たサイコの連載は10ページくらいの中途半端なものだったが、間に合わないからぶつ切りにしてんだろうけど、これも角川に対する嫌がらせっぽいよね。