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須藤甚一郎ウィークリーニュース!

目黒区議会議員・ジャーナリスト須藤甚一郎のウィークリーニュースです。

593号 高校生アーチェリー場死亡事故、遺族が1億3500万円の賠償請求訴訟。どうなる責任問題

2010-07-15 | 記 事
共同通信が、7月15日20:44につぎの記事を配信した。共同通信の記事は、ぼくのブログがきっかけだった。が、取材を進めて、目黒区の行政が発表しなかった損害賠償請求額が、約1億3500万円であることや被告が勤労福祉会館の指定管理者であるアクティオ(株)以外に、加害者の少年や両親などであることをなどを伝えている。

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(共同通信の記事)

アーチェリー事故死で遺族が提訴 元同級生や学校側に

東京都目黒区の区勤労福祉会館で昨年11月、アーチェリー練習中の高2男子生徒=当時(16)=の頭部に同級生の放った矢が刺さり死亡した事故をめぐり、遺族が元同級生の少年や両親らに対し約1億3500万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴していたことが15日、分かった。

ほかの被告は2人の通学先だった私立高校を運営する学校法人や、会館運営委託先の管理会社。
事故をめぐっては警視庁が3月、重過失致死容疑で元同級生を書類送検。学校や会館側については、部としての練習ではなく施設管理上の過失もないと判断、立件を見送っている。

原告側代理人によると、元同級生には不注意で矢を放った責任があるほか、学校側も2人が所属していたアーチェリー部の部員らが現場を練習場所として使うことがあるのを知りながら、校外でも監督者を置くなどの安全対策を取らなかったと主張。
会館側もアーチェリー専門の施設を運営する業者として事故を未然に防ぐ注意義務を怠った、としている。
2010/07/15 20:44 【共同通信】
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●●以下の記事は、須藤が7月15日16:30分に更新したものである。

★高校生アーチェーリー死亡事故の遺族が、賠償請求の訴訟を起こした!

昨年(平成21年)11月、目黒区の勤労福祉会館アーチェリー場で、港区内の私立高校2年生の死亡事故が起きたのは、まだ記憶に鮮明だ。このほど、死亡した生徒の遺族が、目黒区が指定し勤労福祉会館を管理している指定管理者のアクティオ(株)などに対して、損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に提起したのがわかった。

昨日、目黒区の行政は、区議会の常任委員会である生活福祉委員会(注。現在、ぼくが委員長をやっている)に、この件について情報提供した。しかし、目黒区は、区の施設のアーチェリー場であってはならない死亡事故が発生したというのに、訴訟の被告ではないことを理由に、情報提供の内容は極めて杜撰(ずさん)そのもの。その内容を詳しくお伝えするが、その前に昨年の死亡事故を簡単におさらいしておく。

★昨年11月の死亡事故はこうして起きた!

この「ウィークリーニュース」の565号(11月6日)、566号(11月17日)で報告した。が、事故が発生したのは、昨年11月4日。当時の読売新聞は、つぎのような記事であった。

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同級生の矢が額に、アーチェリー練習の高2重体

4日午後4時45分頃、東京都目黒区目黒2の目黒区勤労福祉会館アーチェリー場で、都内の高校2年の男子生徒(17)の発射した矢が、高校2年の男子生徒(16)の額に刺さった。
警視庁目黒署や東京消防庁によると、男子生徒は病院に搬送されたが、意識不明の重体。

同署幹部によると、2人は同じ高校の同級生で、この日は午後4時20分頃からアーチェリーの練習を始めた。事故当時、アーチェリー場には2人しかいなかったという。矢が刺さった男子生徒は、アーチェリーを発射する場所と的を結ぶ通路付近に倒れており、矢を発射する場所からは数メートルしか離れていなかったという。

同区によると、アーチェリー場は同日午後、一般向けに開放されており、事前に講習を受けて登録していれば誰でも利用できたという。
(2009年11月4日23時19分 読売新聞)
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★ずさんな指定管理で事故現場には職員に立会いなし!

被害者の生徒は、残念にも4日後に死亡した。
記事にもあるとおり、アーチェーリーといった危険なスポーツであるのに、事故発生時に職員は誰もアーチェリー場に立ち会っていないのである。そのときに限らず、いつも立ち会わない管理の仕方であったのだ。目黒区は指定管理者のアクティオ社とそんなやり方を「協定書」と交わして合意していたのである。

すでに述べたように、事故が起きた目黒区の施設を指定管理者として、管理していたのは、目黒区内の業者で、全国的に指定管理者業を展開しているアクティオ(株)だ。ところが、アーチェリー場の管理については、アクティオが直接管理せずに、下請けに外注していたという。

★目黒区は、未成年の死亡事故でもまったく反省なし!

死亡事故の責任に関して、これまで目黒区は、加害者と被害者の高校生2人のいわゆる自己責任とみなし、アーチェリー場に指定管理者会社の職員が立ち会っていなくても、目黒区にも指定管理者にも管理責任に問題はないと主張してきた。しかし、加害者も亡くなった被害者も、まだ高校2年生の未成年者である。それなのに、高校生の2人だけに責任を押しつけて、施設管理の問題はなかったと反省すらしていなかったのが、目黒区の姿勢である。

ちなみに、目黒区の施設で高校生の死亡事故が起きたのだが、区長・青木英二は、葬儀に弔問に行くことすらしなかったのである。新年会には、税金で会費を払い、高級車の公用車を使って、分刻みで1日に何カ所も「乾杯!乾杯!」ってハシゴをして回るのだ。が、区の施設での事故で、死亡した被害者の弔問にはいかないのである。

★なぜ、指定管理者の評価で死亡事故を考慮しないのだ!

昨日の生活福祉委員会では、勤労福祉会館の指定管理者(アクティオ社)の運営評価結果も報告された。結果は、自己評価94点。区の幹部職員と外部の中小企業診断士による総合評価は81点で「十分水準を超えている」と評価し、死亡事故については、議会つまり区民への報告でまったく無視し、一言も触れていないのである。そもそも、こんなのでは、評価といえないだろう。事故についての反省がない何よりの証拠だ。

★これが訴訟事件発生についての文書の全文だ!

生活福祉委員会に提出された産業経済課作成の文書の全文を紹介しよう。
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指定管理者にかかる訴訟事件の発生について

目黒区勤労福祉会館の指定管理者(アクティオ株式会社)から、平成21年11月4日に発生した目黒区勤労福祉会館洋弓場における事故(以下「事故」という)に関して、下記のとおり訴訟事件が発生した旨の報告があった。
 

1 報告年月日 平成22年7月6日(火)
2 報告の概要
(1) 請求の趣旨 アクティオ株式会社は、事故に関して原告(被害者の親族)に対して、損害を他の関係者と連帯して賠償せよ。
(2) 請求の原因 指定管理者として施設の運営管理を行っている現場責任者は、事故発生を未然に防止すべき注意義務があったにも関わらず、これを怠った過失により事件を発生させたので、現場責任者の雇用者であるアクティオ株式会社にうは民法第715条(使用者等の責任)による責任がある。
(3) その他 本件については、加害者の不法行為責任と併せアクティオ株式会社にも上記理由により訴えの提起があったものである。 
以上
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★目黒区は反省なしに「責任なし!」と強気の一点張りだが!

まず、上記文書に関して説明したのは、松原産業経済課長。で、質疑になって答弁したのは、松原課長、安倍産業経済部長、本多区民生活部長らである。目黒区は、訴訟の被告にはなっていないことを理由にして、訴訟が提起された日時すら把握していないのだ。怠慢以外のなにものでもない。
賠償金額は、アクティオから報告されたというが、松原課長は「死亡事故であることを考慮して公表できない」と妙な理屈をこねる。裁判は公開が原則であり、金額を隠す理由はない。

答弁した全員の言い分を総合すると、加害者と被害者ともに「この事故については、一定の判断能力と技術を持っている。警察発表でも、施設管理上の責任は問われないとしている。目黒区は施設管理上の瑕疵(かし。法的には、本来あるべき要件や性質が欠けていること)はないという立場である。アクティオとの協定書で、事故については指定管理者が追うことになっており、したがって目黒区には責任はない」といった、死亡事故について何ら反省のない強気一点張りである。

しかし、協定書に指定管理者が責任を負うとあっても、裁判で個別具体的に審理した結果、協定書の内容そのものが違法であり、その結果、死亡事故が発生したとなれば、目黒区にも責任があることになる。
目黒区側の言い分の骨格だけを紹介した。が、次回では質疑の内容に即して、詳細に紹介する。
(7月15日午後4:30更新)

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