Good News Ministry

聖書的観点から見た世界の社会的、政治的、文化的、地域的現実を捉え、祈り備える。

スウェーデン NATO加盟

2023年07月21日 | 世界情勢
1年あまりにわたってスウェーデンのNATO加盟に難色を示してきたトルコがようやく容認に転じ、加盟が実現する見通しになった。フィンランドに続くスウェーデンの加入で、NATOはこの世代で最大の拡大をすることになる。この拡大によって、欧州の戦略をめぐる地理的環境はNATOに有利な方向へと劇的に変わるだろう。バルト海をぐるりと囲むかたちでロシアに対する締め付けが強まることになるからだ。トルコによるスウェーデンのNATO加盟容認は、両国首脳が10日、NATO首脳会議を前にリトアニアの首都ビリニュスで行った会談で決まった。NATOは声明で「スウェーデンとトルコはトルコの安全保障上の正当な懸念に対処するために緊密に連携している」と言及している。

2022年2月にロシアがウクライナに対する全面侵略を始めた数カ月後、フィンランドとスウェーデンはNATOへの加盟を申請した。フィンランドの加盟はわりとスムーズに進んだが、スウェーデンに関してはクルド人武装勢力をかくまっているとトルコが問題視してきたため、進捗が滞っていた。北大西洋条約では、NATOの新規加盟にはすべての加盟国(現在はフィンランドを含む31カ国)の批准が必要と定められている。トルコの同意を得るために、スウェーデン政府は対テロ法を微修正したほか、トルコの欧州連合加盟への支持も約束した。米国もトルコが求めてきたF16戦闘機の売却承認をちらつかせて、スウェーデンの加盟を後押ししてきた。

フィンランドの加盟によって、その現役兵2万4000人、軍用機100機、多数の艦船がNATOに加わった。スウェーデンが加盟すれば、さらに現役兵1万5000人、フィンランドとほぼ同規模の軍用機や艦船が加わることになる。もっとも、NATOはすでに350万人規模の兵力を有するので、兵士の増加はそれほど重要ではない。それよりも重要なのは、地理的な変化だろう。フィンランドとスウェーデンの加盟によって、NATOの防衛範囲は約1300キロメートルにおよぶフィンランドとロシアの陸上国境沿いと、バルト海をほぼ取り囲むエリアに広がるからだ。

とくに重要なのはバルト海の囲い込みのほうだ。NATO加盟国で最も攻撃を受けやすいラトビア、リトアニア、エストニアの3カ国は、ロシアと、その飛び地であるカリーニングラードに挟まれたかたちになっている。米外交問題評議会(CFR)はリポートで「NATOはバルト3国を防衛するために、フィンランドとスウェーデンに基地を置く権利を必要とするのはほぼ確実」とする西側軍事アナリストの見方を紹介している。フィンランドとスウェーデンの加盟によって、NATOはバルト3国の北方に多くの航空基地や港湾、補給線を確保できるようになる。これはつまり、3国がロシアの攻撃を受けた場合に、NATOは迅速な増援をしやすくなると言うことだ。(7/12/2023 Forbes)

アメリカの終焉

2023年07月07日 | 世界情勢
President Joe Biden welcomed hundreds to the White House on Saturday for a delayed Pride Month celebration aimed at showing LGBTQ+ people that his administration has their back at a time when advocates are warning of a spike in discriminatory legislation, particularly aimed at the transgender community, sweeping through statehouses.

The event, which the administration described as the largest Pride event hosted at the White House, was initially scheduled for Thursday, but was postponed because of poor air quality from hazardous air flowing in from Canadian wildfires. But the haze that blanketed a huge swath of the East Coast this past week had lifted over the nation’s capital, allowing the president and first lady Jill Biden to hold their South Lawn party.

“So today, I want to send a message to the entire community — especially to transgender children: You are loved. You are heard. You’re understood. And you belong,” Biden said.

READ MORE: Biden marks Pride Month with new initiatives to help and protect LGBTQ+ communities

Pride Month is being celebrated this year as state lawmakers have introduced at least 525 bills and enacted 78 bills that whittle away at LGBTQ+ rights, according to the Human Rights Campaign, a group that advocates for lesbian, gay, bisexual, transgender and queer rights.

🔳Biden hosts Pride Month celebration at White House, voices LGBTQ+ support

That tally includes a recent flurry of bills that affect transgender people, including legislation recently passed by Republican governors vying for the 2024 presidential nomination.

In Florida, Gov. Ron DeSantis recently signed a bill into that bans gender-affirming medical care such as puberty blockers or hormone therapy for transgender youths. Earlier in the week, a federal judge temporarily blocked portions of a law that DeSantis signed shortly before announcing that he was running for president.

In North Dakota, Gov. Doug Burgum last month signed a bill that prohibits public schools and government entities from requiring teachers and employees to refer to transgender people by the pronouns they use. Burgum, who like DeSantis has made culture issues a central part of his tenure as governor, joined the White House primary field.

Josh Helfgott, an LGBTQ+ activist and social media influencer from New York City, said marking Pride Month at the White House felt like one of the most important moments of his life. But he said the tide of legislation added another layer to this year’s celebrations.

“Pride this year is so important because we cannot be silent when faced with hate and bigotry,” Helfgott said “The other side is so loud, incredibly loud. ”

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Anjali Rimi of San Francisco attended the White House event with her mother, who recently immigrated from India.

Rimi came to the United States more than 20 years ago because, she said, she was shunned by family and society as a transgender person.

Times were tough in the United States, too, she said. She was pushed out of a job after she came out, was homeless for a time, and took asylum in Canada for about a decade before returning to the United States.

“It’s a moment that we are going to cherish for a lifetime,” said Rimi, an activist in San Francisco’s LGBTQ+ community. “This is a joyful moment, but it’s also one that reminds us that we have so much work to do.” (6/11/2023 PBS News)


世界は「プーチン後」に備えを ワグネル反乱で動き始めた時計

2023年06月29日 | 世界情勢
ロシアのプーチン大統領は、かつての腹心だった民間軍事会社ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏から屈辱的な目に遭わされた。その後何が起きても、世界はもはやプーチン氏の権威は傷ついたと見なすことになる。この認識は、モスクワで今繰り広げられている権力闘争よりも重要かもしれない。米国や欧州、中国は、棚の奥でほこりをかぶっていた「プーチン後」の対応計画を改めて引っ張り出してくる必要があるだろう。一番ふさわしいやり方は、最悪事態を想定しつつ、最善の展開にも備えることだ。ワグネルが24日に武装反乱を起こしてモスクワへの進軍を始めるまで、世界にとってロシアに関連する最大の政治リスクはプーチン氏による対ウクライナ戦争の勝利だった。しかし結局は短時間で収束したとはいえ今回の反乱で、プーチン氏の時代が大方の予想より早く幕を閉じる可能性が浮かび上がってきた。

最悪の結末は、ロシア国内のさまざまな勢力が長きにわたって権力を争い、不透明感がいつまでも払しょくされなくなること。確かにロシアは経済的には大国ではなく、国内総生産(GDP)はイタリアやカナダよりも小さい。またロシア経済の大部分は、昨年2月のウクライナ侵攻以来、先進諸国とのつながりがなくなっている。それでも国家権力のトップが混乱すれば、2014年のプーチン氏によるクリミア併合以降続いてきたロシア政府の行動の予測不能性に拍車がかかりかねない。ロシアで誰が政権を掌握しているのか分からない状況は、同国の核兵器が果たして適切に保管されているのかどうかを巡って世界各国に恐怖をもたらす。また今なお経済分野では改革派が主導権を握っているとみられるロシアの政治権力構造のバランスが崩れれば、政策金利の決定や通貨ルーブルの価格、石油輸出、財政支出、まだロシアに残る外国投資家の扱いといった面に影響を及ぼす恐れがある。

だが世界の主要国は、事態が最も良い方向に転がる場合も頭に入れておく必要がある。大きな政治危機を経て、ロシアでプーチン氏の始めた対ウクライナ戦争の無益さを受け入れる政治指導部が誕生するかもしれない。ロシアがウクライナからの撤退協議を申し出れば、米国や欧州はロシアへの制裁を段階的に解除する道を模索してもおかしくない。中国は、習近平国家主席とプーチン氏が「無制限」の連携を表明してから2年足らずの今、ロシアで体制変更があれば心中穏やかではいられないのではないか。それでもロシアの「新体制」は引き続き中国とインドに、石油を熱心に売ろうとするだろう。プリゴジン氏が起こした反乱自体は束の間の出来事だった。その余波による混乱が尾を引くのも、数カ月とまで行かず、せいぜい数週間だろう。しかし世界にとっては、ロシアの未来は既に変わってきている。(6/26/2023 Reuters)

*武装反乱を起こしたロシア民間軍事会社ワグネルはモスクワへの進軍を停止し、政府との取り決めに従って宿営地に向けて撤収した。

半世紀の気象災害で死者200万人

2023年05月23日 | 世界情勢
国連の世界気象機関(WMO)は22日、2021年までの約50年間に世界で発生した気象災害は、200万人超の死者と4兆3000億ドル(約595兆円)の経済損失をもたらしたとする報告書を発表した。死者の9割は途上国に暮らす人々だった。地球温暖化による気象災害の激甚化が予測されるなか、国連は災害のリスクを事前に知らせる「早期警報システム」を5年以内に世界に普及させることを目指す。WMOは1970年以降に世界で大きな被害を出した異常気象や風水害など約1万2000件を集計した。経済規模の拡大により損失額は時間の経過とともに膨らむ一方、警報システムの導入などで人的被害は減少傾向が続いている。

経済損失が最も大きな国は米国で、被害総額の1兆7000億ドルは世界全体のおよそ4割を占めた。国内総生産(GDP)に対する被害額の割合は途上国でより大きくなっていた。特に小さな島しょ国では、GDPの100%を超える損失をもたらしたケースもあった。地域別で最も死者数が多かったのはアジアで、主に風水害で98万人超が死亡し、その半数以上はバングラデシュで暮らす人々だった。アフリカでは73万人超の死者のうち、95%は干ばつが原因だった。WMOは、気象災害の発生を24時間前に通知するだけで被害を3割低減することが可能だとする。一方、気候変動の被害を受けやすい島しょ国やアフリカの後発途上国を中心に、世界の半分の地域ではまだ早期警報システムが導入されていない。WMOのターラス事務局長は「最も脆弱な地域社会」が気象災害の矢面に立たされているとして、「命を救う」早期警報システムの導入に向けた支援の加速を呼びかける。(5/23/2023 毎日新聞)

日本の子供の数 42年連続減少 今年過去最少

2023年05月04日 | 世界情勢
明日の「こどもの日」を前に総務省がまとめた人口推計によりますと、ことし4月1日時点での15歳未満の子どもの数は去年より30万人減って1435万人でした。1982年から42年連続の減少で過去最少を更新しています。女別では男子が735万人、女子が700万人で男子が上回っています。また、総人口に占める子どもの割合も11.5%と、49年連続で低下しました。岸田総理は「異次元の少子化対策」を掲げ先月、「こども家庭庁」を発足していて、子育て世帯への支援の充実などで少子化の流れを止めたい考えです。(5/4/2023 TBS)

2億5千万人が深刻な飢餓 過去最多

2023年05月04日 | 世界情勢
国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)などは3日、紛争や自然災害で深刻な食料不足に陥った人々の数を示す「急性飢餓人口」が、調査対象となった58カ国・地域で2022年に2億5800万人に上ったと発表した。ロシアのウクライナ侵攻による食料価格の上昇も影響し、21年の1億9300万人から大幅に増加、過去最多となった。急性飢餓人口の発生要因のうち最も大きかったのは紛争で、全体の45%に相当する1億1710万人が影響を受けた。次いで経済状況の悪化により8390万人が、自然災害で5680万人がそれぞれ食料危機に直面した。国別ではコンゴ(旧ザイール)が最も多い2640万人で、次いでエチオピアが2360万人。アフガニスタン、ナイジェリア、イエメンと続き、これら上位5カ国で全体の約4割を占める。(5/3/2023 Kyodo)


🔷世界36カ国が重大な飢餓
サハラ砂漠以南のアフリカや南アジアを中心とした世界の少なくとも36カ国が重大な飢餓に直面していることが8日、分かった。米シンクタンク、国際食料政策研究所(IFPRI)が2022年の「世界飢餓指数」の報告書で明らかにした。発展途上国での食料不足は深刻化しており、5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)でも議題となりそうだ。同研究所は、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻が食料や燃料価格高騰を招き「世界の飢餓を著しく悪化させた」と強調。新型コロナウイルスの世界的流行が景気を減速させ、地球温暖化が農業や漁業の生産性を低下させていることから緊急の人道支援が必要だと訴えた。先進国やデータ不足の15カ国を除く121カ国のうち最下位は中東イエメンで、ほかに中央アフリカなど少なくともアフリカ4カ国が「驚異的な飢餓」にあると指摘した。北朝鮮やアフガニスタンなどアジア5カ国を含む少なくとも31カ国が「深刻な飢餓」にある。(4/8/2023 Kyodo)

クレムリンにドローン攻撃

2023年05月03日 | 世界情勢
ロシア大統領府は3日、プーチン大統領を狙ったウクライナのドローンによる暗殺未遂が同日未明にあったと主張した。ドローンは2機で、ロシア軍の電子戦システムなどで妨害され、モスクワのクレムリン(大統領府)の敷地内に墜落。負傷者はいないという。事実なら、モスクワ中心部への攻撃は、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始後初めて。プーチン氏が実際にいたのがクレムリンか、郊外の大統領公邸かは不明だ。ウクライナのゼレンスキー大統領は訪問先のフィンランドでの記者会見で「プーチン氏もモスクワも攻撃していない」と関与を否定した。

モスクワでは対ドイツ戦勝記念日の9日にクレムリン隣の「赤の広場」でプーチン氏が観閲する恒例の軍事パレードが予定されている。ロシア側の発表には、国内を引き締め、ウクライナが予告する大規模な反転攻勢に警戒を促す狙いもあるとみられる。発表後、SNSにはクレムリンにドローンとみられる物体が飛来し、屋根に火が付く動画が投稿された。ただ、瞬間を捉えた動画の一つは、固定の監視カメラでなく手持ちのカメラで落ち着いた様子で撮影されている。(5/03/2023 時事通信) 


🔷クレムリン爆発事故 モスクワGPS誤作動
タス通信などは4日、ロシア大統領府があるモスクワ中心部のクレムリンがウクライナの無人機で攻撃されたとの今月3日の発表後、モスクワ市中心を囲む「サドーボエ環状道路」の内側や周辺で衛星利用測位システム(GPS)が正常に作動しなくなったと伝えた。ロシアの独立系メディアは警察当局者の話として、クレムリン脇の「赤の広場」でプーチン大統領も出席して軍事パレードが開かれる今月9日の対ドイツ戦勝記念日に向けGPSの利用が妨害されていると報じた。クレムリンへの無人機攻撃と直接の関係があるのかどうかは不明。ロシアメディアによると4日、モスクワの中心部で携帯電話の位置情報表示が誤作動を起こし、携帯アプリを使ったタクシーの呼び出しなどに支障が出た。GPSの誘導機能は無人機や巡航ミサイルなどにも利用されている。(5/05/2023 Kyodo)

2022年の超過死亡 11万3千人 

2023年04月06日 | 世界情勢
死者数が例年の水準をどれだけ上回ったかを示す「超過死亡」が、2022年に最大約11万3千人に上ったとの推計を国立感染症研究所などが5日、明らかにした。21年の最大約5万人から倍増し、新型コロナウイルスの流行が影響した可能性がある。厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の会合で示された。厚労省の集計によると4日までの1週間に報告された国内の新型コロナ新規感染者数は前週比1.03倍。18都道府県で増加し、福井が1.35倍、北海道、秋田が1.30倍と高かった。感染研の分析では、オミクロン株派生型「XBB・1.5」の割合は37%と推定され、ウイルスの型の中では最多。(4/5/2023 Kyodo)

イスラエル分断の危機  

2023年04月03日 | 世界情勢
イスラエル各地で1日、ネタニヤフ政権が進める司法制度改革への抗議デモがあり、多数の市民が国旗を掲げて「民主主義を守れ」と声を上げた。民放チャンネル12は、テルアビブで推定16万5千人が参加したと伝えた。エルサレムなどでは数千人が参加。ネタニヤフ首相は改革の手続き延期を発表したが、批判が収まらない。改革案には国会が最高裁の判断を覆せる条項が含まれ、三権分立を脅かすとして抗議デモが繰り返されている。この日、エルサレムのデモに参加した内科医は「改革を撤回したわけではない」と指摘。会社員も「政府が撤回を決断するよう、圧力をかけなければならない」と語った。(4/02/2023 Kyodo)

💣この状況を、反イスラエルの国々がイスラエルが自滅するのを喜んで待っている..と言う事は、この勢力は、プーチンやトランプを失脚させようとしている同じ輩である。多くの人々は、それが自滅に至る道だという事を知らずに先導されている。聖書が預言している世界統一政府は、このように群衆の支持を得ながら拡大して行くのである。

「グローバルヘルス」ワクチンと最先端AI による世界統一構想

2023年03月28日 | 世界情勢
■ 最先端AI × ワクチンで世界の誰一人取り残されない社会を 国際機関や異業種と共創、NECが取り組むグローバルヘルス
今、世界の人口は80億人を超えている。そのうちLegal identity(法的身分証)を持たない人が10億人もいることをご存じだろうか。とりわけ開発途上国全体では4人に1人の子どもにIDがなく 、その存在すら認識されていない。さらに、5歳未満で命を落とした子どもは世界で年間520万人、適切な予防接種を受けていない幼児は1970万人、ワクチン接種で助かるはずだった人の数は150万人にも上る。こうした現実に対処すべく、国連は2015年の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)を採択。2030年までに地球上のすべての人に法的身分証を発行することを目標に掲げている。

これに先立ち、NECでは「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会」の実現を目指して、2014年に「7つの社会価値創造テーマ」を策定、、さらに2021年に発表したNEC 2030VISIONで10年後の未来像を描いた。このテーマに沿って、グループをあげてICTやネットワークを最大限に活用し、国際的な社会課題の解決と社会価値創造に取り組んでいる。目指すところは「誰一人取り残されない」社会の実現─その一つの分野がグローバルヘルスだ。

2019年に参入した創薬事業もその一環。それまで培ってきたAI技術の活用によって、NECはプレイヤーとして自ら創薬事業に参入した。4人に1人の子どもにIDがないという途上国・地域でも、出生登録や母子手帳の整備はもちろん進められているが、なかなか追いついていないのが現状だ。たとえばアフリカのサハラ砂漠以南の「サブサハラアフリカ」と呼ばれる地域では、5歳未満の子どもの半数は出生届すら出されていないという。そのため、本来記録されるべき「どの子どもが」「どのワクチンを」「いつ接種したのか」という基本的かつ重要な情報がない。これでは、予防接種の機会があっても適切な時期を逃したり、同じワクチンを再度接種してしまったりというリスクが生じる。

こうした現状を打開すべく、2019年6月に画期的な発表が行われた。「Gaviワクチンアライアンス(以下、Gavi)」、「Simprints Technology Ltd.(以下、Simprints)」、「NEC」の三者が、途上国の予防接種率向上を目的とした生体認証の活用に関する覚書を締結した。これにより、途上国におけるワクチン普及のための幼児(1~5歳)指紋認証の実用化を目指すとした。これは、世界で初めての取り組みだ。なぜ本人確認の手段が指紋なのか。指紋は生涯変わることがなく、登録や照合の手順も比較的容易という利点があったからだ。

そこでGaviが注目したのが、Simprintsの指紋認証ソリューションだった。Bluetoothで接続したスキャナーから指紋を採取し、スマートフォンに組み込んだ専用アプリで照合するシンプルな仕組みだ。スマートフォンさえあればオフラインでも使えるのが最大の特徴であり、インターネット環境が未整備の途上国でも利用できる。ただし、難点があった。大人の指紋認証は実用化されているが、今回の取り組みの対象となるのは子ども。しかも、5歳以下の幼児の指先の皮膚は柔らかいため指紋が変形しやすく、デリケートであるため荒れていることも多い。そのため、センサーに指を押し当てるだけで形が歪み、画像が不鮮明になってしまうことがある。そこで白羽の矢が立ったのがNECの生体認証技術だった。

そもそも、NECの指紋認証の研究開発は40年の歴史を持つ。犯罪捜査への活用を期待され、現場に残る遺留指紋の解析や照合など、警察組織と長年研究開発に取り組んできた。さまざまな制約の中、試行錯誤と知見を積み重ね、技術を磨いてきた。その結果、指紋認証技術は米国政府機関主催のベンチマークテストで過去8度にわたって1位を獲得、その正確性とスピードは極めて高い評価を受け、世界No.1の精度を誇る。現在は国内のみならず、海外の警察・捜査機関でも採用されている。

NECのこの指紋認証技術とSimprintsの指紋スキャナーを組み合わせれば、不可能が可能になるのでは─Gaviのそうした着眼点により、三者共創プロジェクトはスタートした。しかし、その歩みは決して順風満帆ではなかった。幼児の指紋の特性は前述のとおりだが、指紋の形は変わらなくても成長とともにサイズは大きくなるため、そのサイズを一律化する技術も新たに開発。また、画像の補正や照合の技術にはさまざまな方式があり、その組み合わせは何万種類にも及ぶ。要件を満たす精度とスピードの追求のため、いくつもの新技術が必要だった。そうした苦難の末に、ついに幼児指紋認証のシステム開発に成功した。

この技術を携え、すでに2022年9月までに南アジアのバングラデシュにおいて1〜5歳の幼児約4000人を対象にした技術実証実験(指紋採取)を行っている。今後、ワクチン接種での運用のために、幼児5000人規模の実証実験をさらに予定している。実証実験を経て途上国での実用化を期待したい。また、冒頭でも触れた創薬事業についても国際機関との取り組みが始まっている。2022年4月、世界が注目する発表が行われた。「CEPI」とNEC、そしてノルウェーに拠点を置く子会社「NEC OncoImmunity AS(NECオンコイミュニティ)」が、新型コロナウイルスに加えMERSやSARS、そしてそれらの近縁種ウイルス100種以上を含むベータコロナウイルス属全般に有効な次世代ワクチンの開発をスタートしたのだ。

新型コロナウイルス感染症のワクチンは、以前に発生したMERSやSARSの研究によってコロナウイルスに関する知見が蓄積されていたこともあり、人類史上最短の326日で開発された。それでも誕生までに多くの命が失われており、ワクチンをより迅速に開発することがより多くの人命を救うために必要だ。そこでCEPIは、2021年にプロジェクト「100日ミッション」をスタートさせた。新たなウイルスの脅威に対して安全かつ効果的なワクチンを、わずか100日で開発することを目指すという野心的なプロジェクトだ。パンデミック時にワクチンを100日で開発するためには、平時からの取り組みが重要となる。だからこそ、CEPIは将来パンデミックを起こす危険性のあるウイルスに対し、先回りしてワクチンを開発する事業に取り組んでいる。

新型コロナウイルスは、コウモリ由来のコロナウイルスがヒトに感染する能力を得たことで流行したといわれている。CEPIとNECグループが標的にする「ベータコロナウイルス属」には、ヒト以外の動物に感染するコロナウイルスが多く存在し、今後も他の動物由来のコロナウイルスがヒトの間で流行する可能性がある。しかし、100種以上のコロナウイルスに対し一つ一つワクチンを作製するのは非現実的だ。そこでNECグループはAI技術を駆使し、ベータコロナウイルス属すべてのウイルス種に対して有効なワクチンの開発に取り組んでいる。



一つのワクチンで多くのウイルス種・変異株を標的にする技術を汎用ワクチン技術と呼び、世界中で開発が進められている。NECは独自のAI技術等を用いて「抗体とT細胞の両免疫アプローチによる汎用ワクチンの設計」に着手。「変異に強く」かつ「免疫が長期間持続」することに加え、「世界人口をカバー」するワクチンの設計を目指している。 CEPIとNECグループは2022年4月にこの開発を始動させた。ベータコロナウイルス属共通の抗原探索に18か月、その後非臨床試験に6か月の期間を予定している。汎用ワクチン技術は100日ミッションにとって重要な技術であり、その取り組みに注目が集まる。

グローバルヘルスは人々の健康だけの問題ではなく、経済的、社会的な重要課題だ。そして今、新型コロナウイルス感染症の拡大により、グローバルヘルスへの関心がいっそう高まっている。そうしたなか、日本企業の間にもグルーバルヘルスへの取り組みを加速させようという動きがある。2022年4月には、NECなど有志企業連名で岸田文雄首相に対し、首相が唱える「新しい資本主義」の成長戦略の柱にグローバルヘルスを据え、民間企業によるさらなる貢献が可能となるよう支援を要請した。この中には、マイクロソフト元会長のビル・ゲイツ氏が妻のメリンダ氏とともに設立した「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の日本常駐代表も名を連ねた。

また、同年8月には、来日したビル・ゲイツ氏を囲む形でNECを含む有志企業11社が「グローバルヘルス・アクション・ジャパン」を開催。国内でのグローバルヘルスへの気運醸成を図る取り組みに向けて声をあげた。さらに同年12月にはその活動の一環として、グローバルヘルスに関わるサービスや企業活動への理解促進、関心の向上を目的としたイベント「第1回グローバルヘルス・アカデミー」を実施(※11)。そこでは、今年5月に開催されるG7(主要7か国)広島サミットでも議題の一つとなるCEPIの「100日ミッション」に関連するトークセッションも行われた。

グローバルヘルスの有志の会のPurposeは、「誰もが必要な医療にアクセスでき、世界中の人々が健康である未来を創る」こと。このPurposeを達成するためには、テクノロジーが重要な役割を担っている。 テクロノジーの発展によって製薬や衛生用品、医療機器の業界のみならず、業種を越えてグローバルヘルスへの貢献が可能となった。NECはデジタルテクノロジーを活用し、ヘルスケア領域でのゲームチェンジャーになることを目指している。国際機関やパートナーとの共創により、誰一人取り残されない世界の実現に貢献すべく、今後もさらなるチャレンジは続く。(3/28/2023 AFPBB News)