日本人の起源

遺伝子・言語・考古・歴史・民族学などの既存研究成果を統合し、学際的に日本人と日本語の成り立ちを解き明かす

5.Gm遺伝子、形質人類学

2015年03月16日 | 本論2-日本人のルーツを探る(人類学)
 日本人の起源を探るのによく用いられる遺伝子にGm遺伝子の頻度分布がある。これは大阪医大の松本秀雄博士が開発した免疫グロブリンGに含まれるGm遺伝子のタイプによる方法であり、親子関係が99%の確率で当てることができるという。この手法でアジアの各民族を調べてみた結果が図2-23である。一目見ただけで南北で割合が大きく異なるのが見て取れるであろう。ここからモンゴロイドは大きく北方モンゴロイド(東アジア中北部、アメリカ)と南方モンゴロイド(東南アジア)に大分できるとされる。アイヌも日本人も琉球人もみな北方モンゴロイドということになる。(ただしGm遺伝子組成の南北差はマラリアへの耐性の有無とする見方もある。)松本氏によると日本人に最も近いものはシベリアのバイカル湖の周辺に住むブリアート人であるという結果が出ている。確かにこの民族の顔は日本人そっくりであり、その歌は節分節に似ている。

図2-23
 ユーラシア先史学者の加藤晋平教授も「旧石器のルーツを調べていくとブリアートにたどりつく」と言っている。このことは旧石器時代人が日本列島に移住してきた後に若干の混血があって現在に至ったことを意味しており、これも真実の一端を物語っているのであろう。また、人間と共に行動する犬についても同じことが言えるという。
 形質人類学の立場からまた別の区分がなされている。モンゴロイドは大きく古モンゴロイドと新モンゴロイドに大別されるとされる。中国人やモンゴル人などアジア大陸中央部の人々が寒冷適応した平顔の新モンゴロイドであるのに対し、アイヌや東南アジア人、アメリカ先住民などは彫りが深く立体顔で、寒冷適応前の古い形質を残す古モンゴロイドであるという。日本人は両者の中間といったところであろうか。
 遺伝子と整合させてみると、古モンゴロイドは北方及び南方にもみられ、新モンゴロイドは北方にのみ認められる形質である。つまり、南北に分かれた後に北方モンゴロイドの一部から新モンゴロイド的形質が生じて広がったことになる。年代的にはここ1万年くらいの出来事ではないだろうか。日本人の場合、縄文系が古モンゴロイド、弥生系が新モンゴロイドとされる。

図2-24、図2-25、図2-26

 縄文系、弥生系の人々の形質については、形質人類学の分野で長らく研究がなされてきた。まとめたのが表2-9である。耳垢の乾湿、指紋の模様、蒙古襞の有無など縄文系と弥生系で明らかな差異が存在することをおさえておきたい。図2-27に示したのはアルコール分解能(酒に強いか弱いか)を表すものである。弥生系が多い近畿や中国で下戸が多く、縄文系の東北や九州、沖縄で酒に強い人が多い。確かに九州の人は酒が好きだとよく聞く。図2-28は日本人の頭型分布であるが、近畿地方に短頭の人が多いことはっきりと示されている。これは近畿を中心に定着した弥生系渡来人の流れを示すものと思われる。

図2-27、図2-28、図2-29
表2-9


→次頁「JCウイルス」へ