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日本水環境文化研究協会

健全な水循環を次世代に引き継ぐこと、そして、世界中の人々が水の恵沢を享受することを目指しています。

ダッカの都市スラムを見JADE

2016年03月04日 | 広報ふくりゅう から
ダッカのビハリキャンプを訪ね
本会代表 酒井 彰


 今月(2016年2月)のバングラデシュ訪問時、ダッカにあるビハリ族のキャンプ(スラム)を訪問した。1947 年にインドが分裂したとき、インドの東部州から多くのウルドゥ語を話すムスリムが東パキスタンへ移住する道を選んだ。出身州としてビハール州出身者が圧倒的に多い。その後、ウルドゥ語を話すインド人、パキスタン人も東ベンガル州へ移り住むようになり、ウルドゥ語を話すこれらの人々は、集合的に「ビハリ族」と呼ばれるようになった。ビハリ族は、バングラデシュ独立戦争時には、パキスタン側を支持し、独立後、帰国することがかなわず、無国籍状態のまま、国内の100を超えるキャンプ等で暮らすようになり、現在、その数はバングラデシュ全土で30万人に上ると言われている。独立後は迫害も受け、2008年には参政権は与えられたが、パスポートは発行されないままである。

本会が、バングラデシュ・クルナ市で活動を行った2つの都市スラムはこのようなビハリキャンプである。昨年11月、ビハリキャンプのコミュニティを対象に下痢症リスク軽減のための行動変化を促すワークショップを開催した際、OBATヘルパーズUSA(以下OBATという)というビハリ族を支援する組織の人と会い、ダッカのビハリキャンプ訪問を要請されていた。2月6日と17日に最も規模の大きいジェノバキャンプ(Geneva Camp)とその周辺のいくつかのキャンプを訪問した。まず、驚かされたのはその規模である。ジェノバキャンプでは、4haに4万人が暮らすという。もちろん正確な人口はわからず、OBATがベースライン調査をしようとしているところである。ヘクタールあたり人口密度10,000人、ひとり当たり所有面積1m2である。平屋では暮らせないから、レンガ造りの3階、4階建ての住居が続く。キャンプ内は商店街があり、ゲームセンターまであるが、我が国の歳末のようにごった返していた。



 さて、水と衛生であるが、OBATが数年前提供した深井戸を水源とする2つのウォータースポットがあるが、そのうちひとつはすでに使用できない状況であり、もうひとつも限られた蛇口しか使用できない状況であった。水道局(WASA)の水を利用する者もいるようだが、盗水も少なくない。話は飛ぶが、ダッカ市内の別のスラム(ビハリキャンプではない)では、水道局の水をさらに膜処理した水を販売する自動販売機が最近置かれていた。

 そして、ジェネバキャンプの共同トイレである。さすがに数は多く、キャンプ外縁にはトイレが並ぶ。目新しいトイレもあるが、多くは使い古した感じである。しかし、聞いてみると使用開始から1年から3年だという。どうやら、数年ごとにさまざまな援助団体が造り替えるが、すぐに元の木阿弥となるようなことが繰り返されてきたようだ。トイレは、造られるが、誰も管理しない。設置者は、トイレのドアにその名を書き残すが、その後去ってしまう。クルナ市で本会が更新したトイレも使い始めて2年は経過した。ここよりはましであるとは言えるものの、管理体制が整わなければ、長期間維持される保証はない。放流先は下水道だという。ダッカの下水処理場を訪問したことがあるが、とても1千万都市の下水処理場には見えず、処理能力、流入水量は数万トンと聞いた。このキャンプの排水も下水処理場へ到達している可能性は小さいと考えざるを得ない。



 アメリカから来ているOBATのメンバーは、このキャンプで1週間体験生活したそうだ。もっとも、困ったことは、シャワーとトイレだったと聞いた。さらに、夜中までの騒音と調理時の煙に悩まされたという。子供も含め、こういう環境での生活を余儀なくされる多くの人々がいることを知り、まずは彼らのニーズを確かめることが必要であると思った。
 正直、このキャンプで何かを始めようとすることは容易でない。しかし、OBATは、キャンプ出身の若者を教育して、優秀な人材をスタッフとして雇用している。今はまだ絶対数は少ないが、そこに望みが託せるかもしれないと思う。

OBATとは、以下のような協働の可能性について話し合うことができた。新たなネットワークとして位置付けていこうと思う。

① 住民の意識調査で、我々がほかの地域でも行ってきた生活改善意欲や社会関係資本に関する意識についても質問項目に加えてもらう。
② 継続的な啓発活動の必要性を改めて認識したが、この面でOBATの協力を得る。
③ 下痢症リスク調査の対象とし、協力支援を得る。
④ クルナ市内のビハリキャンプのトイレ更新のための資金援助を得る。



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5 Comments(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (井上清華、緑川静香)
2019-07-15 17:43:54
平井麗奈、坂井朝香
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Unknown (秋谷綾乃)
2019-07-15 17:44:37
成田良悟
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Unknown (河内美里、伊関彰、加藤亜実)
2019-07-15 17:45:40
黒木茉莉花、平井麗奈、加藤亜実
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Unknown (秋本帆華)
2019-07-15 17:46:10
浦部春香
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Unknown (ダッカ)
2019-07-15 17:46:29
ダッカ
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