フィンランド建築・デザイン雑記帳

“NATO加盟”めぐりロシアと緊迫化の中、アイスホッケー世界選手権がヘルシンキとタンペレで開幕


Photo : Quoted from 2022 Jääkiekon MM-kisat Tampere

昨年、2021年12月に完成したタンペレの「ノキア・アリーナ」
設計はアメリカの建築家 ダニエル・リベスキンド(Daniel Libeskind)。
タンペレ大学の近く、タンペレ駅からも近い便利な場所に位置し、アイスホッケーの試合や、コンサートなど大規模な文化イベントの会場となる。
多目的イベント会場の他に、ホテル、カジノがあり、オフィスや商業施設、住宅も予定され、2024年までに完成するとの事。


この何年間、タンペレ市のウェブサイトには「2022年ホッケー世界選手権 (2022 Jääkiekon MM-kisat )開幕まで...あと?日、?時間、?秒が表示され、市が中心となって大会へのムードを盛り上げていた。
その表示がついに0,0,0となり、先週金曜日(5月13日)からタンペレとヘルシンキで、アイスホッケー男子世界選手権 (トップ・ディビジョン)が開幕した。
大会は16か国を2組に分け、ヘルシンキでAブロック(A-lohko)の試合が、タンペレではフィンランドが参加するBブロック(B-lohko)の試合が行われる。

アイスホッケー (フィンランド語でヤーキエコ、Jääkiekko)は、フィンランドで最も人気があり、いつも控えめなフィンランド人たちが最も熱狂するスポーツだと思う。
タンペレの友人(熱烈なアイスホッケーファン)からの便りでは、現在の緊迫した国際状況下でも、それはそれ、これはこれで、大会の期間中は毎日お祭り騒ぎだという。
 
1980年代、僕はタンペレの学生寮(Mikkon talo)に滞在時、同室のフィンランド学生の影響で、すっかりアイスホッケーファンになってしまった。
毎週末のように、友人達とアイススタジアム(Hakametsa Stadium)に観戦に出かけた。 彼らの熱狂ぶりは手に取るように分かる。






Photo : Quoted from 2022 Jääkiekon MM-kisat Tampere

アリーナの名称が決まるまでは、紆余曲折があった。
当初、オウルのUROSグループとの10年間のスポンサー契約により、アリーナは「UROS LIVE」の名称になると発表されたが、財政問題により契約が終了。 新スポンサーに「ノキア」が決定し、アリーナの名称は 「ノキア・アリーナ(Nokia Arena)」に決まった。
「ノキア・アリーナ」は最大15.000人の観客を収容できる大規模なイベント会場で
フィンランド国内のアイスホッケーリーグ(SM-liiga)のタンペレの地元チーム、イルヴェス(Ilves)とタッパラ(Tappara)のホームスタジアムでもある。


折しもロシアのウクライナへの侵攻が勃発し、世界の情勢は緊迫化した。
フィンランドは第2次世界大戦以後、長く続けてきたソ連 (ロシア)への友好政策、中立(軍事的非同盟)の立場からNATO加盟という歴史的な大転換へと舵を切った。
ロシアのウクライナ侵攻、フィンランドのNATO加盟申請は、さまざまな形で今大会に影響を与えているようだ。

大会に与える影響について、フィンランドの新聞は、2月ごろから多くの記事を発信していた。 
その中の一つ「イルタ・サノマット(Ilta Sanomat)」の記事を少し紹介しよう。

国際アイスホッケー連盟(IIHF)は、ウクライナを攻撃したロシアと、ロシアの攻撃を支援したベラルーシをIIHFから除名し、大会からの参加除外を決定した。
そして、ロシアは2023年の20歳以下世界選手権と男子世界選手権(サンクトペテルブルク)の開催権も失うことになる。
今大会では、ロシアはヘルシンキ、ベラルーシはタンペレで予選を戦うことになっていたが、除外によりロシアに代わってオーストリアが、ベラルーシに代わってフランスが参加。

ヘルシンキでの試合は当初、ヘルシンキホール、Helsinki Halli (旧ハートウォールアリーナ、Hartwall Arena)で行われる予定だったが、会場がEUと米国の制裁リストに載っているロシアのオリガルヒ(Roman Rotenberg、 Gennadi Timtshenk)が株式の一部を所有し、議決権の約97%を保有しているため急遽、変更された。
新たな会場は、ヘルシンキの「ヘルシンキ・アイス・ホール (Helsinki Ice Hall)」に決定された。
大きなイベントの会場を開幕間際に変更したことで、問題続出、会場をヘルシンキからトゥルクへ変更することも検討されたという。


「イルタ・サノマット(Ilta Sanomat)」は、フィンランドでの世界選手権に参加できなくなったロシアの様子も伝えている。
2月に行われた北京冬季オリンピックでは、金メダルをフィンランド(金)と争ったROC(ロシア、銀)、世界選手権からの除外は、アイスホッケーの盛んなロシアにとって大きな痛手である。
ロシアは、世界選手権の代わり(?)に、5月5日ー8日、国際アイスホッケートーナメント「Liga Stavok St. Petersburg Cup」を自ら開催した。
参加したのは、ロシア A代表、ベラルーシ A代表、ロシア U20代表の3チームで、決勝ではロシア A代表が3-2でベラルーシ A代表に勝利したとの事。

「イルタ・サノマット(Ilta Sanomat)」は記事の中で、ロシアは、自ら主催したこの大会で、恥ずかしげもなく「チェックメイト IIHF !」と、叫んでいると痛烈に批判している。




5月30日 後記


Photo : Quoted from Ilta Sanomat

Suomi on maailmanmestari.!
フィンランドが世界チャンピオンに !!
29日(日曜日)に行われた「カナダ」との決勝戦、試合は実に白熱、スリリングだった。 
最終ピリオドが終わっても3対3の同点。 オーバータイムにサカリ・マンニネン(Sakari Manninen) が決勝点を決め、フィンランドがカナダに4対3で勝利、世界選手権の金メダルを獲得した。



Photo : Quoted from Ilta Sanomat

タンペレの「ハカメッツァスタジアム (Hakametsa Stadium)」の前でフィンランドチームを祝福するファンたち。
ワールドカップ金メダル祝賀会には、3万人が集まり、ほとんどが青と白のジャージを着てのお祭り騒ぎ。
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