見出し画像

フィンランド建築・デザイン雑記帳

フィンランドの人々の冬の暮らし・・彼らにとって「よい冬」「よい夏」とは、



写真1: タンペレ、ナシンネウラ展望台 (Näsinneula) からの冬の風景。
凍りついたような町を照らす、オレンジ色の淡い光を持った冬の太陽。
午前9時ごろに顔を出した太陽は午後3時ごろには沈んでしまう。  この写真は太陽が最も高く昇った昼12時頃のもの。



展望台から眼下を撮影。 ナシヤルヴィ (Näsijärvi) 湖は凍り付き、氷の上には10㎝程、雪が積もっている。
凍った湖で人々は、スケートをするかと思いきや、フィンランドでは湖でクロスカントリースキーを楽しむ。


フィンランドの人達と話しをしていると、よく「よい夏」「よい冬」といったことが話題になる。
「よい夏」とは、もちろん雨の少ない暖かな夏のことだが、「よい冬」とはどんな冬なんだろう?

「雪」、フィンランドと雪との深い関係は、国旗からも察せられる。
ご存知のようにフィンランドの国旗は、白地に青の線が十文字に通っていて、十文字の青色は、「湖」をあらわし、白地は「雪」をあらわしている。
今日、僕たちがフィンランドを表現するときによく使うのは「森と湖の国」だが、以前は「雪と湖の国」と呼ぶのが一般だったと、年寄りたちに聞いたことがある。
昔の本を読んでいて、1949年(昭和24年)発行の市河かよ子氏の著書「北欧の夢」の中で、市河氏はフィンランドを「雪と湖の国」と呼んでいるのを発見。

「よい冬」に話を戻すと、フィンランド人の言う「よい冬」とはどんなものなのでだろう?
僕たちの一般的な考えでは、温和な冬を思い浮かべる。 しかし、彼らの言う「よい冬」とは、雪が降り、身が引き締まるような気候のようだ。
(フィンランドでは雪が降っても1メートルも2メートルも積もる事はなく、積雪はせいぜいで3-40センチぐらい)。
「雪が降ると、光の反射で外が明るくなる、冬のスポーツやレジャーが楽しめる、私達は乾燥してピリッと身が引き締まるような冷たい冬の空気が大好きなのだ」と彼らは言う。
そこには、長い冬をじっと耐え忍び、ひたすら春の訪れを待つなどといった光景は浮かんでこない。 短い夏を思う存分楽しみ、そして雪の降る冬の到来を心待ちにしているかのようだ。
事実、フィンランドで暮らしてみると、彼らがいかに自然の移り変わりを楽しみ、自分たちの自然を愛し、誇りを持っているかがよくわかる。

フィンランドの冬の暮らしとは、どの様なものだろう?
1年の半分近くを氷点下の気温の中で暮らす、人口550万人の人々が世界有数の生活水準を維持し、冬も快適な生活をするためには、私達の想像をはるかに越えた努力と多くの生活の知恵が必要であろうことは容易に推測できます。
社会施設や道路の維持、交通機関の整備、「よい冬」を暮らすための住宅設備など、数え上げたらキリがありません。


写真2: 9月中旬に初雪! 僕がタンペレに滞在した年は、例年より冬の到来が早かったのか、9月の中旬に初雪が降った。 学生寮の部屋の窓から外を見ると雪! 思わずシャッターを切った。


フィンランドの住宅では夜、雨戸や断熱戸を閉める習慣はない。 夜になっても寝るとき以外は、あまりカーテンやブラインドも閉めないので、部屋の明りは街並みに家庭のぬくもりを伝えます。
夜になるとカーテンだけでなく雨戸も閉め、真っ暗になってしまう日本の住宅地の様子とは大きな違いです。 人の心を暖かくするというのは、こういったことにもよるのでしょう。

日本のある外交官は、「寒さというものは同じでない。 ストックホルムの寒さと、モスクワの寒さ、そして東京の寒さは、気温の差のみではなく、それぞれに寒さの質が違うのである。 寒さは気温の差だけでは語れるものではない」と彼の経験を通して語っている。

北海道の人達が、東京の冬は寒いというのをよく耳にしますが、フィンランドの友人達も同様のことを言います。
寒さを感じるとは住宅の造りや暖房設備はもちろん、衣服、家具、そして人々の暮らし方にまで関係があるのでしょう。
そう考えると、もしかすると東京での冬の生活は、世界の中でも相当寒く、僕たちこそ冬を耐え忍んでいるのかもしれない。


写真3: 広場でのアイスホッケー。
町のいたる所につくられた即席のスケートリンクからは、
子供たちの賑やかな歓声が聞こえてくる。

【写真・撮影】 管理人
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「フィンランドの人々の冬の暮らし」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
2022年
2010年
2007年
人気記事