鉄道員 労働者の汗の匂いと少年の笑顔がよりそう
前掲:http://blog.goo.ne.jp/isc_info/e/b6f126bb08da1f2ba5c280f288050cce
映画とはこんなにも素晴らしいものだと、感動した。テーマ音楽はカルロ・ルスティケリの名曲。甘くせつないメロディ。この作品によって映画にのめりこむようになったのだ。1956年作のピエトロ・ジェルミ監督・主演の傑作。そしてエドアルド・ネヴェラ少年の傑作。
50歳のクリスマスを迎えた鉄道機関士アンドレア・マルコビッチ(ピエトロ・ジェルミ)は、末っ子のサンドロ(エドアルド・ネヴェラ)から英雄のように慕われていた。なぜなら、アンドレアは銀モールに輝く制帽をかぶり、最新式の電気機関車を運転し、誰よりも酒を飲み、誰よりも巧くギターを弾いたから。だが、長女のジュリア(シルバー・コシナ)と長男のマルチェロ(レナート・スペツィアーリ)には、厳格で律儀で一徹な父親がやりきれなかった。長女も長男も問題をかかえており、やがて父親と衝突する事は避けられない情勢だった。今まで持ちこたえていたのは、優しく、献身的な母親サーラ(ルイザ・デラ・ノーチェ)がいればこそ。
長女ジュリアは近所の食料品店の青年レナート(カルロ・ジュフレ)を愛していたが、少し前から二人の仲はしっくり行かなくなっていた。しかも、彼女はレナートの子を宿していた。このことを知って激怒した父親はレナートとの結婚を急がせ、すべてを諦めたジュリアは、レナートと結婚式をあげた。しかし、まもなく彼女は流産。夫との仲も父との仲もうまくいかなくなった。
長男のマルチェロは、夫の犠牲になって忍従の母親に同情し、横暴な父を憎み、我が家を嫌い、不良と付き合うようになっていた。ただ末っ子のサンドロだけが、相変わらず無邪気に振舞っていた。
月日が過ぎ、ある日アンドレアが運転する列車に若者が身を投げた。急ブレーキをかけたが、間に合わなかった。それを気に病んだ彼は、赤信号を見落とし、危うく衝突事故を起こしそうになった。
この事件により、アンドレアは取調べを受け、操車場の機関士に格下げされてしまった。労組大会に自分の立場を訴えたが、親身に考えてもらえなかった。緊張続きの激務に神経をすり減らしている機関士の実情を解って欲しかったのだ。
この事件以来アンドレアは悩み、酒に溺れ、孤独になっていった。そして破局が訪れる。激しく父親と対立した長男のマルチェロは、仲裁に入った母親に手をかけた父親を見て、この家から姿を消した。ジュリアも夫との生活に耐え切れず、夫の家を出て、洗濯女工に自活の道を求めた。
鉄道のゼネストが決行された。アンドレアは親友リベラーニ(サロ・ウルツィ)が止めるのを振り切って、最新式の電気機関車を運転した。しかし、これは同志を裏切るスト破りだ。結果、彼は全く孤立し、人々の冷たい目は、罪も無いサンドロの上にまで浴びせかけられた。アンドレアは、ぷっつり職場に行かなくなった。酒場から酒場へ入り浸って、妻ともサンドロとも口をきかない。そのうち家にも帰らなくなった。サンドロはたまらなく淋しく、リベラーニおじさんの助けをかりて父を探し求めた。
一軒の酒場に父の疲れ果てた姿を見つけた。アンドレアはいたいけなわが子の愛情にほだされ、リベラーニたち旧友がたむろする酒場に入った。そこは機関士仲間が、いつも仕事が終わると楽しく酒をくみかわし、ギターを弾きながら合唱して、互いの友情を暖めあった思い出の場所だ。
旧友達は気持ちよくアンドレを迎えてくれた。よみがえる友情。彼は以前のように仲間の中心になってギターを弾き、久しぶりに愉快な酒を飲むことが出来た。が、彼は泥酔して、卒中の為倒れてしまった。それから3ヶ月、彼は病の床についていた。
めぐり来るクリスマスの前夜、アンドレアは小康を得て、妻とサンドロと三人でささやかなクリスマス・イブの食卓を囲んでいた。その時、家出していた長男のマルチェロがリベラーニにつれられて、戻ってきた。隣人達もやって来た。クリスマスのパーティーがたけなわの頃、ジュリアからの電話がかかり、涙もろくなった父親を感動させた。アンドレアの心は弾み、ギターを取って昔懐かしい曲をかなでる。何もかもが昔に戻ったようだ。やがて、夜半すぎ、皆は教会に出かけた。残ったアンドレアと妻。彼女は台所でコーヒーを沸かしていた。アンドレアはベッドでギターを弾きながら妻のためにセレナーデを爪弾きながら、話しかけていた。やがて話し声は止み、彼の手からギターが落ちた。最後の響きを残し・・・・・・