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ジャン・ギャバン演じる初老のトラック運転手と街道筋の安宿の若い女中のどうしようもない恋。
初老のトラックの運転手ジャン(ジャン・ギャバン)はボルドオに近い国道のそばにある『キャラバン』という運転手達の常宿の一室に疲れた身体を横たえる。だが彼の頭はさえ今までの思い出が次々に浮かぶ。----彼は丁度一年前のクリスマスの晩、この『キャラバン』に辿りついた。新入の女中クロー(フランソワーズ・アルヌール)がいた。二人はお互に好意を持つ。その後、この国道を通る度に、ジャンはクローに会いに寄り、二人の仲は深くなる。ジャンの家庭は、冷く陰気だった。下町の貧しいアパートへ幾日ぶりかで帰っても、彼を迎えるのは冷い家庭だった。パリとボルドオ間を行く大型トラックの定期便を運転して、五十近くまで働いてきた。鬱積した不満は、若いクローへの愛情となって燃え上る。ジャンは暗い家庭を捨てて、新しい人生に踏み出そうと決心した。が、些細なことから使用者と云い争い、首になってしまう。ジャンはクローへの連絡が出来なくなった。クローは不安だった。手紙で、妊娠を知らせる。それでも何の返事もない。パリに出てきたクローはジャンの失業を知り、妊娠を打明けずに立去り、ルピック街の安宿の女中となり、女将のすすめで、堕胎医のところへ行く。その翌日、ジャンは、自分の娘(ダニー・カレル)がクローの手紙を勝手に開封していたことを知った。怒って家を飛び出した。その時、昔の同僚から新しい勤め口が見つかったという知らせ。ジャンはその夜のうちに、再びトラック運転手としてパリを離れることになった。彼はよろこんで、ルピック街の安宿からクローを連れ出し、トラックに乗せる。雨と風に包まれた夜の国道を、幾時間もトラックは走り続ける。途中クローの容態が悪化してくる。『キャラバン』まではまだ遠い。風雨はますます烈しく、見通しが利かない。明方近く、トラックは『キャラバン』に辿りつく。一年前のクリスマスの夜、初老のトラック運転手と二十の可憐な女中がめぐりあった『キャラバン』の前----だが、その時クローはもうこの世の人ではなかった。
なんか淋しい映画だった。ジャン・ギャバンが渋い。