やはり、こういう見方が妥当なのだろう。産経の社説だ。
<【主張】中国の権力闘争 対外強硬策は願い下げだ>
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140731/chn14073103090002-n1.htm
■中国の習近平国家主席にとり最大の政敵とされた周永康・前党政治局常務委員が、汚職の罪に問われることになった。
周氏失脚劇は、汚職腐敗追放という名分の下、政敵を追い落とした権力闘争の色彩も濃い。これにより習主席への権力集中が進み、その対外強硬路線がさらに強化されることが案じられてならない。
周氏は石油利権と治安機関を一手に支配し、巨万の富を不正に蓄えていたという。背後には江沢民元国家主席ら党内長老までが控え、習指導部もこれまで容易に手が出せなかったとされる。
汚職と腐敗は、高度成長が長期に続く過程で中国国内に蔓延(まんえん)し、その一掃は、習政権が唱えるまでもなく最大課題のひとつだ。周氏のような大物を摘発することは、その意味でも効果的だろう。
問題は、法治が確立せず政治の透明性も欠いた密室の中で公正さや公平さとほど遠い、恣意(しい)的な犯罪追及が行われていることだ。実際、主席を支える古参党幹部の子弟グループ太子党に司直の手が伸びるとは誰も思っていない。
そもそも、共産党一党独裁によって党幹部に権力と、改革開放政策で生み出された富とが集中している政治体制こそ、汚職腐敗の最大の温床である。
中国の指導者が、その根絶を真に目指すのであれば、経済だけでなく政治の自由化、民主化にも踏み出すべきだろう。
その意図も覚悟もないまま、今回の権力闘争勝利で習主席の政権基盤が固まったとしたら、どうなるか。日本などにとって最悪の事態は、その強大な権力の下で、東シナ海や南シナ海での強引な海洋権益拡大に代表される対外強硬姿勢が今以上に強まり、地域が不安定化しかねないことだ。 日本として地域として、到底受け入れ難い状況である。
習指導部の強硬姿勢は当然、国内にも及ぶ。少数民族ウイグル族に対する弾圧が続く新疆ウイグル自治区では、それへの抵抗とみられる流血事件がまた起きた。「一国二制度」が約束されたはずの香港ですら、普通選挙を求める市民の声が押しつぶされつつある。
か
権力の集中が、さらなる腐敗と貧富の格差を生むことが案じられる。その結果、国内の不満をそらす「目眩(くら)まし」として、また対外強硬路線が強まることを警戒しなければならない。■
読売も社説でこう書いている。
<周永康氏摘発 腐敗蔓延の陰で続く権力闘争>
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140730-OYT1T50175.html
■・・・・・・・・・・
習氏は現在、治安対策や経済改革の指導組織のトップに相次いで就任するなど、自身への権限集中を急いでいる。
周氏を摘発し、その背後にいる石油閥など既得権益層や江氏の影響力を排除することは、習氏が権力基盤を固める一環と言えよう。ただ、これで習政権が盤石になると見るのは早計だ。
周氏摘発は一時的に民衆に歓迎されるとしても、根深い党の腐敗体質に変わりはない。習氏の強引な手法に対する党内の反発が強まる恐れもある。中国の社会と政治の安定は、なお遠い。
内政が不安定化すれば、習氏は国民の愛国心に訴えるため、独善的な対外姿勢を強めかねない。日本は、腐敗摘発の陰で続く権力闘争を注視する必要がある。■
政局の混乱を予想する記事もある。
<「反腐敗」という名の“粛清”に反撃も 江・胡両派が連携の可能性>
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140730/chn14073011540006-n1.htm
■【北京=矢板明夫】中国で習近平政権による汚職追及の最大標的とみられてきた中国共産党の前政治局常務委員、周永康氏の取り調べが発表された。経済利権と治安機関を握り続けた周氏をも排除したことで、習主席の求心力を高め、政権基盤の強化につなげようとの思惑がある。しかし、伝統的な権力闘争の手法で、政敵を失脚に追い込んだことは党内の政治バランスを崩し、今後、政局の混乱をもたらす可能性もある。
中国国営新華社通信が「周永康氏への調査」を発表した直後の29日夕、中国の有力経済誌「財経」(電子版)は、周氏の息子の周浜氏が、「違法経営」の疑いで湖北省宜昌市当局に逮捕されることが決まったと報じた。父の政治的な影響力を利用して、石油利権の売買で不正な利益を得た疑いが持たれているという。また、周氏の歴代6人の秘書のうち、すでに5人が失脚しており、弟夫婦や、息子の妻の家族からも複数の逮捕者が出ている。習指導部が政敵を倒すのに、その一族郎党を一網打尽にする前近代的な政治手法に対し、党内から批判の声もあるという。・・・・・・・・■
政治の混乱が社会の動揺や混乱につながれば、中国政府は国内の統制を強化し、少数民族の弾圧を強める一方、日本など周辺諸国にもさらなる強硬姿勢で臨んでくる懸念があるのだ。産経の社説が言う通り、富と権力の集中、腐敗と汚職は独裁体制の産物である。「経済だけでなく政治の自由化、民主化にも踏み出すべきだろう」が、無理というものであろう。はた迷惑な「大国」の独善と暴走はまだまだ続くだろう。
【産経抄】はこう書く。<王朝衰退の兆し>http://sankei.jp.msn.com/world/news/140731/chn14073103060001-n1.htm
■・・・・・・・・・
▼そもそも、底なしといっても過言ではない、共産党幹部の腐敗の根絶が、果たして可能なのか。習政権が発足した際、英紙フィナンシャル・タイムズは、腐敗が続いて滅びた清朝の例を挙げて分析していた。その中で指摘したのは、中国共産党の「王朝衰退の兆し」である。■
中国国営新華社通信が29日、新疆ウイグル自治区カシュガル地区ヤルカンド県で28日、武装グループが派出所や地方政府庁舎を襲撃し、数十人が死傷したと報じ、英BBC放送が死者は13人と伝えた事件は、かなり大規模な暴動であったらしい。読売が伝えている。
<新疆襲撃、千人規模の騒乱か…警察はテロと断定>
http://www.yomiuri.co.jp/world/20140730-OYT1T50147.html?from=ycont_top_txt
■「外部の車は一切入れない」――。ヤルカンド中心部に入る幹線道路に設けられた検問所では、警察官が語気を強め、車を追い返していた。街の中の様子は全くうかがえなかった。
衝突現場から約150キロ・メートル離れたカシュガル地区中心部でも、武装警察の装甲車など多数の警察車両が巡回し、厳戒態勢が敷かれた。インターネットは遮断され、ほとんどの商店は当局から営業停止を求められた。ある商店の男性は「まるで戒厳令のようだ」と困惑していた。
新華社通信によると、事件の概要は、暴徒が地元警察署などを襲撃後、漢族の住民なども襲って数十人の死傷者を出し、暴徒数十人が射殺されたというもの。警察は事件を「テロ」と断定している。■
産経もこう書いている。当局が情報を隠し、詳細は不明のままなのだ。
<中国当局「卑劣なテロ」 詳細は伏せたまま>
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140730/chn14073021060010-n1.htm
■【北京=川越一】中国北西部の新疆ウイグル自治区カシュガル地区ヤルカンド県で28日早朝に起きた武装グループによる殺傷事件について、当局は30日、事件の詳細を伏せたまま情報を統制し、卑劣な暴力テロとの側面を強調している。
同自治区の政府系ニュースサイト、天山網は同日、事件がイスラム教の断食明けの祝日「肉孜節」の前日に起きたことに、各民族が反発していると報道。自治区政府幹部らの「肉孜節前日のテロは許すことのできない罪だ」「目的は新疆の社会環境を破壊することだ」といった声を伝えた。
また、ウイグル族と同じイスラム教を信仰する回族の女性は「肉孜節はわれわれムスリムにとって非常に重要な祝日だ。そんな日に騒ぎを起こすのは、自分たち自身も尊重していない」と非難した。
一方で当局は、中国版ツイッター「微博」などに投稿された関連情報を削除している。中国メディアには、国営新華社通信を通じて事件が正式に発表されるまで、箝口(かんこう)令が出されたという。
同自治区などでウイグル族によるとみられる殺傷事件が続発したことを受け、習近平指導部は少数民族の反政府活動を力で抑えようとしていた。情報の統制には、少数民族政策が失敗している現実を覆い隠す狙いがうかがえる。■
こんな中国に甘いアメリカに対しては、不安の声がある。
<【湯浅博の世界読解】対中抑止怠れば大きな代償 リムパックを交流の場に変えた米国>
■米国のオバマ政権はいまだ、中国が既存の国際秩序を尊重する「責任あるステークホルダー(利害関係者)」になるとの幻想を抱いているのだろうか。ハワイ周辺で実施中の環太平洋合同演習(リムパック)に、中国を招待したことからそうした残滓(ざんし)があるのかと思う。従来の関与政策が成果を上げられなかったからこそ、オバマ大統領は「リバランス」という対中再均衡の必要に迫られたのではなかったか。
多国間の軍事演習は、仮想敵を描くことで共同作戦能力を高めることができる。だが、オバマ政権がリムパックに当の中国を招待したことで、軍事演習を単なる軍事交流の場に変えてしまった。中国からみれば、初参加で友好のポーズを示し、他の参加21カ国の敵対意欲を無力化することができる。
米国の安全保障専門家の間には、リムパックを北大西洋条約機構(NATO)型の多国間同盟に格上げする議論が出ていた。米国の力の低下を補うために、それまでの日米、米韓、米豪という2国間同盟の枠組みから、クモの巣状の多国間連携で対中優位を確保する。新興大国の拡張主義を抑止するには、多数国の結束力がものをいう。
これまでも、中国に対するオバマ政権の甘い期待は裏切られてきた。今回もまた、中国は4隻の主要艦を派遣しただけでなく、ホノルルの沖合には、ひそかに海軍情報収集艦「北極星」を送り込んでいた。この“スパイ艦”は、参加国が発信する電子情報を傍受するのが目的で、「公海自由の原則」を逆手に米国の好意を踏みにじった。
中国のステークホルダー拒否は、これら安全保障面だけではない。外交面でも米国の「アジア回帰」に対して、カウンターパンチを“米国の裏庭”で見舞っていた。習近平国家主席による南米各国の訪問である。
とりわけ、ブエノスアイレス訪問では、英国とアルゼンチンのフォークランド紛争に言及し、「中国はアルゼンチンの主権要求を断固として支持する」と宣言している。フォークランドはアルゼンチン沖に浮かぶ英領諸島である。1982年にアルゼンチン軍が侵攻し、英軍の機動部隊が反撃して2カ月後に英国が勝利した。だが、いまもアルゼンチンと英国の領有権問題がくすぶっている。
習主席は英国を怒らせてまでも南米諸国を取り込み、米国と同盟国を牽制(けんせい)する外交戦略を優先させる。フォークランド諸島を尖閣諸島(沖縄県石垣市)に見立てて日本を牽制し、英国に対しては、香港の政治的自由を制限する中国の決定に、口をはさまぬよう布石を打っている。
習近平政権の日米欧に対する強気の姿勢は、主要国経済が中国への輸出依存度を高め、そこに活路を見いだしている現状がある。メルケル独首相は7度目の訪問を終え、キャメロン英首相も昨年末に100人以上の経済人を引き連れて訪中した。
しかし、軍事大国の拡張主義を抑止しなければ、かつて米ソ緊張緩和時代にソ連がひそかに軍拡を進めて近隣国に侵攻したような事態になりかねない。英誌エコノミストがキャメロン政権に対して送った警告は正鵠(せいこく)を得ていよう。
「中国と対峙(たいじ)すれば、英国の企業は高い代償を払うことになる。しかし、対峙しなければ、英国は国家としてより大きな代償を払うことになろう」■
「核なき世界」を夢想し、ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領。理想に目を泳がせ、地に足が着かない「甘い幻想」のツケは大きく重い。シリアで、イラクで、ウクライナで。
<【主張】中国の権力闘争 対外強硬策は願い下げだ>
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140731/chn14073103090002-n1.htm
■中国の習近平国家主席にとり最大の政敵とされた周永康・前党政治局常務委員が、汚職の罪に問われることになった。
周氏失脚劇は、汚職腐敗追放という名分の下、政敵を追い落とした権力闘争の色彩も濃い。これにより習主席への権力集中が進み、その対外強硬路線がさらに強化されることが案じられてならない。
周氏は石油利権と治安機関を一手に支配し、巨万の富を不正に蓄えていたという。背後には江沢民元国家主席ら党内長老までが控え、習指導部もこれまで容易に手が出せなかったとされる。
汚職と腐敗は、高度成長が長期に続く過程で中国国内に蔓延(まんえん)し、その一掃は、習政権が唱えるまでもなく最大課題のひとつだ。周氏のような大物を摘発することは、その意味でも効果的だろう。
問題は、法治が確立せず政治の透明性も欠いた密室の中で公正さや公平さとほど遠い、恣意(しい)的な犯罪追及が行われていることだ。実際、主席を支える古参党幹部の子弟グループ太子党に司直の手が伸びるとは誰も思っていない。
そもそも、共産党一党独裁によって党幹部に権力と、改革開放政策で生み出された富とが集中している政治体制こそ、汚職腐敗の最大の温床である。
中国の指導者が、その根絶を真に目指すのであれば、経済だけでなく政治の自由化、民主化にも踏み出すべきだろう。
その意図も覚悟もないまま、今回の権力闘争勝利で習主席の政権基盤が固まったとしたら、どうなるか。日本などにとって最悪の事態は、その強大な権力の下で、東シナ海や南シナ海での強引な海洋権益拡大に代表される対外強硬姿勢が今以上に強まり、地域が不安定化しかねないことだ。 日本として地域として、到底受け入れ難い状況である。
習指導部の強硬姿勢は当然、国内にも及ぶ。少数民族ウイグル族に対する弾圧が続く新疆ウイグル自治区では、それへの抵抗とみられる流血事件がまた起きた。「一国二制度」が約束されたはずの香港ですら、普通選挙を求める市民の声が押しつぶされつつある。
か
権力の集中が、さらなる腐敗と貧富の格差を生むことが案じられる。その結果、国内の不満をそらす「目眩(くら)まし」として、また対外強硬路線が強まることを警戒しなければならない。■
読売も社説でこう書いている。
<周永康氏摘発 腐敗蔓延の陰で続く権力闘争>
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140730-OYT1T50175.html
■・・・・・・・・・・
習氏は現在、治安対策や経済改革の指導組織のトップに相次いで就任するなど、自身への権限集中を急いでいる。
周氏を摘発し、その背後にいる石油閥など既得権益層や江氏の影響力を排除することは、習氏が権力基盤を固める一環と言えよう。ただ、これで習政権が盤石になると見るのは早計だ。
周氏摘発は一時的に民衆に歓迎されるとしても、根深い党の腐敗体質に変わりはない。習氏の強引な手法に対する党内の反発が強まる恐れもある。中国の社会と政治の安定は、なお遠い。
内政が不安定化すれば、習氏は国民の愛国心に訴えるため、独善的な対外姿勢を強めかねない。日本は、腐敗摘発の陰で続く権力闘争を注視する必要がある。■
政局の混乱を予想する記事もある。
<「反腐敗」という名の“粛清”に反撃も 江・胡両派が連携の可能性>
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140730/chn14073011540006-n1.htm
■【北京=矢板明夫】中国で習近平政権による汚職追及の最大標的とみられてきた中国共産党の前政治局常務委員、周永康氏の取り調べが発表された。経済利権と治安機関を握り続けた周氏をも排除したことで、習主席の求心力を高め、政権基盤の強化につなげようとの思惑がある。しかし、伝統的な権力闘争の手法で、政敵を失脚に追い込んだことは党内の政治バランスを崩し、今後、政局の混乱をもたらす可能性もある。
中国国営新華社通信が「周永康氏への調査」を発表した直後の29日夕、中国の有力経済誌「財経」(電子版)は、周氏の息子の周浜氏が、「違法経営」の疑いで湖北省宜昌市当局に逮捕されることが決まったと報じた。父の政治的な影響力を利用して、石油利権の売買で不正な利益を得た疑いが持たれているという。また、周氏の歴代6人の秘書のうち、すでに5人が失脚しており、弟夫婦や、息子の妻の家族からも複数の逮捕者が出ている。習指導部が政敵を倒すのに、その一族郎党を一網打尽にする前近代的な政治手法に対し、党内から批判の声もあるという。・・・・・・・・■
政治の混乱が社会の動揺や混乱につながれば、中国政府は国内の統制を強化し、少数民族の弾圧を強める一方、日本など周辺諸国にもさらなる強硬姿勢で臨んでくる懸念があるのだ。産経の社説が言う通り、富と権力の集中、腐敗と汚職は独裁体制の産物である。「経済だけでなく政治の自由化、民主化にも踏み出すべきだろう」が、無理というものであろう。はた迷惑な「大国」の独善と暴走はまだまだ続くだろう。
【産経抄】はこう書く。<王朝衰退の兆し>http://sankei.jp.msn.com/world/news/140731/chn14073103060001-n1.htm
■・・・・・・・・・
▼そもそも、底なしといっても過言ではない、共産党幹部の腐敗の根絶が、果たして可能なのか。習政権が発足した際、英紙フィナンシャル・タイムズは、腐敗が続いて滅びた清朝の例を挙げて分析していた。その中で指摘したのは、中国共産党の「王朝衰退の兆し」である。■
中国国営新華社通信が29日、新疆ウイグル自治区カシュガル地区ヤルカンド県で28日、武装グループが派出所や地方政府庁舎を襲撃し、数十人が死傷したと報じ、英BBC放送が死者は13人と伝えた事件は、かなり大規模な暴動であったらしい。読売が伝えている。
<新疆襲撃、千人規模の騒乱か…警察はテロと断定>
http://www.yomiuri.co.jp/world/20140730-OYT1T50147.html?from=ycont_top_txt
■「外部の車は一切入れない」――。ヤルカンド中心部に入る幹線道路に設けられた検問所では、警察官が語気を強め、車を追い返していた。街の中の様子は全くうかがえなかった。
衝突現場から約150キロ・メートル離れたカシュガル地区中心部でも、武装警察の装甲車など多数の警察車両が巡回し、厳戒態勢が敷かれた。インターネットは遮断され、ほとんどの商店は当局から営業停止を求められた。ある商店の男性は「まるで戒厳令のようだ」と困惑していた。
新華社通信によると、事件の概要は、暴徒が地元警察署などを襲撃後、漢族の住民なども襲って数十人の死傷者を出し、暴徒数十人が射殺されたというもの。警察は事件を「テロ」と断定している。■
産経もこう書いている。当局が情報を隠し、詳細は不明のままなのだ。
<中国当局「卑劣なテロ」 詳細は伏せたまま>
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140730/chn14073021060010-n1.htm
■【北京=川越一】中国北西部の新疆ウイグル自治区カシュガル地区ヤルカンド県で28日早朝に起きた武装グループによる殺傷事件について、当局は30日、事件の詳細を伏せたまま情報を統制し、卑劣な暴力テロとの側面を強調している。
同自治区の政府系ニュースサイト、天山網は同日、事件がイスラム教の断食明けの祝日「肉孜節」の前日に起きたことに、各民族が反発していると報道。自治区政府幹部らの「肉孜節前日のテロは許すことのできない罪だ」「目的は新疆の社会環境を破壊することだ」といった声を伝えた。
また、ウイグル族と同じイスラム教を信仰する回族の女性は「肉孜節はわれわれムスリムにとって非常に重要な祝日だ。そんな日に騒ぎを起こすのは、自分たち自身も尊重していない」と非難した。
一方で当局は、中国版ツイッター「微博」などに投稿された関連情報を削除している。中国メディアには、国営新華社通信を通じて事件が正式に発表されるまで、箝口(かんこう)令が出されたという。
同自治区などでウイグル族によるとみられる殺傷事件が続発したことを受け、習近平指導部は少数民族の反政府活動を力で抑えようとしていた。情報の統制には、少数民族政策が失敗している現実を覆い隠す狙いがうかがえる。■
こんな中国に甘いアメリカに対しては、不安の声がある。
<【湯浅博の世界読解】対中抑止怠れば大きな代償 リムパックを交流の場に変えた米国>
■米国のオバマ政権はいまだ、中国が既存の国際秩序を尊重する「責任あるステークホルダー(利害関係者)」になるとの幻想を抱いているのだろうか。ハワイ周辺で実施中の環太平洋合同演習(リムパック)に、中国を招待したことからそうした残滓(ざんし)があるのかと思う。従来の関与政策が成果を上げられなかったからこそ、オバマ大統領は「リバランス」という対中再均衡の必要に迫られたのではなかったか。
多国間の軍事演習は、仮想敵を描くことで共同作戦能力を高めることができる。だが、オバマ政権がリムパックに当の中国を招待したことで、軍事演習を単なる軍事交流の場に変えてしまった。中国からみれば、初参加で友好のポーズを示し、他の参加21カ国の敵対意欲を無力化することができる。
米国の安全保障専門家の間には、リムパックを北大西洋条約機構(NATO)型の多国間同盟に格上げする議論が出ていた。米国の力の低下を補うために、それまでの日米、米韓、米豪という2国間同盟の枠組みから、クモの巣状の多国間連携で対中優位を確保する。新興大国の拡張主義を抑止するには、多数国の結束力がものをいう。
これまでも、中国に対するオバマ政権の甘い期待は裏切られてきた。今回もまた、中国は4隻の主要艦を派遣しただけでなく、ホノルルの沖合には、ひそかに海軍情報収集艦「北極星」を送り込んでいた。この“スパイ艦”は、参加国が発信する電子情報を傍受するのが目的で、「公海自由の原則」を逆手に米国の好意を踏みにじった。
中国のステークホルダー拒否は、これら安全保障面だけではない。外交面でも米国の「アジア回帰」に対して、カウンターパンチを“米国の裏庭”で見舞っていた。習近平国家主席による南米各国の訪問である。
とりわけ、ブエノスアイレス訪問では、英国とアルゼンチンのフォークランド紛争に言及し、「中国はアルゼンチンの主権要求を断固として支持する」と宣言している。フォークランドはアルゼンチン沖に浮かぶ英領諸島である。1982年にアルゼンチン軍が侵攻し、英軍の機動部隊が反撃して2カ月後に英国が勝利した。だが、いまもアルゼンチンと英国の領有権問題がくすぶっている。
習主席は英国を怒らせてまでも南米諸国を取り込み、米国と同盟国を牽制(けんせい)する外交戦略を優先させる。フォークランド諸島を尖閣諸島(沖縄県石垣市)に見立てて日本を牽制し、英国に対しては、香港の政治的自由を制限する中国の決定に、口をはさまぬよう布石を打っている。
習近平政権の日米欧に対する強気の姿勢は、主要国経済が中国への輸出依存度を高め、そこに活路を見いだしている現状がある。メルケル独首相は7度目の訪問を終え、キャメロン英首相も昨年末に100人以上の経済人を引き連れて訪中した。
しかし、軍事大国の拡張主義を抑止しなければ、かつて米ソ緊張緩和時代にソ連がひそかに軍拡を進めて近隣国に侵攻したような事態になりかねない。英誌エコノミストがキャメロン政権に対して送った警告は正鵠(せいこく)を得ていよう。
「中国と対峙(たいじ)すれば、英国の企業は高い代償を払うことになる。しかし、対峙しなければ、英国は国家としてより大きな代償を払うことになろう」■
「核なき世界」を夢想し、ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領。理想に目を泳がせ、地に足が着かない「甘い幻想」のツケは大きく重い。シリアで、イラクで、ウクライナで。