一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

10月衆院選なら日経平均株価は一段高か、注目される自民党総裁選の日程

2024-08-16 12:49:48 | 経済

 16日の東京市場で日経平均株価が3万8000円台を回復した。背景には米景気失速懸念の後退によるドル高・円安の動きや、今年4-6月期における名目国内総生産(GDP)の600兆円乗せに対する海外勢の好感がある。

 そこに岸田文雄首相の自民党総裁選への不出馬表明が加わり、にわかに早期の衆院解散・総選挙への思惑が浮上。衆院選を意識した経済対策の打ち上げの可能性が出ており、株式市場がこの状況を織り込み始めると株価の一段高が進行すると筆者は予想する。永田町では10月27日の衆院選投開票の観測もあり、9月から10月にかけてマーケットは国内政局の大変動を織り込んでいくのではないか。

 

 <後退する9月の50bp米利下げ、円安地合いに追風>

 16日の日経平均株価が上昇した背景には、米景気失速が回避されて9月の米連邦公開市場委員会(FOМC)における50ベーシスポイント(bp)の利下げ観測が後退したことがある。その材料として、7月米小売売上高が前月比1.0%増と、市場予想の0.3%増を上回ったことや、15日公表の米新規失業保険申請件数が、前週比7000件減の22万7000件と市場予想(23万5000件)を下回り、2週連続での減少となったことが材料視された。

 これを受けて15日の10年米国債利回り(長期金利)は3.928%まで上昇。ドル/円は149円前半までドル高・円安が進んだ。

 こうした海外市場の流れに加え、前日に公表された2024年4-6月期GDPで名目GDPが年換算607兆円と初めて600兆円台に乗せたことも海外勢が注視。16日の日経平均株価が前日比で1300円超の上げとなる主要な要因になった。

 

 <20日に決まる総裁選日程、9月5日告示・20日投開票の可能性>

 筆者は、岸田首相の事実上の退陣表明で急速に注目度を高めている自民党総裁選が、今後の株価の一段高をもたらす要因として週明けの東京市場で注目されると予想する。

 20日には自民党総裁選管理委員会が開催され、総裁選の日程が決まる。事情に詳しい関係者の話を総合すると、9月5日告示・20日投開票の日程が決定される公算が大きいという。

 9月20日に新総裁が決まると、時間をおかずに臨時国会が召集され、新首相の指名と組閣が行われる。今回の総裁選では、40代のニューリーダー誕生かと国内メディアが注目する可能性があり、だれが当選しても新総裁・新首相の人気は高まり、高支持率で新内閣がスタートする公算が大きい。

 新首相を支える自民党の中では、人気のあるうちに衆院選を戦いたいとの声が高まることが確実であり、首相指名のための臨時国会会期中に衆院を解散する可能性が極めて高いと筆者は予想する。 

 また、秘書給与をめぐる詐欺容疑で東京地検特捜部から家宅捜査を受けた広瀬めぐみ参院議員(岩手選挙区、自民党離党)が15日に議員辞職し、10月27日に補欠選挙が行われる見通しとなったことで、仮に臨時国会での衆院解散を新首相が決断した場合、10月27日に衆院選の投開票日が設定される可能性が出てきた。

 

 <税収上振れ、経済対策でアピール>

 新首相や自民党は、衆院解散前に経済対策を打ち出して補正予算を編成するか、経済対策の骨格を示して有権者にアピールする道筋を選択すると筆者は予想する。どのような政策が目玉になるかは新首相次第だが、岸田文雄政権の「遺産」とも言うべき税収の上振れがあり、財源のめどは立てやすい環境にある。

 マーケットは今のところ、自民党総裁選が史上空前の混戦になることを見込み、だれが新総裁になるか織り込みが進んでいない。したがって新首相誕生によるブームを当て込み、その先の株高を描いたシナリオはまだ、登場していない。

 

 <盛り上がりに欠ける立民代表選、自民優勢の思惑も株高に>

 だが、自民党総裁選と同時並行的に進む立憲民主党の代表選では、泉健太代表と競う候補者として注目を集めるような「ネーム」が浮上しておらず、永田町関係者の間では立憲民主党の代表にだれが選ばれても自民党の新総裁に対抗できず、このままの状況が続けば、岸田政権の下での総選挙とは一変し、自民党が勝利するとの声が早くも広がり出している。

 したがって新首相が早期の衆院解散・総選挙に打って出る可能性がかなり高まってきたと筆者は予想する。

 衆院解散・総選挙となれば、経済対策への期待感を伴って株高現象が現れるというのが過去に経験してきたパターンだ。最近では、こうした政治要因に対して国内勢よりも海外勢の方が先に反応する傾向があり、今回も総裁選の日程が確定すれば、海外勢が先に日本株買いを積極化させることもあるのではないか。

 ただ、14日の当欄でも指摘したように、肝心なのは日本経済の成長力を高めるために必要な政策は何か、ということを明確に指摘し、適切に行動することだ。単なるバラマキに終始すれば、衆院選という宴のあとに「二日酔い」の頭痛が襲ってくるだろう。

 いよいよ政治の季節とマーケットとのかかわりが注目される局面になりそうだ。


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