レントゲンを済ませたボクを待っていたのは、検尿だった。
昨日。
年に一度の健康診断が会社でありまして。
検尿。
甘酸っぱい響き。こればっかは思春期過ぎた今でもハニカミ。
普段、人様にお見せすることのない尿が祭り上げられる。
この日だけは尿が主役。
教習所の一角、ひっそりと佇むようにあるトイレ。
その入口には長机。
白衣のオッサンがひとりポツンと座っていた。
無愛想に「これに取ってきてください」と机の上の紙コップを指差す彼。
ほぉ、今日のボクの尿を色々と調べてくれるのはキミか…
と、オッサンの顔にチラッと目をやる。
アレ?この人、確か毎年検尿コーナーを担当してないか?
まじまじと観察していたボクはあることに気付く。
彼、机の上にペットボトル置いて仕事してた。緑茶の。
えええ!こんなシチュエーションで!?
検尿の合間にティーブレイクですか!うげぇ!ボクなら絶対できねぇ!!
お茶を、ボクの大好きなビールに置き換えて考えてみたらどうだろうか?
いや、さすがのビール大好き人間のボクでもね、検尿係しながらはビール飲めない。泡立つ分、お茶より無理。
というか、ビール飲みながら検尿係してたら、尿を肴にビール飲んでる変態みたいに思われちゃう分、お茶より無理。
…とか考えながら採尿した。
トイレから出ると、オッサンいつの間にかナイロン手袋してた。
そっち?と。
脳にナイロン手袋被せたほうがいいんじゃない?と。
無愛想に「ここに置いてください」と机の上の新聞紙を指差す彼。
そこへそっと紙コップを置いたボクはあることに気付く。
あんね、オッサンのペットボトルの中身と、ボクの紙コップの中身…
全く同じ色してた。
全くの伊右衛門茶濃いめ。
生き写し。
新生児だったら取り違えそうになるくらい。
ふたつの伊右衛門茶濃いめ。その距離わずか30cm。
ミラクル!まさかのニアミス!!
彼ね、それを顔色ひとつ変えず事務的に処理してた。
割り切れ過ぎ!
W不倫かってぐらい割り切れ過ぎ!!
あ。だからこのオッサン、検尿係に任命されたんだ。と思った。

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