11月2日、金沢を起点に名古屋回りで日帰り、というハードな仕事が舞い込んだ。翌日が祭日だったので、折角だから、ついでに遊んで帰ろうと娘を誘う。そこまでは良かったのだけれど、当日金沢でまる1日足止めを食らってしまった。
ファミレスで待たせた娘からは、「何時におわりますか?」とメールで催促。しかし取引先の段取りがいっこうに付かない。ようやくファミレスに着いても、今度は電話で名古屋の客先に平謝り。すっかり待ちくたびれた娘が一言、「たいへんねぇ~。」 そうなのよ、仕事って大変なのよ。でも、せっかく連れてきたのにごめんねぇ~。そんなこんなで夕方六時近くまで費やしてしまった。ようやく食事を摂りに金沢駅に向かう。駅ビル一階の百番街は加賀の物産を商うお店がひしめいている。その奥に、地物の魚を扱うお食事処が軒を連ね、中程にカウンターのみの寿司屋があった・・・。
先ずはお目当ての「のど黒」を注文。「白身の王様」と呼ばれる高級魚を一度食べてみたかった。ネタの側面に残した皮が炙ってある。これはう一番うま味のある皮ぎしの脂を熱で活性化させるためらしい。濃厚だが品の良い脂が美味。更に名物を所望すれば、「なめら」ときた。同じく白身ながら、驚くほど弾力のある締まった身と喉越しの甘みが独特。しかし我が娘、魚嫌いでまぐろ三昧以外食べるものがない。そこでお勧めを尋ねると「ぶりトロ」のお出まし。これがまた旨い。美しい桃色の肉肌にきめ細やかに差し込まれた脂。そこいらのマグロのトロよりも上質で深い味わい。さて近海のネタと言えば「白えび」。富山湾の特産品にして白く透き通った姿は「海の宝石」と呼ばれるらしい。シャリの上にふんだんに盛られたふくよかな身はなめらかに舌に絡む。そして「がす海老」。この聞き慣れない逸品は、日本海の限られた場所でしか取れない希少なもの。鮮度の低下が早く北陸以外では出回らないという。ボタン海老のように肉厚だが更にもっちりとした食感、口の中にほんのりと甘さが広がる・・・。阿東海にそっくりな、愛想の良い板前さんが、とても親切にしてくれた。高級店ではないけれど、「金沢まいもん寿司」いいよぉ~。
翌日、娘への名誉挽回にと、金沢の奥座敷、加賀温泉郷は山中温泉まで足を伸ばす。温泉ホテルの日帰り入浴コースと洒落込んだ訳だ。出がけに雲行きが怪しくなったかと思えば、間もなくスコールのような雨が降り出す。しかして加賀温泉駅から路線バスで到着すると、あら不思議、嘘のような好天になった。紅葉にはまだ早かったが、山間にて野趣満点の景観。さっそく御宿「花つばき」のエレベーターで階下に降り、更に渓流に通じる急勾配の小道を下れば、そこには広々とした野天風呂「湯畑」があった。木立に囲まれ、川のせせらぎの音を聞きながら、面々と連なる木造りの湯船に飽きるまで浸かって歩く。まさに大自然の中に身も心も同化していくような感覚。これはまれに見るアタリである。じっくり暖まって、体を解したところで、釜飯御膳をいただいた。締めて三千五百円也はお値打ちでしたよ・・・。