7月31日、ひいちゃんのご用命で、ジブリの『コクリコ坂から』を観に福島のワーナー・マイカル・シネマズまで行ってきた。ジブリ・ファンは良いのだけれど、彼女は最近流行りのシネマコンプレックス方式の映画館じゃないといけない。ショッピングセンターに併設されいて、沢山のスクリーンがあって、様々な映画が上映されて、テーマパークにあるような華やかな売店で、お好みのお菓子や飲み物を買い込み、座席の肘掛けのホルダーに大きな紙コップを置いて、これまた大きなポップコーンの紙カップを抱えながら映画を楽しむというスタイル。ほんまアメリカンですや~ん。
・・・思えば30年前、東京の名画座の硬い椅子に腰掛け、難解な前衛作品をなまくら頭で鑑賞して、居酒屋で受け売りのうんちくを語るような、少々勘違いな学生だった僕としては、この変わり様は想像もつかなかったことだけれど、一度極楽なスタイルに浸ってしまうともう元には戻れないらしい・・・。
・・・そして2年前。どこから観ても完全なオッサンに成ってしまった僕は、ひいちゃんが友達の披露宴で演奏するのを待つ間、ここに『沈まぬ太陽』を観に来ていた。久々に独りの時間を満喫すべく、準備万端、コーラのLカップとレギュラーサイズのポップコーン(と言っても湯桶ぐらいはある)をトレイに乗せて、ウキウキとシアターの中へ。
指定席に座ろうとすると、奥に年配の2人連れ。団塊の世代あたりか。すると、その奥さんとおぼしき白髪交じりの女性が「まったくっー!」と吐き捨てるように呟いて、こちらを睨んだ。「だから・・・なのよ。まったくっー。」何かトゲのある言葉が響いてくる。横の旦那らしき男は困ったような顔をしして、こちらに一瞥くれてから目を反らした。一瞬、“なにをーっ!”と癇癪を起こしそうになったが、向こうの意図が読めてバカらしくなった。
要するに、“私のような教養人が文芸作品を鑑賞しようとしているのに、この下品な男はなに?!だからこんなところに来たくなかったのよ!”ってことなんだろう。“ならば尼寺へ行けーっ!じゃなくてフォーラムへ行けーっ!TPOも理解出来ない中途半端なエセ文化人め!”こういう傲慢で鼻持ちならない輩が一番始末が悪い。腹立ち紛れにポップコーンをお代わりしてボリボリ食ってやった(それだって、今は大いに改善されて、ポリ袋をガシャガシャさせる必要もなく、飲み物の瓶や缶が階段を転げ落ちることもない)。まあ、こちらも大人げないと言えば、大人げないが・・・
さて、大分遅れて中央のフロアに入ると、いつにも増して大賑わい。夏休み真っ直中で天気の悪い日曜日ときたものだから、家族連れが大挙して押し寄せて、売店付近にわんさと群がっている。この列に並んだらもっと遅れるなぁと思っている間に「あたし買ってるから。」と言ってひいちゃんはさっさと人垣の中に消えていった。
そこで僕はチケット売り場に向かう。既に定刻から20分近くは過ぎていた。「もう始まっていますがよろしいですかぁ?」と若い男の店員がすげなく応答する。口開けの予告編を差っ引いても、既に本編に入っているのは間違いない。しかしここまで来たら引き下がる訳にはいかないのだ。
チケット握りしめてひいちゃんを捜すと、売店カウンターの中央、一組手前に後ろ姿を発見。声を掛けたら、彼女は「あ~遅くなっちゃうよねぇ。でも、お腹空いてんだぁ。」と板挟みの自分を嘆いてみせた。結局2人でポップコーンとホットドックとナチョスとコーラを買った。
150名程の小さなシアターはほぼ満員で、前列の隅しか空いていなかった。スクリーンを斜め下から見上げるようなポジション。今日はとことん運が悪かったかなぁ・・・残念!
・・・映画はというと、導入部は見逃したものの、そこそこ良かったように思う。宮崎駿版『青い山脈』とでも言おうか。昭和30年代の清廉な青春群像。時代考証もしっつかりしていたし、それぞれの個性豊かなキャラクターも丁寧に描き込まれていた。テレビのインタビューで、監督の宮崎吾朗氏が「しばらくはファンタジーから離れようと思う。」と語っていたが、大震災、貧困、テロ、先の見えない世界情勢など厳しい現実を目の当たりにして、賢明な舵取りなのかも知れない。それにしても大変な時代になってしまった・・・。
「ダイユーエイトMAXが入ったんだってぇ。」帰りがけにひいちゃんが誘う。テレビで見たらしいが、ついでにそのMAXなるものを一度見てみようと、エスカレーターで下る。どうやら1~2階が店舗らしい。ひとまず2階で降りてみると、広いフロアの半分は100円ショップのダイソー。残りの半分がOne's MAXというエリアになっていた。生活雑貨、文具、そして・・・化粧品?!沢山のメーカーの陳列棚がどこまでも連なり、赤だのピンクだのカラフルな商品が所狭しと山積みされている?!案の定。ここでひいちゃんしばし釘付けとなる。
仕方がないので僕は所在なくそぞろ歩き。見ればそれぞれの棚に試供品が用意されているではないか。これだけのアイテムがあったら、一通りお試ししていけば、完璧なメイクが仕上がるんじゃないだろうか・・・。なあんてつらつら考えていると、いつの間にかひいちゃん何やらかき集めて、上目遣いですり寄ってきた。BBクリームだとか、グロスだとか、マスカラだとか色々必要なんだそうで、一生懸命説明している。ん~、良く解らんけど、まんまとおねだりに遭ってしまったのは間違いない。
会計を済ませると、ご満悦のひいちゃん、「郡山にも、こんなトコあればいいのになぁ。」なんぞと宣う。・・・えっ?そ、そうかもねぇ~、ハハハァ。1階も食品、日用品、薬品、フードコートと満載らしい。ん~、恐るべしダイユーエイトMAX・・・。