入門介護講座。老人ホームの選び方

元、「特別養護老人ホーム」の施設長が、施設の「選び方」などを、エッセイ風に伝授します。新聞でも紹介されたコラムです。

第4回 くりかえされる、悲しい出来事。

2008-06-17 | 特養施設長覚書
 「くりかえされる悲劇」というような、ありふれた題は、つけたくはなかったのですが。
 
 また、高齢者夫婦で、介護に疲れた夫が妻を殺害し、自分は死にきれなかった、というニュースが報道されていました。

 詳しいことは不明ですが、たまたま、隣にいた友人と、この話で、雑談になり、私が、「地域包括支援センターの制度ができても、まだ、役所は実態把握出来ていないのかな。かかりつけ医の通報だって出来るのに・・」と何気なく言うと、その人いわく、「どうせ、役所に行ったって、窓口で、つっけんどんに、適当にあしらわれるんだから、行きっこないよ。」。おいおい、あなた、元公務員だったんじゃなかった?。なんか、むきになって、その人そう、言うんです。

 正しくは無いと思いますが、その人のような経験や、なんとなく役所への旧来のイメージ、それに、もう一つ、「地域包括支援センター」という制度も何だか理解されていませんね。名前も知らない人が、この人もそうでしたがいますね。

 一方、先日、友人の「地域包括支援センター」に勤める社会福祉士と話していたら、老人世帯は、「地域包括支援センターの者です、といっても、最近は、用心して、玄関を開けてくれない。それが、役所から来ましたというと、すぐ、開けてくれた。」と、これもまあ、こういうことも聴きました。
 なるほど、高齢者世帯も、俺俺詐欺だ、詐欺セールスだと、用心しているんです。

 また、こういう事件が起こると、その地域の民生委員さんは、すごく、落ち込むのだとか。

 さて、「地域包括支援センター」といっても、まだ、出来たばかりの制度ですし、例の、さんざん問題になった、「予防プラン作成」に追われて、相談業務が出来ないといったこともまだあるようです。

 でも、まあ、予防プラン問題、については、多くの事業所が、「保健婦補助」という名目の、契約ケアマネ、在宅勤務ケアマネなどを配置し(その分の、報酬は、大半、もう、その人にしちゃう。)、そちらに任せるなどして問題を解決しているようです。
 でも、本当は、「契約」のやり方によっては、派遣法違反になるとかで、契約の形式にどこも悩んでいるようです。以前、登録ヘルパーも、労基署との関係で、こういう論争がありましたっけ。

 余談ですが、「地域包括支援センター」だって、自治体直営を除いて、自治体の「委託事業」で、多分、委託料は、2000万円前後でしょう。自治体に言わせると、だって、予防プランの収入は、別途入るんだから、そちらの経費はそれで充当すべき、ということなのでよう。
 でも、主任ケアマネ、社会福祉士、地域活動経験ある看護師か、保健師の3職種必置となると、経営的に厳しいでしょうね。どうせ、事務職員も必要でしょうし、事務職員も、全く介護保険を知らないのでは仕方ないのである程度知識のある人を、となるとまた、それなりの人件費がいるでしょうに。
 給付管理のパソコンだって、1台ではきついでしょう。

 それに、どうなんですか。この3職種、すべて1人ですが、だれか急病や退職したら、どうするのでしょうね。すぐには、見つからないだろうし、いなければ、違法状態ですからね。コムソンみたいに。

 さらに理想的には、在宅介護に関する知識のスーパーバイザーも必要なのでしょうね。困難ケースの適切な処理、ということを考えると。

 マスコミも、秋葉原事件では、うんざりするほど、背景分析など報道しますが、高齢者のこのような問題はほとんどしません。おそらく、分からないのでしょうね。

 それにつけても、在宅対策を、もっと、しっかりする必要があります。

 私は、かねてから、「特養」と在宅部門が連携した、地域介護の総合センター的なものを早く作れればいい(ハードだけでなく、「まちづくり」ですよ。)、それによって、お年よりは、認知症の方でも、障害のある方でも、地域で安穏に暮らせる、と考えています。

 施設か、在宅かを、今のように、それぞれの、サービス体制の量、質だけからの、2者択一の選択肢というなら、駄目だとおもいますよ。

 私の「晩年、安穏に暮らすのは、なかなか容易ではない。」という感覚は、まだ当分続きそうかな。

 昔、ウーマンリブ運動の、(知っています?)桐島さん。新聞で、年をとって、「引き算の人生を送っています。」、とか、いいですね、こういう言い方。
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