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大阪都構想 住民投票 出口調査 各社比較

2015-05-21 18:28:27 | 評論
大阪都構想 住民投票 出口調査 各社比較
 
■ 出口調査
 出口調査とは、選挙結果を予測するため、投票所の出口で、投票した人に直接投票行動を聞く調査の手法である。
選挙情勢調査とは違って、実際に投票した人に、“投票結果”を聞くので、選挙結果を予測する場合に、確度の高いデータとして、放送局の開票速報番組などで、利用される。
最近の開票速報番組では、NHK、民放ともに、投票終了時間を過ぎると、開票がほとんど進んでいない段階で、出口調査の結果から、一斉に“獲得議席”予想を競って出す。
選挙情勢調査の最大の問題点は、有権者がどんな意識をもっていることは把握可能だが、調査対象になった人が、実際に“投票所”に行くかどうかが分からないことである。最近の選挙結果を左右する「支持政党なし」のいわゆる無党派層の投票率は、毎回、大きく変動する。事前の選挙区情勢で“優勢”というデータが出ても、その人が棄権する可能もある。一方で、投票率が予想以上に上がると、事前の情勢では、“苦戦”とされた候補者が、当選する場合もある。
 そこで、出口調査の結果は、“信頼”できるとして、重要視されているのである。
 その一方で、出口調査を行う投票所のサンプリングのやり方や投票所で面接をして投票結果を聞くという調査手法が調査対象者にプレッシャーを与えることで、調査結果はバイアスをかけて評価しなければならいという意見もある。
 また、期日前投票や不在者投票がカウントされないという欠点もある。特にここ数年増加している不在者投票は、接戦になった場合には、投票結果を左右する場合も生じるだろう。大阪の住民投票の場合、投票総数の約26%、約37万票が、出口調査の対象外であった。
“誤差”の幅も相当考慮する必要があるだろう。
 しかし、これまでの総選挙や、参議院選挙では、出口調査を元にした当落予想は、概ね、“好結果”を獲得していた。
 今回の「大阪都構想住民投票」の場合は、出口調査はどうだったのだろうか。


■ NHKの出口調査
 賛成・反対 ほぼ同数
(投票所40カ所で投票を終えた4400人余から出口調査を行い、約67%に当たる2991人から回答)
  2015年5月17日 NHKニュース


■ 産経新聞 関西テレビ
 出口調査は「賛成51・7%」…せめぎ合う賛否、最終盤に賛成派追い上げ
賛成 51.7% 反対 48.3%
「これまでの世論調査では、反対が賛成を上回る結果が出ており、午後9時から始まる開票作業では、賛否は拮抗(きっこう)するとみられる。
 調査結果などからは、橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会を中心とする賛成派が最終盤に激しく追い上げていることがわかり、有権者の約17%が投票した期日前・不在者投票の結果も加えると、賛否が競り合うと予想され、大勢判明はずれ込む可能性もある」
(調査は共同通信社、毎日新聞社、毎日放送、関西テレビと協力して行われ、投票を終えた有権者2781人から回答)
2015年5月17日 産経新聞


■ 朝日新聞・ABC調査
 20・30代は6割賛成 都構想 朝日・ABC出口調査
「今回の住民投票で、朝日新聞社と朝日放送(ABC)は17日、投票を済ませた有権者を対象に出口調査を実施した。賛成は20~30代にとりわけ多く、反対は70歳以上に多かった。全体では男性の59%が賛成だった(女性については記述がないので不明 筆者)。賛否の理由として最も多かったのは、賛成が「行政の無駄減らし」、反対が「住民サービス」だった。
(大阪市内60カ所の投票所で実施した。有効回答は2625人)」
2015年5月17日 朝日新聞


■ 日本テレビ・読売新聞調査
「大阪都構想」出口調査 賛成と反対きっ抗
 「いわゆる『大阪都構想』の賛否を問う住民投票は17日午後8時に締め切られた。出口調査の結果、「賛成」と「反対」が激しく競り合っている。
 読売テレビの出口調査によると、期日前投票では反対が優勢の一方、17日の調査では一転、賛成が優勢とねじれていて、賛否は極めて拮抗(きっこう)している」
 (2015年5月17日 日本テレビNEWS24)
 民主、公明、共産各党の支持層は反対が大半を占めた一方、自民党支持層では賛成と反対が割れたことがわかった。
 国政の支持政党別でみると、橋下徹大阪市長が最高顧問を務める維新の党支持層は94%が賛成。一方、民主、公明、共産各党の支持層は反対がいずれも8割近くだった。これらに対し、自民党支持層では賛成45%、反対52%、無党派層は賛成51%、反対47%とそれぞれ賛否が分かれた
(2015年5月17日 読売新聞)


■ TBS・JNN調査
大阪都構想」住民投票、出口調査は賛否がきっ抗
「大阪市を廃止・分割し、大阪府と再編するいわゆる「大阪都構想」の是非を問う住民投票が行われ、JNNの出口調査では賛成・反対がきっ抗しています。JNNが行った当日の出口調査では、賛成が反対を3ポイントほど上回っています(賛成51.7% 反対48.3%)。支持政党別では、維新の党の支持層では賛成が97%と反対を圧倒していますが、都構想に反対する自民党の支持層でもおよそ42%が賛成しています。民主党、公明党、共産党支持層では、いずれも反対が賛成を大きく上回っています」
(2015年5月17日 TBSニュース)

■ 事前の情勢と世論調査
 投票日前の事前の世論調査では、“反対派”が圧倒的に“優勢”だった。
 2015年3月の世論調査では、“賛成派”が43.1%、“反対派”が41.2%で、“賛成派”が上回っていたが、4月の世論調査では、“反対派”が47.5%、“賛成派”が36.7%と10%以上の差をつけて逆転した。5月の世論調査でも“反対派”47・8%、“賛成派”39.5%と8%の差がついていた。大阪の自民党が、民主党や共産党と、“前代未聞”の“共闘体制”を組み、5月10日には3党合同街頭演説会を開き注目を集めた。
 しかし、政治生命をかけた橋下市長の激しい巻き返しで、一気に差がつまったと言われている。 維新の会は運動費を5億円も投入したといわれている。最終盤になって、“賛成派”の勢いが増しているのを見て、各メディアや政治評論家は賛成派”が“逆転”したのではないかという見方をしていたようである。


■ 予想を超えた投票率
 焦点の投票率は66.83%と、大阪市長・府知事のダブル選挙の投票率60.02%を大きく上回り、予想以上の関心の高さがあったのも衝撃的だった。投票率を嵩上げしたのは、夕方から8時までの締め切り時間間際の投票者の急増で、とりわけ無党派層の多い若い層が列をなしていたという。事前の世論調査では、年齢別に見ると、20台や30台の若い層では、“賛成派”がかなり優勢であった。
 こうした状況の中で、開票日の夜に「Mr.サンデー」の開票速報番組に出演していた田崎史郎時事通信解説員は、「維新の会や政府関係者は何とかいけたのではないかと今の段階では見ている」とコメントしている。
 とにかく、大差で“反対派”が優勢だった情勢が、終盤で一気に変わったようだ。



■ 各社の出口調査をどう見る
 各社の出口調査では、産経新聞・関西テレビでは、「“賛成派”僅差で優勢」、朝日新聞・ABCでは、集計した数字は不明だが、「“賛成派”逆転の可能性」、NHKは、「ほぼ互角」、また、日本テレビ・読売テレビでは、「“賛成派”激しく追い上げ 賛否は拮抗」、TBS・JNNは、「“賛成派”僅差で上回る」と読めた。
 いずれにしても、ニュアンスの違いは多少あるが、各社とも、大激戦で最後まで勝敗はもつれるとい見方であった。


■ 期日前投票が重要に
 出口調査は、期日前投票や不在者投票は対象外である。今回は、期日前投票が35万9203票、不在者投票が9014票、合わせて約37万票、投票総数の26.4%という膨大な票の行方が分からないのである。
 読売テレビでは、期日前投票の出口調査も実施していたとしているが、調査の内容や結果の詳細は不明である。
 結局、出口調査だけでなく、事前の世論調査や情勢取材を丹念に分析して、投票結果を予想しないとミスリードが起きる懸念が大きい。
 今回の住民投票のように、情勢が投票日の当日までも激しく動いている場合は、“票読み”が極めて難しい。


■ 開票状況とメディアの報道
 開票は午後8時から大阪市内24の開票所で行われた。開票率80%の段階では、約1万票の差をつけて“賛成派”が“反対派”を上回っていて、やや“有利”であった。しかし、開票率89%では、僅差で“反対派”が逆転し、90%になると“反対派”が“賛成派”に3000票の差をつけてリード、差は少しずつ広がり始めていた。
 結果は、反対 70万5585人(50.38%)、賛成69万4844人(49.62%)、僅差で反対が賛成を上回った。
NHKは、午後10時34分に「反対多数確実」を伝えたが、「この時点で開票率81%。賛成は57万1395票、反対は56万5093票で、賛成票が6302票上回っていた」(朝日新聞 2015年5月17日)という。
大接戦の中で、まだ“賛成派”が“反対派”をリードしている段階で、見事な“票読み”である
 一方、フジテレビは、「Mr サンデー」内で、否決のテロップを流したのは、午後10時35分で、NHKの1分後だった。


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2015年5月18日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
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President
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