これは免疫系が破壊されているエイズ患者にミルク抗体を経口摂取したときの効果を見た報告です。
重篤な下痢を繰り返しているエイズ患者に対して行った試験の概要で、延べ33回の治験症例中22名によい結果が現れ、1日平均の排便回数も治療前が7.4回だったのに対し、治療後は2.2回と改善しました。
治療中止後も14名には少なくとも4週間後まで下痢が見られませんでした。
また、4名の便の中にクリプトスポリジウムが見つかっていましたが、治療後は消失していました。
このように、T細胞が破壊され抗体を作ることができないエイズ患者に対して、抗体の経口摂取は有効に働き、腸内細菌バランスを改善させることがわかります。また、このことから抗体産生能が低下した高齢者や病中、病後、慢性疾患の人に対してもミルク抗体が有効であることが示唆されます。
ただし、ここで示した試験は牛の初乳から調製した抗体を使用しています。
しかし、日本では初乳を食品として利用することはできません。
初乳以外のミルク抗体の供給源として、乳清たんぱくが注目されています。
(Stephan W, et al. J Clin Chem Clin Biochem. 1990 Jan;28(1):19-23.)