また、加齢による免疫の低下に対し、ビフィズス菌、乳酸菌のようなプロバイオティクスは必ずしも免疫強化に作用しないことが知られています。
一方、乳清たんぱくには悪玉菌や細菌毒素に対する抗体が多く含まれているものがあり、そのミルク抗体は腸内細菌バランスを改善し、また、ミルク抗体を用いることにより、抗体の質の低下を補い、免疫増強が可能であることがわかりました。
したがって、抗体を多く含有する「アサマ乳清たんぱく」はシニア世代にお推めの食品素材と考えられます。
これは免疫系が破壊されているエイズ患者にミルク抗体を経口摂取したときの効果を見た報告です。
重篤な下痢を繰り返しているエイズ患者に対して行った試験の概要で、延べ33回の治験症例中22名によい結果が現れ、1日平均の排便回数も治療前が7.4回だったのに対し、治療後は2.2回と改善しました。
治療中止後も14名には少なくとも4週間後まで下痢が見られませんでした。
また、4名の便の中にクリプトスポリジウムが見つかっていましたが、治療後は消失していました。
このように、T細胞が破壊され抗体を作ることができないエイズ患者に対して、抗体の経口摂取は有効に働き、腸内細菌バランスを改善させることがわかります。また、このことから抗体産生能が低下した高齢者や病中、病後、慢性疾患の人に対してもミルク抗体が有効であることが示唆されます。
ただし、ここで示した試験は牛の初乳から調製した抗体を使用しています。
しかし、日本では初乳を食品として利用することはできません。
初乳以外のミルク抗体の供給源として、乳清たんぱくが注目されています。
(Stephan W, et al. J Clin Chem Clin Biochem. 1990 Jan;28(1):19-23.)
免疫力が未発達で抗体を作ることができない新生児にミルク抗体を経口摂取したときの効果を紹介します。
このグラフは抗生物質による菌交代症を起こしている新生児にミルク抗体を経口で1週間から3週間投与したときの結果です。
下痢の程度はビフィズス菌の数で区分しています(ビフィズス菌 重度7乗以下、中等度7~8乗、軽度8~9乗、正常9乗以上) 。
上のグラフのように、ミルク抗体の投与により、下痢症状が軽減され、87%の新生児において素早く、かつ安定した腸内のビフィズス菌の増加が見られました。
一方、比較として行った従来のビフィズス菌製剤の結果は下のグラフのようになりました。
これらの結果、ミルク抗体がビフィズス菌製剤よりも優れており、抗体の経口摂取は腸内細菌バランスを改善させることがわかります。
また、このことから抗体産生能が低下した高齢者や病中、病後、慢性疾患の人に対してもミルク抗体が有効であることが示唆されます。
ただし、ここで示した試験は牛の初乳から調製した抗体を使用しています。
しかし、日本では初乳を食品として利用することはできません。 初乳以外のミルク抗体の供給源として、乳清たんぱくが注目されています。
(Kushnareva MV,et al. Zhurnal Microbiologii, Epidemiologii Ⅰ Immunologii 2, (1995) 101-104.)