東宝エリザベートは初演版の一路真輝エリザ、山口祐一郎トートを見てます。その前に一路さんがトートを日本で初めて演じた宝塚版も見た。
もう行かないと思ってたんだけどね。オペラ座の怪人と同じく、わたし的には好みのタイプの話じゃないと思ったから。でも初めて見た時はインパクトあった。初演の山口トートは死じゃなくて太陽神アポロだったけどね(苦笑)
東宝版は宝塚版と同じく小池修一郎氏の演出。不思議なことにヅカで見るのはいいのだが、宝塚っぽいスィートな演出を男性込みのキャストで見るのがムズかった。俺ァ照れた(笑)
それがウィーン版のDVDを見てしまったことからマテにハマり、彼が東宝版に出るというのでどうにも興味が湧いてしまい…
結局関西に遠征に行きました(^^; 東京は終わってたんで。
オペラ座も25周年記念公演DVDでラミン落ちしたし、濃い男が出る濃い舞台だとコロリと好み云々が変わることを実感。
おのれがスィーツ歌詞から免疫が消えていたことを思い知りました…。
トート閣下が愛を歌うたびに、尻がもぞもぞしてしまった私は肉食系演出向き。
久々に、というか初演以来12年ぶりに見た東宝エリザベートのトートは、甘い矛盾に満ちていた(笑)
以下、ウィーン版と比較しての感想です。
ヅカ版から東宝版へと引き継がれた日本オリジナルナンバー『愛と死の輪舞』
お前の命奪う代わり
生きたお前に愛されたいんだ
禁じられた愛のタブーに
俺は今踏み出す
少女のエリザベートが木から落ちて死にかけ、迎えに来たトートが彼女に一目惚れし、戻すというくだりに歌われる。宝塚から引き継がれたすごい歌詞。
この時点ですでに閣下は大いなる矛盾に飛び込んだんですね。“死”であればこそ、それを与えることで自分の世界に引き込める。一つとなれる。生きている人間に愛されたところで一緒には歩めないはず。死なんだから。禁じられてるのかタブーなのかより、愛すればこそ生かしておきたい、でもそれでは自分のものにはならないというジレンマ。
まあその後に、
返してやろう この命を
その時お前は俺を忘れ去る
お前の愛を勝ちうるまで追いかけよう
どこまでも追いかけてゆこう
愛と死の輪舞(ロンド)
素敵ストーカー宣言してるわけですが。
ウィーン版でもトートはエリザベートを愛したとはっきり言ってるけど、彼女自身に選ばせるために戻した感が強いんだよね。
この歌もそうではあるけど、どこか“愛するものの命を奪えない”というごく人間的な感覚がトートに入ったと感じさせる。
ルキーニが100年裁判にかけられてるという冒頭からも、この話が輪廻していてトートの想いは成就されてもまた破れ、繰り返すことは暗示されてる。だから輪舞。ウィーン版では二人の愛憎の中に男女のパワーゲーム的な力関係を、日本版は“生と死”という矛盾の意味合いを強く感じる。
さてマテのトート。
タイトルですが、別に彼はジレンマなんぞ感じてないだろう。私の感じたジレンマというのは、良くも悪くも“型にはめて”演じてたということ。ほんと全然ウィーン版と違う。他の二人のトートを見てないので、三人の中ではそれでも破天荒なのかはわからないんですが。
東宝版は演出面も人の動かし方もかなり違う。ハンガリーの革命家たちを入れることで、エリザベートのハンガリーびいきと当時の情勢がわかりやすくなっている。ハンガリー人のマテがそこが嬉しいのはよくわかる。
あと、フランツとルドルフのシーンも増えててそこが良かったな。
マテ、発音もなかなかだし、音程も悪ない。ただどこか揺れを感じた。不安定な何かを。
それは彼の揺れというより、トートの揺れというか。
宝塚から引き続きの小池さんの演出は、かなりウエットでラブ。傲慢さより葛藤。だから大人しいというか、ジレンマに立ちすくむトートを見た。あの頸動脈ガブリの彼が(笑)
エリザベートに突っぱねられると残念そうに佇んで、次の機会に…と去っちゃう。歯をむき出して威嚇してた彼が、よく演じてますよ。
ウィーンでも彼のトートはかなりアグレッシブだったらしいから、強烈なアクティブさを持っているマテがよく湿度高い日本版にどっぷり浸かってるなあと思った。
随分動いてはいるけど、一定の距離を置いてエリザベートを見てるので、舞台中央でハレンチ行為をかますウィーン閣下のようにできるわけがない。
けれど逆に、日本版トートは参加型なんだよね。ウィーン版はエリザベートとルドルフの首根っこを掴むけれど、基本彼らにしか見えない。東宝版では革命家に化けたり、御者や神父(牧師か?)になったりと、人間社会に入り込んでる。人の心を操ったとしても高みの見物のウィーン閣下と違い、ジャパン閣下はエリザベートを手に入れるためにこまめに姿を現します(笑)
マテのガイジン訛りが、かえって異世界のものの感じに聞こえるという好意的意見を読んでたんですが、それを言うならメンタリティの違う平たい顔の人々の中に一人入ってきた彼自身の試行錯誤が、トートの人間への干渉にリンクして見えた。
ただ、エネルギー値としては50%位にも感じたので、これが抑えて演技しているためか、もしくは夏バテか長期公演の疲れかはわからない。初めて見たから。
華麗なる衣装のマテはマントさばきがすごく美しいね。トートダンサーがハンガリーとは別にスゴかった。上半身裸で黒スパッツという(衣装着てるときもある)、ほとんど江頭のイケメンバージョンがが集まってるみたいな中に混じっているトートはやはり耽美。でもマテは素晴らしく視線が鋭い。突き刺すような強さ。遠目にもわかった。荒っぽいのに皮肉な視線のウィーン閣下と、画策はしても待ちの姿勢なのに目線は凍りつくようなジャパン閣下。
エリザベートの曲はロックテイストがあるので、マテの歌い方もウィーン版では合ってたが、どうも東宝版演出にはシャウトは合わないな(笑)
マテのシャウトは大好きなので、あれは10月のウィーン版で一杯やってほしい。
ルドルフのピストル自殺の場面、“マイヤーリンク”はこれまたえらいことBLチック。間違っても猟に近いウィーン版のような荒業はない。
あれ好きなんだけどな。女装閣下が皇太子を腕一本で振り回してぶちゅりでポイ捨てが大好き。
東宝版ではもう、ゆっくりゆっくり向かい合ってチューしてましたね。見た回は古川雄大君のルドルフ。金髪ですらっとしてて綺麗でした。
『闇が広がる』も良かった。エリザベートに対する戸惑いみたいな躊躇がルドルフにはないので、確信的にやれる感じ。なので古川ルドにも強気攻めでした(笑)
あとマテの哄笑はウィーン版同様に真っ黒で迫力でした。ハーッハッハッハ!!
他キャストについてざっと。
・エリザベート 春野寿美礼
良く声が出てたし毅然としててエリザベートらしかったです。年齢が上がるにつれ増していくエリザベートの孤独が見れた。父親と夫とのデュエットが美しく、とくに『夜のボート』は秀逸。この歌好きになったので心地よく聴けました。
・フランツ皇帝 岡田浩輝
見かけが若くてびっくり。40代後半には見えない。歌も演技もお上手です。
・ルドルフ 古川雄大
スラリとイケメン。歌もうわさに聞くほど悪くなかったよ。合格点。
・ゾフィー皇太后 寿ひずる
どえらい貫録。死の前のソロが泣けた。トートダンサーズが迎えに来る演出はわかりやすかったな。
・子ルドルフ 鈴木知憲
可愛い。カーテンコールで両手を振ってバイバイしてくれたので、私も両手で振り返した。
・ルキーニ 高島政宏
ウィーン版のセルカン・カヤが大贔屓なのでどうしても割引いてしまったが、達者です。場数踏み過ぎて自由気まま感あったが(笑)
・ルドヴィカ 春風ひとみ
宝塚月組の歌姫やってた頃見たよ。相変わらず美声。
・マダム・ヴォルフ 伊東弘美
このシーンだけがウィーン版よりはるかにいかがわしくて吃驚。高級娼館という設定じゃないのか。SMの館だぞ(笑) 伊東女王すげえ迫力。
気負いなく見てるせいか不満はなかったです。マテトートに興味惹かれて、ご縁により見れた東宝版。10月の来日公演(マテはもういるが)も楽しみにできるくらい、『エリザベート』に馴染んできた。まだ日本演出に慣れないが(笑)
初稿 2012年8月
☆本家映画ブログ(書庫)の画像ホルダーから発掘した
左から石丸トート、マテトート、山口トート。ジャパンでもやはり野獣枠(笑)
2012年度版ダイジェスト
山口トートやべえ(^^; マテトート美麗だね(笑)
もう行かないと思ってたんだけどね。オペラ座の怪人と同じく、わたし的には好みのタイプの話じゃないと思ったから。でも初めて見た時はインパクトあった。初演の山口トートは死じゃなくて太陽神アポロだったけどね(苦笑)
東宝版は宝塚版と同じく小池修一郎氏の演出。不思議なことにヅカで見るのはいいのだが、宝塚っぽいスィートな演出を男性込みのキャストで見るのがムズかった。俺ァ照れた(笑)
それがウィーン版のDVDを見てしまったことからマテにハマり、彼が東宝版に出るというのでどうにも興味が湧いてしまい…
結局関西に遠征に行きました(^^; 東京は終わってたんで。
オペラ座も25周年記念公演DVDでラミン落ちしたし、濃い男が出る濃い舞台だとコロリと好み云々が変わることを実感。
おのれがスィーツ歌詞から免疫が消えていたことを思い知りました…。
トート閣下が愛を歌うたびに、尻がもぞもぞしてしまった私は肉食系演出向き。
久々に、というか初演以来12年ぶりに見た東宝エリザベートのトートは、甘い矛盾に満ちていた(笑)
以下、ウィーン版と比較しての感想です。
ヅカ版から東宝版へと引き継がれた日本オリジナルナンバー『愛と死の輪舞』
お前の命奪う代わり
生きたお前に愛されたいんだ
禁じられた愛のタブーに
俺は今踏み出す
少女のエリザベートが木から落ちて死にかけ、迎えに来たトートが彼女に一目惚れし、戻すというくだりに歌われる。宝塚から引き継がれたすごい歌詞。
この時点ですでに閣下は大いなる矛盾に飛び込んだんですね。“死”であればこそ、それを与えることで自分の世界に引き込める。一つとなれる。生きている人間に愛されたところで一緒には歩めないはず。死なんだから。禁じられてるのかタブーなのかより、愛すればこそ生かしておきたい、でもそれでは自分のものにはならないというジレンマ。
まあその後に、
返してやろう この命を
その時お前は俺を忘れ去る
お前の愛を勝ちうるまで追いかけよう
どこまでも追いかけてゆこう
愛と死の輪舞(ロンド)
素敵ストーカー宣言してるわけですが。
ウィーン版でもトートはエリザベートを愛したとはっきり言ってるけど、彼女自身に選ばせるために戻した感が強いんだよね。
この歌もそうではあるけど、どこか“愛するものの命を奪えない”というごく人間的な感覚がトートに入ったと感じさせる。
ルキーニが100年裁判にかけられてるという冒頭からも、この話が輪廻していてトートの想いは成就されてもまた破れ、繰り返すことは暗示されてる。だから輪舞。ウィーン版では二人の愛憎の中に男女のパワーゲーム的な力関係を、日本版は“生と死”という矛盾の意味合いを強く感じる。
さてマテのトート。
タイトルですが、別に彼はジレンマなんぞ感じてないだろう。私の感じたジレンマというのは、良くも悪くも“型にはめて”演じてたということ。ほんと全然ウィーン版と違う。他の二人のトートを見てないので、三人の中ではそれでも破天荒なのかはわからないんですが。
東宝版は演出面も人の動かし方もかなり違う。ハンガリーの革命家たちを入れることで、エリザベートのハンガリーびいきと当時の情勢がわかりやすくなっている。ハンガリー人のマテがそこが嬉しいのはよくわかる。
あと、フランツとルドルフのシーンも増えててそこが良かったな。
マテ、発音もなかなかだし、音程も悪ない。ただどこか揺れを感じた。不安定な何かを。
それは彼の揺れというより、トートの揺れというか。
宝塚から引き続きの小池さんの演出は、かなりウエットでラブ。傲慢さより葛藤。だから大人しいというか、ジレンマに立ちすくむトートを見た。あの頸動脈ガブリの彼が(笑)
エリザベートに突っぱねられると残念そうに佇んで、次の機会に…と去っちゃう。歯をむき出して威嚇してた彼が、よく演じてますよ。
ウィーンでも彼のトートはかなりアグレッシブだったらしいから、強烈なアクティブさを持っているマテがよく湿度高い日本版にどっぷり浸かってるなあと思った。
随分動いてはいるけど、一定の距離を置いてエリザベートを見てるので、舞台中央でハレンチ行為をかますウィーン閣下のようにできるわけがない。
けれど逆に、日本版トートは参加型なんだよね。ウィーン版はエリザベートとルドルフの首根っこを掴むけれど、基本彼らにしか見えない。東宝版では革命家に化けたり、御者や神父(牧師か?)になったりと、人間社会に入り込んでる。人の心を操ったとしても高みの見物のウィーン閣下と違い、ジャパン閣下はエリザベートを手に入れるためにこまめに姿を現します(笑)
マテのガイジン訛りが、かえって異世界のものの感じに聞こえるという好意的意見を読んでたんですが、それを言うならメンタリティの違う平たい顔の人々の中に一人入ってきた彼自身の試行錯誤が、トートの人間への干渉にリンクして見えた。
ただ、エネルギー値としては50%位にも感じたので、これが抑えて演技しているためか、もしくは夏バテか長期公演の疲れかはわからない。初めて見たから。
華麗なる衣装のマテはマントさばきがすごく美しいね。トートダンサーがハンガリーとは別にスゴかった。上半身裸で黒スパッツという(衣装着てるときもある)、ほとんど江頭のイケメンバージョンがが集まってるみたいな中に混じっているトートはやはり耽美。でもマテは素晴らしく視線が鋭い。突き刺すような強さ。遠目にもわかった。荒っぽいのに皮肉な視線のウィーン閣下と、画策はしても待ちの姿勢なのに目線は凍りつくようなジャパン閣下。
エリザベートの曲はロックテイストがあるので、マテの歌い方もウィーン版では合ってたが、どうも東宝版演出にはシャウトは合わないな(笑)
マテのシャウトは大好きなので、あれは10月のウィーン版で一杯やってほしい。
ルドルフのピストル自殺の場面、“マイヤーリンク”はこれまたえらいことBLチック。間違っても猟に近いウィーン版のような荒業はない。
あれ好きなんだけどな。女装閣下が皇太子を腕一本で振り回してぶちゅりでポイ捨てが大好き。
東宝版ではもう、ゆっくりゆっくり向かい合ってチューしてましたね。見た回は古川雄大君のルドルフ。金髪ですらっとしてて綺麗でした。
『闇が広がる』も良かった。エリザベートに対する戸惑いみたいな躊躇がルドルフにはないので、確信的にやれる感じ。なので古川ルドにも強気攻めでした(笑)
あとマテの哄笑はウィーン版同様に真っ黒で迫力でした。ハーッハッハッハ!!
他キャストについてざっと。
・エリザベート 春野寿美礼
良く声が出てたし毅然としててエリザベートらしかったです。年齢が上がるにつれ増していくエリザベートの孤独が見れた。父親と夫とのデュエットが美しく、とくに『夜のボート』は秀逸。この歌好きになったので心地よく聴けました。
・フランツ皇帝 岡田浩輝
見かけが若くてびっくり。40代後半には見えない。歌も演技もお上手です。
・ルドルフ 古川雄大
スラリとイケメン。歌もうわさに聞くほど悪くなかったよ。合格点。
・ゾフィー皇太后 寿ひずる
どえらい貫録。死の前のソロが泣けた。トートダンサーズが迎えに来る演出はわかりやすかったな。
・子ルドルフ 鈴木知憲
可愛い。カーテンコールで両手を振ってバイバイしてくれたので、私も両手で振り返した。
・ルキーニ 高島政宏
ウィーン版のセルカン・カヤが大贔屓なのでどうしても割引いてしまったが、達者です。場数踏み過ぎて自由気まま感あったが(笑)
・ルドヴィカ 春風ひとみ
宝塚月組の歌姫やってた頃見たよ。相変わらず美声。
・マダム・ヴォルフ 伊東弘美
このシーンだけがウィーン版よりはるかにいかがわしくて吃驚。高級娼館という設定じゃないのか。SMの館だぞ(笑) 伊東女王すげえ迫力。
気負いなく見てるせいか不満はなかったです。マテトートに興味惹かれて、ご縁により見れた東宝版。10月の来日公演(マテはもういるが)も楽しみにできるくらい、『エリザベート』に馴染んできた。まだ日本演出に慣れないが(笑)
初稿 2012年8月
☆本家映画ブログ(書庫)の画像ホルダーから発掘した
左から石丸トート、マテトート、山口トート。ジャパンでもやはり野獣枠(笑)
2012年度版ダイジェスト
山口トートやべえ(^^; マテトート美麗だね(笑)
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