伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

七沢潔著「東海村臨界事故への道-払われなかった安全コスト」

2005-12-30 13:35:41 | 関係資料
 七沢潔著「東海村臨界事故への道-払われなかった安全コスト」(2005年8月25日発行、岩波書店)ISBN4-00-024133-8
を読み始めています。
 事故から6年たちそろそろ風化しつつある中ですが、NHKで核問題について数多くの番組を手がけてきた元ディレクターが、報道特集の制作や、その後裁判で開示された証拠や個人インタビューを経てまとめた事故論です。NHKにも人なきにあらず、といったところでしょうか。

一部引用。
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 しかし事故後6年が経とうとするいま私が思うのは、事故にはJCOとその作業員だけに責任を負わせて済ますにはあまりにも複雑で構造的な背景があったこと、そしてそれが未解明なまま事故の記憶が風化に向かっていることの不条理である。
 さらに、この事故の背景には実は幾重にも関係した人々の輪があり、それ相応の責任がありながら、その責任を問われることのなかった人々が、それこそモラル・ハザードとよばれるにふさわしい態度で過去も、そして現在も生きていることの不気味さだ。
 国の安全審査官、原子力安全委員会の核燃料安全専門審査会の委員、JCOにウラン加工を発注してきた旧動燃(動力炉・核燃料開発事業団)、いまの核燃料サイクル開発機構の担当者たち……。
 ドキュメンタリー番組制作のために私がインタビューした人で、作業員が被曝の結果、むごたらしい姿で死亡するというこの悲劇の事故に真摯に向き合ったと感じられる人はほとんどいなかった。
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 わが国初の臨界事故を起こし2名が死亡したJCOはそもそもMOX燃料の製造工程の一部を構成する工場でした。
工場ラインのメインは普通のウラン燃料製造工程の一部でありながら、当時の動燃(今は)の下で高速増殖炉の(実証→)原型炉もんじゅや実験炉常陽、新型転換炉ふげんの3種の燃料製造を開発の一環として行うのにお付き合いをしてきたこと、それと同時に、コストダウンや納期短縮の企業内圧力を受けて、労働者としての人権が抑圧される中で起きた、特殊日本的な要因による事故であるという評価をしています。

 JCOの親会社は(愛媛から出た)住友金属鉱山であり、事故を起こして被曝した際の作業員のうちで1人生き残った(インタビューを受けた)横川さんも、元々住友金属鉱山の(愛媛県の)工場から出向させられてJCOに転籍した人です。 何でも屋として、臨界のなんたるかもほとんど知らなかった人が作業の責任を負わされたこと、違法に改造したラインを役に立たない視察から隠すために改善と思い込んで最後の安全装置を外すことになったという危険性は、今のコスト優先で安全性を切り捨てる企業文化の現状を表しています。

 このような原子力村の構造は後の東電、関電の事故隠しや事故としてもいかんなく発揮されています。四国電力の企業文化は実際のところどうなのでしょう。是非とも探ってみたいものです。そう思いませんか?>県知事さん

 実際のところは、原子力開発へ向けた無謀な突進はあちこちで破綻し、そのため各分野で撤退戦を強いられているその結果の一つが「プルサーマル利用」です。
 イケイケどんどんの時にはトップが誰でも務まりましたが、撤退戦のさなかでこそいかに乏しい戦力を有効活用して防備を固めるか、大負けしないでやり過ごすか、という点で、トップの鼎の軽重が問われるものでしょう。

 輸送ウルトラCや製造ウルトラC、はては検査ウルトラCという安全性をなし崩しにした態勢は、発注側の旧動燃も深く関わっていた問題であるということをうかがわせますし、そのことは事故調査委員会の中でも、裁判の場でも問われなかったからには、現在も続く体制として残っています。その旧動燃や科技庁、責任を回避してきた自称専門家たちが新たなプルサーマル事業でも重要なキー機関として関わることになりますから、全く安全性という観点からは看過できません。プルサーマルなら例外だ、という根拠はありません。

参考:
最相葉月さんの書評@朝日新聞より
 ”現実は複雑で地味だと著者はいう。悪者を特定できるわけではなく、実際は複数の要因が折り重なり事故は起きた。本書を読了しても、溜飲(りゅういん)が下がるわけではない。ただ、チェルノブイリ原発事故から二十年近く原子力を追い続けた著者の、いまだ安全文化を構築できないでいる日本の社会構造への深い怒りは胸に届いた。”


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