私的メモ(他人は見るべからず)

自分用に思いついたことやインターネット上の記事などをメモっています。(著作権どうなる?)皆さん見ないでくださいね。

大学eラーニングの経営戦略

2005年07月20日 | e ラーニング

成功の条件
大学eラーニングの経営戦略

■ まえがき

はじめに
 社会の諸事情に「e」を付けて表現することが増えてきた。教育であれば「eラーニング」,商業取引であれば「eコマース」,行政分野であれば「eガバメント」といったタームがそれである。この「e」はインターネットを介してそれぞれの活動を行うことを意味している。インターネットを便利な道具として利用している間は,おそらくこうした言葉は必要ないであろう。しかし,インターネットを介したことによって,従来の仕事のやり方や成果の問われ方が異なって,仕事を支える構造が変化する予兆をみたとき,「e」が特別の意味をもつ。
 IT化なりIT革命なりがさほど声高に語られなくなり,いつの間にかメールやネットは日常の片隅にその場を確保している。しかし,「e」の方は,まだ,新鮮味をもって語られているのは,それが,まだ,日常に十分に位置づいていないからであろう。
 本書は,これらの「e」のうち日本の大学の「eラーニング」に焦点をあて,いくつかの事例を詳細に検討することで,それを可能とする条件を探ることを目的とする。大学の世界においては,それでも「eラーニング」は比較的馴染みのある言葉である。しかし,それがどこでどのように実施されているのかという基礎情報や,「成功」の類に分類されるeラーニングはどこで行われているのか,何が「成功」の条件なのかなどについては,驚くほど知られていない。「eラーニング」はそれほどに実態を伴っていない言葉であり,また,逆に,それほど関心を引く言葉でもあるのだ。
 本書で扱うeラーニングは,単位認定される授業として行われるものを対象にしており,わが国では最も先進的な事例である。大学の諸活動をIT化していく,すなわちITを便利な道具として利用している段階を超えて,インターネットを介して正規の授業を実施するという意味での「eラーニング」に至るには,そこで超えねばならない大きなギャップがある。遠隔教育の伝統をあまりもっていないわが国の場合,eラーニングは遠隔教育が一層効率的で便利になった形態としてみられるのではなく,教室における対面授業と比較して効果があるか否かが問われることが多い。大学設置基準によって単位認定するeラーニングが規定されるとき「対面授業と同等の効果をもつ」ための工夫が必要と特記されたことが,それをよく表しているといってよい。したがって,授業をインターネットで配信し単位認定することに対しては,二の足を踏む大学が多いのである。
 それなのになぜあえて単位認定するeラーニングを実施し,一定の成果を出しているのか,その秘訣を探ることは,研究の上でも,eラーニングに興味関心を抱いている大学にとっても有益だと考える。
 本書は4部構成となっているが,第Ⅰ部「IT化とeラーニングの概況」に相当する第1章は,わが国の大学がどの程度IT化し,eラーニングをターゲットにしているかを,全国調査の結果をもとに検討したものである。
 この鳥瞰図をもとに,第Ⅱ部「国内大学eラーニングの成功事例」における第2章から第6章は,単位化したeラーニング授業を実施している5つの大学の事例分析を行った。具体的には,東京大学,玉川大学,青山学院大学,佐賀大学,東北大学,であり,これらを選定したのは国立と私立,東京周辺と地方,大規模と小規模などの要因を考慮した結果である。それぞれの大学には,(1)eラーニングを始めた経緯,(2)コスト,(3)ハード面でのシステム,(4)単位化している科目の内容,(5)実施した結果(教育効果,学習効果),(6)課題と展望を含むことを条件として自由に記述していただいたが,われわれが分析のキーワードとしているのは,「技術」,「コスト」,「教育効果」の3つである。この3点に焦点を絞ったのには訳がある。大学設置基準においてすでに2001年よりeラーニングは制度化され,技術的にもかなり高度なレベルでそれが実施できることは知られているにもかかわらず、実際にはeラーニングを積極的に実施する高等教育機関が増加していない。その理由としては,「技術」に加えて「コスト」,「教育効果」の問題が十分に検証されていないからだと思われるからである。安定した技術で確実に,さほどコストをかけずに,目的とした教育効果をあげられる教育をどのように提供できるか,この3変数の関係に,eラーニングを実験から実践へと移行させる鍵があると考えたからである。
 個々の機関を少しだけ紹介すれば,東京大学からは,eラーニング・サイト「iii Online」を中心に,「eラーニングによる教育と社会サービス」について知ることができる。社会人大学院生を多く抱える東京大学大学院情報学環・学際情報学府が,時間と空間を縛らないかたちで学習機会を提供し,かつ社会サービスの一環として大学の智を公開するためのサイトである,iii Onlineの稼動状況の概要や,質問紙調査等の結果,また,運営のための組織づくりやティップスが読み取れるだろう。
 玉川大学には,「個別学習による学力の質の保証」について報告していただいた。教育戦略として全学的なICTの利用に取り組んできた玉川大学であるが,「いつでもどこでも」学習できる教育環境を整備し,対面授業にはないeラーニングならではの学習を目指してきたその導入の経緯や実践例,アンケート調査からみる実態や評価,システムを支える学内環境とスタッフの役割が中心になっている。また新たなラーニング・マネジメント・システム導入のプロセスについても詳しく述べられている。
 青山学院大学は,eラーニングによって既存の「学び」を打破し,「ITによる教育改革」を目指している。ここでは,青山学院大学が中心になって推進してきた2つのeラーニング・プロジェクトで蓄積された成果をもとに,人文系学部や大学院におけるeラーニング実施上の問題点と解決法など,「学生参画型授業の国際展開」について報告されている。
 佐賀大学は,2002年度から全学必修の教養教育をいかに効率的・効果的に実施するかという問題をeラーニングで解決することを目指した。この「全学必修の教養教育の効率化」を目指し,資金が潤沢にない中,直面する多くの問題を知恵と工夫で乗り切ってきた具体的な話は,わが国の大学の典型を見る思いがある。
 15研究科のほか,多数の研究所とセンターをかかえる東北大学。それぞれに目的,eラーニングに対する考え方,対象,講義形態が異なる中,東北大学は,「総合大学における全研究科規模のeラーニングをどのように統一あるものにしていこうとしているのか。2年目を迎えたISTUの運営の具体策を報告してもらった。
 第Ⅲ部の7章と8章は,eラーニングを先行させているアメリカにおいて,それを成功させている要因を探ることを目的として,7章は,日本ではまだあまり汎用性をもっていないeラーニング技術の現状を,8章は,大学組織としてより安定的なeラーニングを提供していく上では何が必要かを分析している。
 第Ⅳ章の9章は,5大学の事例を通して,技術・コスト・教育効果―がどのように書き込まれているか,それぞれ読みくらべていただきたい。
 このように,eラーニングを成功させる条件を探っていくと,自然とその逆のeラーニングが普及しない要因や支障となっていて問題に突き当たる。本書の隠されたもう一つのねらいが,そこにあることを付記しておきたい。

 2005年2月
 吉田 文

■ 目 次


第Ⅰ部 IT化とeラーニングの概況
 1章 進むIT化と進まぬeラーニング
  1 日本の大学のIT化は遅れている?
  2 大学教育のIT化
  3 ITによる教育内容の配信
  4 ITによる授業の配信
  5 学内のIT戦略と組織構造

第Ⅱ部 国内大学eラーニングの成功事例
 2章 eラーニングによる教育と社会サービス  東京大学
  1 情報学環とiii Online
  2 iii Online―3つの目標
  3 iii Onlineの概要
  4 iii Onlineの組織
  5 アンケート調査の結果から
  6 アクセスログの分析から
  7 研究の発展
  8 実施にあたって困難だった点
  9 コストとメリットのバランスと将来課題
 3章 個別学習型eラーニングの実践とシステム評価  玉川大学
  1 eラーニング・システム導入の経緯と発展
  2 システム・スタッフの役割
  3 新たなプラットフォームの選定に向けて
  4 BlackboardとLearningSpaceの比較
  5 LMS評価の結果と今後の計画
 4章 産官学のアライアンスによる実践教育と教育国際化を目指すeラーニング  青山学院大学
  1 はじめに
  2 eラーニングの障壁
  3 eラーニングの「3ない」阻害要因の克服
  4 AMLプロジェクトのねらいと研究テーマ
  5 AMLプロジェクト運営のための制度,ヒト,モノ(+技術開発),カネ
  6 プロジェクト活動によるeラーニング正規授業の実践
  7 産官学共同研究と教育の国際化を推進するA2ENプロジェクトの展開
  8 おわりに
 5章 eラーニングによる教養教育と生涯学習  佐賀大学
  1 ネット講義をどのように始めたか
  2 ネット講義実験サイトの構築
  3 ネット講義スタート(2002年度前期)
  4 ネット講義の状況(2002年度後期)
  5 2年目を迎えたネット講義(2003年度)
  6 ネット講義の新たな展開
  7 生涯学習としての活用
  8 eラーニングへの期待
 6章 全学規模による大学院講義のインターネット配信  東北大学
  1 はじめに
  2 ISTU立ち上げ時における課題
  3 「大学院教育情報学研究部・教育部」の同時開設
  4 ISTUにおけるコンテンツ作成の実際
  5 ISTUの現状
  6 おわりに
第Ⅲ部 先進地アメリカからの示唆
 7章 eラーニングを支えるテクノロジー
  1 はじめに
  2 どんなシステムがあり,利用されているのか
  3 LMSとは何か?―混乱していくテクノロジーの名称
  4 標準化とコンテンツの流通
  5 CMSによるeラーニング・サイト運営の可能性
  6 eラーニング・テクノロジーの近未来―アメリカの事例
 8章 eラーニングを支えるスペシャリスト
  1 はじめに
  2 出版モデルによるコースの開発
  3 リエゾンという役割
  4 スペシャリストをどこで育てるのか
第Ⅳ章 キーワードの検証―成功の条件
 9章 技術・コスト・教育効果とその先にあるもの
  1 なぜ技術・コスト・教育効果なのか
  2 技術・コスト・教育効果の検証
  3 日本のeラーニングの特徴
  4 経営戦略としてのeラーニング
  5 eラーニングのグランド・デザイン

おわりに


eラーニング授業の満足度は何が規定するか

2005年07月20日 | e ラーニング

目次

eラーニング授業の満足度は何が規定するか:早稲田大学人間科学部eスクール1年目の全授業評価の分析

What determinates satisfaction of college e-learning courses? An analysis of course evaluation of e-School of Waseda University

向後千春・松居辰則・西村昭治・浅田 匡・菊池英明・金 群・野嶋栄一郎

Chiharu KOGO, Tatsunori MATSUI, Shoji NISHIMURA, Tadashi ASADA, Hideaki KIKUCHI, Qun JIN, and Eiichiro NOJIMA

早稲田大学人間科学部

School of Human Sciences, Waseda University

<要約>

 2003年に開設された早稲田大学人間科学部通信教育課程(eスクール)は、一部のスクーリング授業を除き、ほとんどの授業をブロードバンド通信を利用したeラーニングシステムによって実施している。本研究では、1年目に実施されたすべての授業に対し、統一的に行われた、学生による授業評価のデータを分析した。データケース数1234(回答率48.8%)のうちの欠測値のない有効データ約850ケース(全回答数の7割程度)を用いて、重回帰分析が適用された。その結果、eラーニング授業の満足度は、授業の理解のしやすさ、教員の話のうまさ、教員への仲間意識、全体としてよく考えられていることなどによって規定されることが明らかになった。一方で、学生同士の仲間意識はまだ低く、学習コミュニティをどのように形成するかが今後の課題となることが明らかになった。学生同士の仲間意識には、BBSの雰囲気や、発言による活性度が関わっており、BBSの使い方や運営方略に工夫が必要となることが示唆された。

<キーワード> 大学教育、遠隔教育、授業評価、eラーニング、満足度、電子会議(BBS)

1. はじめに

 早稲田大学人間科学部は、2003年4月に通信教育課程(愛称「eスクール」)を開設した。これは、ブロードバンドネットワークとeラーニングシステムを活用したフルサイズのeラーニング課程である。現在、開設2年目に入り、海外在住の学生を含めて、1学年約150人の学生を擁して運営されている。その全体像については、向後他(2004)で報告された。また、配信される授業(オンデマンド授業)の作り方については、向後(2004a)で、コスト分析については、向後(2004b)で報告されている。

 本報告では、1年目の春学期と秋学期に開講された、レクチャー型授業を中心としたすべての授業に対して統一的に行われた、学生による授業評価のデータを分析する。

2. 方法

 早稲田大学人間科学部通信教育課程で、2003年度(春・秋学期)に開講されたeラーニングによる授業のすべてにおいて学生による授業評価を実施した。授業評価は、各学期の終了付近で開設されたオンラインによるアンケートによった。学生は無記名により、任意でアンケートに回答した。評価項目は、表1に示す43項目であり、それぞれ7段階のリッカート尺度であった。

 43項目の評価尺度は次のような観点で作成されたものである。これらは、eスクールの授業を構成する各要素および全体の評価視点を網羅したものである。

  • 授業全体について
  • 授業コンテンツ(動画)の品質について
  • 講義について
  • 小テストについて
  • レポートについて
  • 資料について
  • BBSについて
  • 教育コーチについて
  • 教員について
  • 学習コミュニティについて
  • 全体の印象として

表1 授業評価項目とその平均、不偏分散、標準偏差(N=845)

3. 結果

3.1 基礎統計

 データケース数は、延べ1234件であった。回答率は48.8%であった。得られたデータの中には一部欠測値(無回答)が含まれており、すべての評価項目に回答されていた有効データ数は845ケースであった。これは、全回答数の7割程度にあたる。授業評価項目とその平均、不偏分散、標準偏差を表1に示した。

 各評価項目の評価平均値(4.0が中心)を見ると、「全体としてよく考えられていた(5.70)」、「教員の話し方のうまさ(5.53)」、「全体としておもしろかった(5.55)」、「全体として役に立ちそう(5.72)」という項目で高い評価を得たほか、ほとんどの項目で4.0を上回る評価を得ていた。

 一方、評価の低かった項目は、「BBSでの自分の発言数(2.63)」と「学生同士の仲間意識ができたか(3.19)」であった。前者は、「教育コーチの発言数(4.73)」や「教員の発言数(4.18)」に比較してみると、かなり少ないと認識している。また、後者については、「教育コーチに仲間意識ができたか(3.80)」や「教員に仲間意識ができたか(3.80)」に比較して低いことがわかる。

3.2 因子分析

 全ての評価項目のデータを使って、因子分析をした。固有値の落ち方(順に、12.51, 5.26, 2.50, 1.91, 1.86, 1.57)を見て、5次元解を採用し、バリマックス回転をした。

 第1因子には「教員の話し方、全体としてよく考えられていたか、満足したか、おもしろかったか、科目の内容は理解できたか、スライドや板書の提示」などの項目が含まれ、「授業全般の良さ」因子と考えられた。第2因子には「教育コーチのBBSの運営、教員のBBSの運営」などの項目が含まれ、「BBSの運営」因子と考えられた。第3因子には「講義の分量、レポートの分量」などの項目が含まれ、「授業のペース」因子と考えられた。第4因子には「学生同士の仲間意識、教育コーチへの仲間意識」などの項目が含まれ、「仲間意識」因子と考えられた。第5因子には「小テストの分量、頻度、難易度」などの項目が含まれ、「小テスト」因子と考えられた。

 なお、第5因子までの累積寄与率は、50.67%であった。

3.3 重回帰分析

 表2に、授業全体の満足度を従属変数、それ以外の項目(ただし<全体の印象>の4項目を除く)を独立変数としたときの重回帰分析の結果を示した。

表2 満足度を従属変数とした重回帰分析の結果(N=857)

 表3に、学生同士の仲間意識を従属変数、それ以外の項目(ただし<全体の印象>の4項目を除く)を独立変数としたときの重回帰分析の結果を示した。

表3 学生同士の仲間意識を従属変数とした重回帰分析の結果(N=870)

 ここでは、重回帰分析に必要な変数がすべてそろっているデータをすべて使用したため、データ数がそれぞれ857, 870となり、845よりも多少増加している。

4. 考察

4.1 授業評価からの示唆

 授業評価項目全体を見ると、「全体としてよく考えられていた(5.70)」をはじめとして、多くの項目で中間の4.0を越える評価を得た。「全体として満足したか」で5.09の評価を得ていることからも、悪くない評価を得ているといえよう。

 しかし、その一方で、「BBSでの自分の発言数(2.63)」は低い評価であった。これは、「教育コーチの発言数(4.73)」や「他の受講者の発言が役に立つ(4.79)」が高い評価であることを考え合わせると、さらにBBSでの積極的な発言を引き出すための工夫の余地が残されていると考えられるだろう。

 また、「学生同士の仲間意識ができたか(3.19)」は、「教育コーチに仲間意識ができたか(3.80)」や「教員に仲間意識ができたか(3.80)」に比較すると低い。これは、この段階では、教員とコーチが中心となって学習コミュニティが作られている途中の段階であることを示唆している。今後、学生同士の仲間意識を強めていくような授業方略やホームルームなどの活用が求められるだろう。

4.2 満足度を規定する要因

 満足度を従属変数にしたときの重回帰分析の結果から、満足度を規定する項目として、内容の理解、教員の話し方、教員への仲間意識、BBSの雰囲気などが挙げられることがわかった。これらの項目は、当初想定した評価視点の各分類に含まれているものであり、満足度が、コンテンツ、教員の対応、BBSなどによって複合的に規定されていることを示唆している。その中でも、授業内容が良く理解できることは、満足度を高めるための必須条件であることが言えよう。

 なお、動画の品質については、品質の低い方が満足度が上がるという常識とは逆の結果になったが、これは、スタジオ撮影よりも教室でのライブ収録のほうが動画の品質は落ちるけれども、満足度は押し上げているのではないかと推測することができるだろう。

4.3 学生同士の仲間意識を規定する要因

 評価項目の中で、評価の低かった、学生同士の仲間意識を従属変数にしたときの重回帰分析の結果から、それを規定するものとして、BBSの雰囲気や発言数が多くなることによるBBSの活性化、教員のBBSの運営の良さなどが挙げられた。これらのことから、学生同士が親密になり、ある種のコミュニティを形成するためには、BBSというコミュニケーションの場が大きな役割をはたしていることが示唆された。とりわけ、BBSの雰囲気や、他の学生の発言が多いことは、仲間意識を作るのに重要な点となっている。逆にいえば、BBSの雰囲気が悪いか、あるいは発言が少ない場合は、仲間意識をうまく作ることは困難であるといえよう。したがって、雰囲気を良くし、活発な発言が促されるような、BBSの運営の仕方が重要になってくる。

5. 結論

 1学年約150人に対して、eラーニングシステムによって開講されたすべての授業に対して学生による評価を行った。そのデータを分析した結果、全体としての評価は良いものが得られたが、学生同士の仲間意識の形成やBBSへの積極的な参加という項目では低い評価にとどまった。

 授業への満足度を従属変数とした重回帰分析の結果、満足度を規定するものは、コンテンツ、教員の対応、BBSの活性度など、複合的な要因で規定されることが明らかになった。また、学生同士の仲間意識を規定するものは、BBSの雰囲気や活性度であり、学生同士の仲間意識を高めていくためには、BBSの運用の工夫が必要なことが示唆された。

 以上のような評価は、eラーニング全体の評価が、ただコンテンツの良さだけに依存するのではなく、教育コーチなどの人的資源の配分や学習コミュニティの形成の促進が評価や満足度を高めていくということを強く支持するものである。

引用文献

  • 向後千春・西村昭治・浅田 匡・菊池英明・金 群・野嶋栄一郎(2004)早稲田大学eスクールの実践:大学教育におけるeラーニングの展望『日本教育工学会研究報告集』JSET04-3, Pp.17-23
  • 向後千春(2004a)対面授業の内容をオンデマンド授業に移し替える:その方法と効果『大学教育学会第26回大会発表要旨集録』Pp.128-9
  • 向後千春(2004b)大学におけるeラーニング課程のコスト分析:早稲田大学人間科学部におけるケーススタディ『日本教育工学会研究報告集』JSET04-4 Pp.35-40

付 記

 本研究は、平成15~18年度文部省科学研究補助金・基盤研究(B)(2)「ブロードバンドを利用した新しい高等教育の有機的モデルとプロトタイプの開発」(課題番号15300287)による支援を受けています。


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eラーニング規格

2005年07月20日 | e ラーニング
現代の教育現場では、従来からの黒板に加えて、プロジェクターによるプレゼンテーション、パソコンによる対話的教材閲覧や個別テストなどが取り入れられている。この授業では、これらのさまざまな教育メディアを取り上げ、実際の操作や教材作成を行う。また、教育における歴史的な流れや、教材作成で必要な認知科学、学習心理学などにも言及する。

1 導入、概要紹介
2 同期型eラーニング
3 非同期型eラーニング
4 WWWページの構成
5 静止画メディア
6 対話型メディア
7 音声メディア
8 人間工学
9 インストラクショナルデザイン
10 eラーニング規格SCORM
11 eラーニングプラットフォーム

SCORMとは?

2005年07月20日 | e ラーニング
■ADLとは?

ADLとは、Advanced Distributed Learning の略で、1997年に設置された米国の国防総省系組織の名称です。

企業や団体として法人格を有している組織ではなく、あくまで国防総省の内部にある組織として、eラーニング規格の標準化を進めています。


■SCORMとは?

SCORMは、Sharable Content Object Reference Modelの略で、ADLが eラーニング規格の標準として提唱し、世界的にその採用を推進しているものです。

日本でも、経済産業省、先進学習基盤協議会(ALIC)、特定非営利活動法人日本イーラーニングコンソシアム(eLC)を中心に、普及活動が行われています。


■SCORM Version 1.2 vs SCORM2004

SCORMはその発表以来、Version 1.0、1.1、1.2と改訂を重ねており、現在、市場では、SCORM Version 1.2が流通の中心になっています。

その後、2004年1月に、最新規格であるSCORM2004が発表され、引き続き2004年7月、その内容調整として第2版が発表されました。

これらの規格をベースに、現在、日本を含めて世界的に最新規格への移行が図られているところです。

尚、ADLでは、従来、Version 2.0 などに向けて、SCORM規格の改訂を進めることが検討されてきましたが、SCORM2004発表に際して、一旦、メジャーな規格改訂作業を止め、今後は市場の動向を見つつ、内容を調整するとの説明がありました。


■SCORM Adopterとは何ですか?

ADLが制度として設けているもので、
  1. ADLのTest Suiteを使って、テストを行う
  2. Test Suiteの結果、テストに通った場合に、SCORM Adopterとして認定登録される
というものです。

尚、本制度は、ADLの提唱するSCORMに対応した製品(SCORM Conformant)を普及させることが目的で、ADLが製品について保証をしているわけではありません。

Net Commons について

2005年07月01日 | e ラーニング
【Net Commons】
国立情報学研究所の新井紀子先生によって開発されたものである。
・OpenSource (一般は8月からダウンロード可能)
・XOOPSを使っている
・必要な環境:PHP4.1.0以降、MySQL3.23以降、Apache1.3もしくは2以降
・OSはRedHat Linux9.0